2019.07.19

広島高速5号線開通によって開かれる、未来への可能性

広島の街

人口100万人を超える都市としては珍しく、いわゆる「都市高速」がない街、広島。広島の街には保守的な人も多く、急速な都市開発を嫌う人も多いのかもしれません。

かつては、広島駅から観音の広島空港(当時)を結ぶ予定だった地下鉄の計画も、「復興の象徴の路面電車を守りたい」という住民の猛烈な反対により頓挫した過去があります。

広島高速5号線についても同様で、トンネル建設に伴う地盤沈下の影響を危惧する人々の猛反対によって計画が何度も延期になっています。

産経新聞の記事によると、近年では、風水的に良くない、陰と陽のバランスが崩れる、気の流れに変化が起き広島の人々のエネルギーが奪われるなど、本当かどうか疑問符がつくスピリチュアル系の反対理由も出てきているようです。

また、今後計画されている路線についても、用地買収も難航しているようです。令和の時代に突入しても、広島には広島駅や中心部の紙屋町(かみやちょう)、八丁堀(はっちょうぼり)などに繋がる都市高速はありません。

地下鉄も都市高速もない広島の交通の便は、都市の規模を考えれば物凄く不便と言わざるを得ないのです。

しかし、そのような状況に一筋の光を指すかもしれないのが、2021年3月の開通が予定されている広島高速5号線なのです。

この路線の開通により、広島の街がどのように変わるのか、その可能性を探っていきましょう。

初めて広島駅に接続される高速道路

広島高速5号線は、広島駅の北側の二葉の里(ふたばのさと)エリアに出入口が作られます。広島の玄関口である広島駅前まで行くことができる初めての高速道路です。

この5号線は、東区の馬木(うまき)や福田(ふくだ)方面を通り、山陽自動車道へと繋がる広島高速1号線、南区を通り、宇品(うじな)や観音(かんおん)、海田町(かいたちょう)、呉(くれ)方面に向かうことができる広島高速2号線と接続される予定です。

この路線の開通により、広島近郊の様々な街と広島駅が高速道路によって結ばれることになります。

有料の高速道路とはいえ、様々な場所と広島駅が結ばれるということは、地域の発展において大きな要素と言えます。広島駅まで高速で行けるようになった地域に、新たな住民が増える可能性もあるでしょう。

広島空港までのアクセスが改善

かつて、広島駅から約7kmの西区観音という便利な位置にあった広島空港は、住民や当時の県知事らの意向により、広島駅から東におよそ40kmの山間僻地・三原市本郷町(みはらしほんごうちょう)に移設されました。

この移設により、広島市から空港までの距離が飛躍的に増し、広島駅から東京駅までの移動の所要時間が飛行機と新幹線でほぼ同じ、という非効率な状況となったのです。

広島駅から広島空港までは、高速道路を通るリムジンバスで行くことができます。

しかし、現状では、広島駅の最寄りのインターチェンジに行くまで、リムジンバスは3.7kmほどの一般道路を進む必要があります。

この道は、日常的に交通量が多く、ラッシュ時でなくとも渋滞が発生するため、バスが高速道路に入るまでに時間がかかっています。

その結果、広島駅から広島空港までのリムジンバスの所要時間は、ダイヤ通りに進んでも50分程度かかるという状況になっています。

もし、広島高速5号線の開通により、リムジンバスが広島駅から直接高速道路に入ることができれば、広島空港までの所要時間も短縮されることでしょう。

5号線周辺のエリアにも恩恵が大きい

5号線の開通は、周辺のエリアにも大きな恩恵をもたらします。

開通に伴ってインターチェンジが新設される東区中山(なかやま)や、隣接する温品(ぬくしな)エリアの住民の多くは、現在でも片側1車線の峠を越えて広島駅にアクセスしています。

高速道路の開通により、有料ではあるものの「トンネルを抜けるだけで広島駅」という状態になるため、通勤で利用する人が増えると見込まれています。

また、5号線を利用する人が増えることにより、峠の渋滞も緩和されることが期待できます。

実際、中山にはこの5号線の開通を見越して新しいマンションが建設されており、交通の便の改善が地域の発展につながることが証明されています。

環境への負荷が軽減

広島駅から北東の方向に広がり、たくさんの住宅地がある広島市東区。

広島市中心部への通勤は、先ほど言及した片側1車線の峠を越えるか、府中町(ふちゅうちょう)方面に迂回するか、という選択肢しかないため、毎朝毎夕慢性的な渋滞が発生しています。

国土交通省によると、渋滞により速度が4分の1になった車から発生する排気ガスは、通常時の2倍。

しかも長時間にわたって排出されることになります。渋滞を緩和することができれば、CO2や有害なガスの発生を抑え、環境への負荷が軽減することにもなるのです。

広島の街を大きく変える5号線

5号線以外の広島高速は、基本的に中心部を避けるように走っています。

そのため、中心部に行くためには結局どこかのインターチェンジで高速を降り、一般道路を走らなければなりませんでした。

広島駅に接続する5号線の開通は、広島都市圏の大きな発展の可能性を秘めていると言えるでしょう。