都心では見たことない「意外な光景」が…埼玉県川口市や蕨市に移り住んできた「ワラビスタン」たちの「リアル」

野田 洋人, 週刊現代

「どうして日本人はクルド人を嫌う?」

「クルド人怖いから声かけないほうがいいよ」

缶ビールを手にした日本人男性から声をかけられた。何が怖いのか聞き返しても、明確な答えはない。男性は「奴らは集団でいるし、不法滞在しているだろ。喧嘩もするし、そんな奴らは国に帰ればいい」と言い捨てて立ち去っていく。

感情の濃淡はあるが、この種の意見はよく聞かれた。明確な根拠はないが、なんとなく異なる物事を気持ちの上で受け入れられないということなのか。

蕨駅西口でスナックを経営する日本人女性はこう話す。

「クルド人は何を考えているのか分からないし、なんとなく怖い。彼らはお酒飲まないから、お客さんになることはないわね。あなた、マスコミでしょ。彼らをワラビスタンと呼ぶのはやめてほしい。だって彼らは川口に住んでいるのだから…蕨市とは違うでしょ。迷惑です!」

 

不動産屋を経営する日本人男性に話を聞くと、「ベトナム人とクルド人には部屋を貸したくないですね」と力なくつぶやいた。

「だって、契約者以外の連中が住み着くし、汚く使うから原状回復が大変なんですよ。でも私らも商売だから、日本人が誰も住まないような部屋にも住んでくれるので、文句も言えないし…」

蕨駅近くの公園の木陰に、数人の中東系の男性たちがたむろしていた。

声をかけ素性を話すと「どうして日本人はクルド人を嫌うの? クルド人何も悪いことしてないよ」と早口の日本語で一人のクルド人が捲し立てた。名刺を出し、どうしてそのような状況になったのか聞きたいのだと説明していると、いつの間にか背後に二人の男性が立っていた。

威嚇であるのか、振り向く記者の顔ギリギリまで近づいて「日本人、クルド人のこと嫌いだよ。話したくないよ」と低音でボソリと話した。そしてそのまま、きつい香水の匂いを残して立ち去っていった。

立ち去る仲間の一人に、「いつでもいいから連絡をくれ」と名刺を握らせた。

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