物語は、加藤シゲアキさんが取材をもとに
書き下ろしたリアル・フィクションです

フィルムもTOYOBO

東洋紡は鮮度を保つフィルムをつくるだけではなく、プラスチックの資源循環を目指し、リサイクル樹脂やバイオマス(植物由来)原料の使用比率の向上を進めるなど、持続可能な社会の実現に向けた取り組みに挑戦しています。

Story 01

フィルムの物語

フィルムの物語 巡るフィルムの導く先は

「巡るフィルムの導く先は」

「ぼーどん?」
 七歳になったばかりというミクが、会話に割り込んでそう言った。
「違うよ。『ぼ・う・ど・ん』。曇りにくいって意味で――」
 新見が父親らしく丁寧にそう教えても、ミクは「ぼーどん」と、まるでアニメのキャラクターを呼ぶように繰り返し、次第に勝手な節回しでリズムをつけ、オリジナルのダンスを披露する。それはあまりに滑稽な動きで、僕はつい笑ってしまう。
「すっかり浸透したと思ったけど、まだまだわかってくれない人もいるのね」
 新見の妻である望美が、眉間に浅い皺を寄せる。
「普通は知らないよ。俺だって新見に聞くまで野菜を包んでるフィルムが曇りにくいなんて知らなかったし」
 僕がそう返すと新見は肩を落とし、「僕たちの会社では当たり前なんだけどね。直接関わる農家さんでも、なかなか興味を持ってもらえないことも多くて」と肩を落とす。その肩を「まぁまぁ」と望美が撫で、新見は妻の手に自分の手を重ねた。
 ふたりは社内結婚だった。以前はフィルムを扱う同部署にいたが、望美は産休明けから数年後に中空糸膜を扱う部に異動になった。
 新見のフィルムへの情熱は並々ならぬものがあり、会う度に製品のことを聞かされるから僕もなんとなく覚えてしまう。望美もフィルムに愛情を持っていたため、付き合い立てのデートはもっぱらスーパーだった。そこで何をするのかと思えば野菜のフィルムなどを手に取ってむにむに触って調べているというから、さすがに良くないとたしなめた。現に、スーパーの店員に怒られたこともあったそうだ。そんな変わった二人が長く続くとは思っていなかったが、こうして幸せな家庭を築いているのだから、間違っていたのは僕の方なのだろう。
「それで? こないだ行ったその農家さんにはなんて言われたの?」
「包装は今のもので特に困ってないから、必要ないって。『野菜を作るまでが仕事』って思ってる農家さんも少なくないんだよな。包装はいつも後回しさ」
 新見がテーブルのサラダを頬張り、そして「こんなに美味しいからこそ、使って欲しいのに」と頭を抱える。
「つい仕事の愚痴を言ってしまった。今日は僕の話はいいんだよ。さあ、飲め飲め」
 そう言って新見が僕のグラスにワインを注ぐ。
 この日は僕の快気祝いだった。二ヶ月前に網膜剥離を起こして手術となり、ようやく状態が落ち着いたので、大学からの友人である新見が自宅に招いてくれた。
「お仕事の方は大丈夫なの?」
「問題ないさ。俺は頭で仕事するからね。どこでもかまわないし、目が見えなくたって作品を生み出していた」
「あら、ずいぶんと気取った言い回しをするのね」
「気取ったところで締め切りは延びないぞ。本当は原稿溜まってひぃひぃ言ってるくせに」
「締め切りに追われてからが本番なんだよ」
「まぁ、駆け出しの小説家とは思えない口ぶり」
 望美がからかうように僕に言う。それが心地よく、ワインに口を付け、ぐっと喉に流し込んだ。
「なぁ、これ食べてくれよ。本当うまいから」
 新見がサラダをよそって渡した。急かされるように口へ運ぶと、しゃきしゃきとした食感と葉の香りが口に広がる。
「確かに美味しい。なんて野菜なんだ?」
「名前はまだないって言ってた」
「え?」
「まだ開発中の新品種なんだ。水分量が多いからこの食感なんだけど、その分日持ちしなくてさ」
 望美が「だったらなおさら使えばいいのに」とみんなの思いを代弁した。
「ねぇ、どんなプレゼンをしたの?」
 防曇フィルムはその名の通り曇りにくい。そのため中身が見えやすいのはもちろん、水分がたまらず腐敗を遅らせることができる。新見は慣れた口ぶりでそう説明した。
「だけど事前に送ったサンプルで試したら、賞味期限がたった一日しか増えなかったんだって。そのためにコストをかける余裕はないって言われちゃったんだ」
「一日は短くないけどな。入院期間の一日がどれだけ長く感じられたことか」
 ふふと望美が笑う。ミクはまだ「ぼーどん! ぼーどん!」と繰り返しながら身体をひねっている。
「私も色々言われたこと思い出した」
「一番覚えてるのはなに?」
「『ゴミのためにお金なんかかけられるか!』って農家さんに一蹴されたことかな」
「ひどいなぁ」
 僕がそう呟くと、新見が「だけど間違ってはいないよ。僕たちが作ってるのはゴミになるものだからね」と言った。
「消費者が野菜を使い終えたら捨てられるゴミさ。だけど、何も役割のなかったゴミなんてひとつもないだろ? 製品を守る包装であったり、商品をわかりやすくするラベルであったり、捨てられるまではちゃんと意味があって、存在しているんだ。そもそも意味なく作られるものなんてないだろ⁉」
 新見の熱が彼の顔を赤くした。今にも湯気が出そうだと僕が言うと、望美が防曇フィルムで覆わなきゃとふざける。
「でも新見の言っていること、よくわかるよ。ゴミのほとんどって容器や袋だから。ペットボトルもビニール袋も。それが存在しなきゃごちゃごちゃになっちゃうし、運べないしで、生活できないもんな。だけど空っぽで必要とされていないところにあったら、そりゃゴミになるよ。あれみたいなもんだよ」
 そう言ってミクが脱ぎっぱなしにしている靴下を指差した。
「靴下だって足に履かれずに路地なんかに落ちてたら、そりゃもうゴミだろ。なにが言いたいかって言うとさ、新見の言う通り、最初からゴミだったゴミはないんだよ。人も同じだ。最初から悪人なんか存在しない」
 うまくキマったと思って新見を見ると、まるで僕の言葉など聞いていなかったようで、「だからゴミはちゃんと捨ててくれ!」と机を叩いた。すると望美も乗っかって、「その通り! ゴミはゴミ箱へ! 海へ捨てるな!」と繰り返し、拳を突き挙げる。望美が僕と新見にも同様にしろと目配せするので、彼女と一緒に声を上げた。ミクもよくわからないながら、「すてぇるなぁ!」と大声を出して腕を振る。
 突如始まったシュプレヒコールに四人が笑っていると、新見のスマホが鳴り、彼は「えっ」と声を漏らす。しばらく席を外してから戻ってきた彼は「いやー、不思議なこともあるもんだ」と席に着いた。赤らんでいた肌は元の色に直っている。
「なんだよ、気になる話し出ししやがって」
 すると新見は「結果から言うと、このサラダの野菜の農家から契約したいってことだったんだ」と続け、望美が「よかったじゃん」と拍手する。
「その経緯が、ちょっと面白くて」
 新見はそれから、農家から聞いた話を語った。
 先日、新見が農家を去った後、同じ畑に料理人を名乗るとある男性が訪ねてきた。店で使う野菜を探しているのでもしよかったら見せて欲しいと頼まれ、案内したところ彼はすごく気に入ったという。すぐにでも契約したいというので前向きに話を進めていたが、そこで問題が発生した。彼のお店は沖縄の離島にあり、その距離では出荷して届くまでに賞味期限が過ぎてしまうということだった。契約の話はなかったことになるかと思われたが、新見が渡したサンプルのフィルムなら一日延びることを思い出し、試しにこれに包んで持って帰ってみてはどうかとなった。野菜を手にして帰った彼から数日後、十分使える保存状態だったと連絡があり、防曇フィルムが必須になったというわけだ。
「たった一日、されど一日」
 僕がそう言うと、新見は「話はまだある」と続けた。
「その料理人の住む離島に、同じように味はいいけど鮮度の維持が難しい食材があり、それを僕が渡したサンプルのフィルムで包んだところ、本州にも出荷できそうだと判明したみたいで」
「おいおい、ゴミが回ってるじゃないか」
「そしたら、そのフィルムが――」
「え、どこまで続く話?」
「さすがにそれは冗談だけど、だから沖縄の離島でもフィルムの契約が決まりそう。来週行ってくる」
 ゴミがゴミになりたがらない話か、何かの作品に使えるかもな、と僕はこっそりテーブルを指で小突く。
「ちなみにそこ、なんて離島なんだ?」
 新見から聞いた島の名は聞いたことがなく、スマホを調べてみる。その画像にはいかにも南の島らしい青々とした空と海が広がっていた。
「魅力的な島だな。俺も行こうかな」
「なんでだよ。お前は溜まった仕事をしろ」
「言っただろ、俺は脳で仕事するからどこでもかまわないって。それにせっかくなら、この治った網膜に美しい光景を見せてあげたいじゃないか」
 望美がふふっとまた笑うと、ミクが先ほどの「ぼーどん」の節回しで「もーまく」と歌い、踊り出す。それをしばらく眺めたあと、望美が「じゃあ、私たちもパパについていって南の島に遊びに行こうかね」と娘に声をかけた。彼女はオリジナルダンスをぴたりと止め、「いく!」と大声で返す。おいおい仕事なんだけどな、と呆れた顔を浮かべる新見の口角は上がっており、それを見つめる母子もまた白い歯を見せていた。
 澄み渡る空も碧海もいい。けれどなによりも先に僕の網膜に映った景色が、この曇りない笑顔の数々でよかった。そう頭のなかで言葉にし、やっぱり気取りすぎかもしれないと思って、僕はサラダを頬張る。
 それからみんなでこの野菜の名前がなんだったらいいかを言い合った。大したアイデアは出なかったが、未来の予感めいたものがそこには横たわっていて、いつか答え合わせが出来る日を僕たちは待ち遠しく思った。

「巡るフィルムの導く先は」

「ぼーどん?」
 七歳になったばかりというミクが、会話に割り込んでそう言った。
「違うよ。『ぼ・う・ど・ん』。曇りにくいって意味で――」
 新見が父親らしく丁寧にそう教えても、ミクは「ぼーどん」と、まるでアニメのキャラクターを呼ぶように繰り返し、次第に勝手な節回しでリズムをつけ、オリジナルのダンスを披露す

る。
 それはあまりに滑稽な動きで、僕はつい笑ってしまう。
「すっかり浸透したと思ったけど、まだまだわかってくれない人もいるのね」
 新見の妻である望美が、眉間に浅い皺を寄せる。
「普通は知らないよ。俺だって新見に聞くまで野菜を包んでるフィルムが曇りにくいなんて知らなかったし」
 僕がそう返すと新見は肩を落とし、「僕たちの会社では当たり前なんだけどね。直接関わる農家さんでも、なかなか興味を持ってもらえないことも多くて」と肩を落とす。その肩を「ま

ぁまぁ」と望美が撫で、新見は妻の手に自分の手を重ねた。
 ふたりは社内結婚だった。以前はフィルムを扱う同部署にいたが、望美は産休明けから数年後に中空糸膜を扱う部に異動になった。
 新見のフィルムへの情熱は並々ならぬものがあり、会う度に製品のことを聞かされるから僕もなんとなく覚えてしまう。望美もフィルムに愛情を持っていたため、付き合い立てのデートはもっぱらスーパーだった。そこで何をするのかと思えば野菜のフィルムなどを手に取ってむにむに触って調べているというから、さすがに良くないとたしなめた。現に、スーパーの店員

に怒られたこともあったそうだ。そんな変わった二人が長く続くとは思っていなかったが、こうして幸せな家庭を築いているのだから、間違っていたのは僕の方なのだろう。
「それで? こないだ行ったその農家さんにはなんて言われたの?」
「包装は今のもので特に困ってないから、必要ないって。『野菜を作るまでが仕事』って思ってる農家さんも少なくないんだよな。包装はいつも後回しさ」
 新見がテーブルのサラダを頬張り、そして「こんなに美味しいからこそ、使って欲しいのに」と頭を抱える。

「つい仕事の愚痴を言ってしまった。今日は僕の話はいいんだよ。さあ、飲め飲め」
 そう言って新見が僕のグラスにワインを注ぐ。
 この日は僕の快気祝いだった。二ヶ月前に網膜剥離を起こして手術となり、ようやく状態が落ち着いたので、大学からの友人である新見が自宅に招いてくれた。
「お仕事の方は大丈夫なの?」
「問題ないさ。俺は頭で仕事するからね。どこでもかまわないし、目が見えなくたって作品を生み出していた」
「あら、ずいぶんと気取った言い回しをするのね」

「気取ったところで締め切りは延びないぞ。本当は原稿溜まってひぃひぃ言ってるくせに」
「締め切りに追われてからが本番なんだよ」
「まぁ、駆け出しの小説家とは思えない口ぶり」
 望美がからかうように僕に言う。それが心地よく、ワインに口を付け、ぐっと喉に流し込んだ。
「なぁ、これ食べてくれよ。本当うまいから」
 新見がサラダをよそって渡した。急かされるように口へ運ぶと、しゃきしゃきとした食感と葉の香りが口に広がる。
「確かに美味しい。なんて野菜なんだ?」

「名前はまだないって言ってた」
「え?」
「まだ開発中の新品種なんだ。水分量が多いからこの食感なんだけど、その分日持ちしなくてさ」
 望美が「だったらなおさら使えばいいのに」とみんなの思いを代弁した。
「ねぇ、どんなプレゼンをしたの?」
 防曇フィルムはその名の通り曇りにくい。そのため中身が見えやすいのはもちろん、水分がたまらず腐敗を遅らせることができる。新見は慣れた口ぶりでそう説明した。

「だけど事前に送ったサンプルで試したら、賞味期限がたった一日しか増えなかったんだって。そのためにコストをかける余裕はないって言われちゃったんだ」
「一日は短くないけどな。入院期間の一日がどれだけ長く感じられたことか」
 ふふと望美が笑う。ミクはまだ「ぼーどん! ぼーどん!」と繰り返しながら身体をひねっている。
「私も色々言われたこと思い出した」
「一番覚えてるのはなに?」
「『ゴミのためにお金なんかかけられるか!』って農家さんに

一蹴されたことかな」
「ひどいなぁ」
 僕がそう呟くと、新見が「だけど間違ってはいないよ。僕たちが作ってるのはゴミになるものだからね」と言った。
「消費者が野菜を使い終えたら捨てられるゴミさ。だけど、何も役割のなかったゴミなんてひとつもないだろ? 製品を守る包装であったり、商品をわかりやすくするラベルであったり、捨てられるまではちゃんと意味があって、存在しているんだ。そもそも意味なく作られるものなんてないだろ⁉」
 新見の熱が彼の顔を赤くした。今にも湯気が出そうだと僕が

言うと、望美が防曇フィルムで覆わなきゃとふざける。
「でも新見の言っていること、よくわかるよ。ゴミのほとんどって容器や袋だから。ペットボトルもビニール袋も。それが存在しなきゃごちゃごちゃになっちゃうし、運べないしで、生活できないもんな。だけど空っぽで必要とされていないところにあったら、そりゃゴミになるよ。あれみたいなもんだよ」
 そう言ってミクが脱ぎっぱなしにしている靴下を指差した。
「靴下だって足に履かれずに路地なんかに落ちてたら、そりゃもうゴミだろ。なにが言いたいかって言うとさ、新見の言う通り、最初からゴミだったゴミはないんだよ。人も同じだ。最初

から悪人なんか存在しない」
 うまくキマったと思って新見を見ると、まるで僕の言葉など聞いていなかったようで、「だからゴミはちゃんと捨ててくれ!」と机を叩いた。すると望美も乗っかって、「その通り! ゴミはゴミ箱へ! 海へ捨てるな!」と繰り返し、拳を突き挙げる。望美が僕と新見にも同様にしろと目配せするので、彼女と一緒に声を上げた。ミクもよくわからないながら、「すてぇるなぁ!」と大声を出して腕を振る。
 突如始まったシュプレヒコールに四人が笑っていると、新見のスマホが鳴り、彼は「えっ」と声を漏らす。しばらく席を外

してから戻ってきた彼は「いやー、不思議なこともあるもんだ」と席に着いた。赤らんでいた肌は元の色に直っている。
「なんだよ、気になる話し出ししやがって」
 すると新見は「結果から言うと、このサラダの野菜の農家から契約したいってことだったんだ」と続け、望美が「よかったじゃん」と拍手する。
「その経緯が、ちょっと面白くて」
 新見はそれから、農家から聞いた話を語った。
 先日、新見が農家を去った後、同じ畑に料理人を名乗るとある男性が訪ねてきた。店で使う野菜を探しているのでもしよか

ったら見せて欲しいと頼まれ、案内したところ彼はすごく気に入ったという。すぐにでも契約したいというので前向きに話を進めていたが、そこで問題が発生した。彼のお店は沖縄の離島にあり、その距離では出荷して届くまでに賞味期限が過ぎてしまうということだった。契約の話はなかったことになるかと思われたが、新見が渡したサンプルのフィルムなら一日延びることを思い出し、試しにこれに包んで持って帰ってみてはどうかとなった。野菜を手にして帰った彼から数日後、十分使える保存状態だったと連絡があり、防曇フィルムが必須になったというわけだ。

「たった一日、されど一日」
 僕がそう言うと、新見は「話はまだある」と続けた。
「その料理人の住む離島に、同じように味はいいけど鮮度の維持が難しい食材があり、それを僕が渡したサンプルのフィルムで包んだところ、本州にも出荷できそうだと判明したみたいで」
「おいおい、ゴミが回ってるじゃないか」
「そしたら、そのフィルムが――」
「え、どこまで続く話?」
「さすがにそれは冗談だけど、だから沖縄の離島でもフィルム

の契約が決まりそう。来週行ってくる」
 ゴミがゴミになりたがらない話か、何かの作品に使えるかもな、と僕はこっそりテーブルを指で小突く。
「ちなみにそこ、なんて離島なんだ?」
 新見から聞いた島の名は聞いたことがなく、スマホを調べてみる。その画像にはいかにも南の島らしい青々とした空と海が広がっていた。
「魅力的な島だな。俺も行こうかな」
「なんでだよ。お前は溜まった仕事をしろ」
「言っただろ、俺は脳で仕事するからどこでもかまわないっ。

それにせっかくなら、この治った網膜に美しい光景を見せてあげたいじゃないか」
 望美がふふっとまた笑うと、ミクが先ほどの「ぼーどん」の節回しで「もーまく」と歌い、踊り出す。それをしばらく眺めたあと、望美が「じゃあ、私たちもパパについていって南の島に遊びに行こうかね」と娘に声をかけた。彼女はオリジナルダンスをぴたりと止め、「いく!」と大声で返す。おいおい仕事なんだけどな、と呆れた顔を浮かべる新見の口角は上がっており、それを見つめる母子もまた白い歯を見せていた。
 澄み渡る空も碧海もいい。けれどなによりも先に僕の網膜に

映った景色が、この曇りない笑顔の数々でよかった。そう頭のなかで言葉にし、やっぱり気取りすぎかもしれないと思って、僕はサラダを頬張る。
 それからみんなでこの野菜の名前がなんだったらいいかを言い合った。大したアイデアは出なかったが、未来の予感めいたものがそこには横たわっていて、いつか答え合わせが出来る日を僕たちは待ち遠しく思った。

    パッケージフィルムについて TOYOBOで働きたい

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    Who's TOYOBO?

    東洋紡は、綿紡績から始まり
    フィルム、ライフサイエンス、環境・機能材を中心に、モビリティ、高機能繊維など
    「高機能素材」を製造、加工、販売する企業へと発展してきました。

    現状に満足せず、常に成長を続けるために
    変化を恐れず、変化を楽しみ、変化をつくる。

    私たちは、時代をけん引するカテゴリー・リーダーをめざし
    安全安心なオリジナリティあふれるモノづくりで
    人と地球のために、新しい変化を生み出していきます。