2022-12-01 18:50政治

救済新法、実効性巡りなお溝=迫る会期末、与野党歩み寄り焦点―党首会談模索の声も

「旧統一教会」被害者救済新法の内容
「旧統一教会」被害者救済新法の内容

 政府・与党は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題を受け、悪質な寄付要求の被害を救済して未然防止を図る新法の法案を、野党側の主張も踏まえて異例のスピードで取りまとめた。政府案の修正には否定的で、10日が会期末の今国会を延長せずに成立を目指す。与野党の溝が埋まるかが焦点で、与党内には野党との党首会談で決着を図るべきだとの意見もある。
 岸田文雄首相は1日の参院予算委員会で「現行の法体系の中で許される限り最大限実効的な法案とすべく、さまざまな規定を組み合わせて条文化を進めた」と説明した。野党は「対象範囲が狭い」(日本維新の会の高木かおり氏)などと修正を求めたが、首相は応じなかった。
 首相周辺が「かつてないほど野党の意見を聞き入れた」と語るように、政府・与党は野党の主張を可能な限り反映させたとの立場。年末の2023年度予算編成を控え、国会日程は綱渡りで、法案自体は変更せずに国会答弁や付帯決議などで実効性を担保したい考えだ。
 政府案は、野党がマインドコントロール下での寄付禁止を求めていることを踏まえ、「個人の自由な意思を抑圧し、適切な判断が困難な状態に陥ること」がないよう、法人に配慮を求める規定を盛り込んだ。共産党の田村智子政策委員長は予算委で「禁止行為」に格上げするよう迫ったが、首相は、配慮義務に違反すれば「民法上の不法行為の認定、損害賠償が容易となる」と改めて述べ、理解を求めた。
 寄付勧誘の禁止に関し政府案は、霊感などにより「寄付が必要不可欠と告げ、個人を困惑させてはならない」と規定。これに関し、維新の高木氏は「必要不可欠」の文言を削除するよう求めたが、首相は「(成立後に)条文解釈の明文化を図るなどにより、さらに実効性のある制度にする」と拒否した。
 首相が新法を今国会に提出する方針を表明したのは11月8日。当初は来年の通常国会に先送りする想定だったが、内閣支持率の低落や早急な法整備を求める野党からの突き上げを受け、方針転換した。
 政府・与党は週明けの5日に衆院本会議で審議入りし、9日までに成立させたい考え。自民党の高木毅国対委員長は1日、立民の安住淳国対委員長と会談して協力を要請したが、安住氏は「1週間で衆参を通すというのは何か誤解しているのではないか。『ざる法』と批判を受けるような法案を簡単に通すわけにいかない」とけん制した。
 その一方で安住氏は記者団に、「より踏み込んだ修正をしてもらえば、窮屈な日程に協力することはやぶさかではない」と含みを持たせた。
 与野党は2日に国対委員長会談を開いて審議日程などを協議する。自民党幹部は、調整がつけば「幹事長会談なり党首会談なりを行うだろう」と述べ、党首レベルでの決着の可能性に言及した。 

 

 ◇被害者救済新法を巡る動き
 7月8日 安倍晋三元首相が銃撃され死亡
10月3日 岸田文雄首相、所信表明演説で消費者契約に関する法令見直し検討を表明
  17日 消費者庁検討会、不当な寄付要求禁止の法制化など提言
  21日 救済新法に関する与党と立憲民主、日本維新の会の4党実務者協議開始
11月8日 首相、救済新法の臨時国会提出を表明
  18日 政府、与野党6党の幹事長・書記局長に新法概要提示
  24日 政府・与党、宗教団体側に配慮を求める規定を盛り込む方針を野党に説明
  28日 与党が新法条文案を大筋了承
12月1日 政府が新法を閣議決定
   5日?新法が審議入り
  10日 臨時国会会期末

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