JR広島駅(右下)の北口で掘削工事が進む広島高速5号二葉山トンネル(広島市東区)
JR広島駅(右下)の北口で掘削工事が進む広島高速5号二葉山トンネル(広島市東区)

 広島高速5号二葉山トンネル(広島市東区)の整備で、事業主体の広島高速道路公社(東区)は14日、事業費を287億2千万円に増額することで受注した共同企業体(JV)と合意したと発表した。当初の契約額の199億9999万800円と比べて1・4倍の水準で、87億2千万円増える。増額分の穴埋めで、公社に出資する広島県と市の負担が生じる見通しで、両者と対応を協議する。

 公社で記者会見した石岡輝久理事長は「大幅な増額となり、県民、市民におわびする」と陳謝。混乱を招いたとして「事業が軌道に乗るよう微力を尽くした上で退任する」と述べたが、時期は明言しなかった。2020年度末としてきた高速5号の開通時期は、2年程度遅れるとみられる。

 公社によると、16年5月にJVと交わした当初の契約では、完成に欠かせないトンネル内壁の設置費など6項目の工事費が含まれていなかった。今回の増額幅は、JVが契約前の見積もりで示した6項目を含む300億6千万円をベースに精査。その結果、13億4千万円少ない金額で両者が折り合ったという。

 問題を検証した第三者委員会が今年3月にまとめた報告書によると、6項目の工事費について公社とJVの間で食い違いがあった。公社は契約額に含まれているとし、JVは契約後の増額を考えていた。一方で、契約後の増額を公社が持ち掛けるなど「不適切な価格交渉」が繰り返された。

 石岡理事長は不適切な価格交渉を進めた理由を「広島県と広島市、公社で合意していた完成時期を守るため、契約成立を優先したためだった」と説明。公社によるこれ以上の調査は「考えていない」と明言した。

 JVの代表である大林組(東京)は「公社と協力しながら、引き続き工事を進めていきたい」とコメントした。(加納亜弥)