29日に掘削工事を再開する二葉山トンネルの出入り口付近(広島市東区)
29日に掘削工事を再開する二葉山トンネルの出入り口付近(広島市東区)

 広島高速5号二葉山トンネル(広島市東区、1・8キロ)の建設を巡り、事業主体の広島高速道路公社(東区)は27日、現場真上の地表面の隆起により中断していた掘削工事を29日に再開すると発表した。地元住民が工事に伴う住宅被害などを訴える中、公社は住民への説明は十分果たしたとし、昨年12月の工事中断から約半年ぶりに再開へ踏み切る。

 公社は27日、地表面の変動を抑える対策を記した説明資料を現場真上の牛田東地区の全戸に配り、質問は個別に応じる旨を周知した。公社の担当者は「広島の発展のために非常に重要な道路で早期の完成を目指している。住民への情報発信はこれまでもしており、引き続き誠意を持って対応する」としている。

 対策は、大型掘削機で掘り進める際に地盤沈下を防ぐ目的で高めていた圧力をやや低くする内容。地下水位の過度な上昇を防ぎ、地盤が上がらないようにする。有識者でつくる施工管理委員会で「おおむね妥当」との評価を得た。

 公社は、住民向けに原因分析や対策を示す説明会を25、26日に開催。しかし、トンネル真上の牛田東地区の住民は「質疑応答の時間が十分に確保されていない」などと反発し、同地区の説明会の出席者は計2人にとどまっていた。

 トンネルは2018年9月、JR広島駅側の南端から掘り始めた。22年12月22日、牛田東地区に設けた計測地点1カ所で基準の2・4ミリを0・1ミリ超す隆起を計測し、工事を中断した。中断は大型掘削機が同地区の住宅地直下に入った21年10月以降で7回目だった。

 掘削工事は22年7月に完了予定だったが、現時点で掘削したのは1・4キロ区間のうち約6割の886メートルにとどまる。新たな工期や工期延長に伴う追加の費用負担は、工事を受注した共同企業体(JV)が国の建設工事紛争審査会へ調停を申し立てており、定まっていない。(永山啓一)

 広島高速5号 JR広島駅北口と広島高速1号温品ジャンクション(JCT)を結ぶ全長4・0キロの自動車専用道路。開通すれば広島駅から広島空港(三原市)への所要時間が5~7分短縮する。現計画での5号全体の事業費は1259億円で、完成時期は未定。
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