都心では見たことない「意外な光景」が…埼玉県川口市や蕨市に移り住んできた「ワラビスタン」たちの「リアル」

野田 洋人, 週刊現代

店舗前に置かれた柵の意味

蕨駅東口の一番街は、通りの両側にドラッグストアや飲食店、パチンコ屋、コンビニなどの建ち並ぶ駅前通りの一つ。目に付くのは、多くの店舗前に置かれた柵の数々だ。

都心では見たことのない、この意外とも思える“光景”について、パチンコ屋の店員は「外人が座り込みをするので仕方なく置いています」と口にした。

周囲を見渡すと、確かに中東出身と思われる風体の男性たちがドリンクを手に、ある者は地べたに座り、またある者は植栽の植えられた狭いスペースを陣取り、集団で楽しげに会話をしている。

あたりは禁煙エリアではあるのだが、彼らはお構いなくタバコを吸い、唾を吐き、まるでそこが我が家であるかのように居座っているふうに私の目には映った。

 

中東系のグループはいくつかに分かれている。年齢も様々であるし、服装も似たり寄ったりだ。スーツにネクタイ姿は皆無で、多くは半袖シャツに長ズボンにサンダル履きのカジュアルな服装が目立つ。

あるグループの中心には、怒りなのか、悲しみなのか、何かに激高している中年男性が手にした缶ジュースを振り回している。それをなだめるように仲間たちが声をかけ囲んでいる。感情のほとばしりが一段落したところで、彼らに声をかけてみた。

驚いたような彼らの視線がこちらに注がれる。皆、突然無口になり、一人の男性が「日本語知らない」と、静かに答えた。それまでの騒ぎが嘘のように静まり、男性たちはうつむき、互いに声を掛け合って立ち去ってしまった。そこはマンションの入り口付近。立ち去った後にはタバコの吸い殻と吐いた唾の跡だけが残った。

関連記事