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GLAY『GHOST TRACK E.P』インタビュー TERU編│函館への熱い気持ち、TERUが思い描く未来のビジョン
GLAYの最新リリース『HC 2023 episode 2 -GHOST TRACK E.P-』は、またしても刺激に満ちた内容になっている。このバンドらしいパッションや繊細さを表現した楽曲、そのあちこちに新たなトライアルを込めたサウンド作り。その中に4人それぞれの個性が感じられる仕上がりは、現在のバンドの状態の良さを感じさせてくれるものだ。
今回のTERUへのインタビューでは、そうしたバンドの現在形とともに、彼自身が今何を考え、何を感じているのかに迫ろうと思った。ヴォーカリスト、それにソングライターとしても失うことのないまっすぐさに加え、このところは絵を描くことにも積極的で、その上にさまざまなアイディアを巡らせていることがSNSなどを通じて伝わってくる。
GLAYとファンと家族と、そして函館への愛に満ちたTERUの言葉に、ぜひ接してほしい。そしてそのストレートで熱い人間性に、あらためて触れてほしいと思う。(Interview&Text:青木優/Photo:興梠真穂)
◆『HC 2023 episode 2 -GHOST TRACK E.P-』インタビュー JIRO編はこちら
頑張ればどうにかなるような時代ではないけど、頑張ればどうにかなってる人もいる
――TERUさんには前回のインタビュー(https://www.billboard-japan.com/special/detail/3836)で、どうしてそんなに前向きになれるのか?という話を聞かせてもらって、とても納得することができまして。
TERU:はい! 相変わらず前向きでやってます(笑)。
――承知しています(笑)。その席の最後に、このepisode 1のシングルの次には、episode 2があるんですよね?と聞いたら「たぶんリーダーが考えてると思う」みたいに言われまして……。
TERU:はい。episode 2あるのかな?みたいな話をしましたね(笑)。
――そうです。それがこうして届いたわけですが、しかしEPなのに盛りだくさんの内容になっていますね。
TERU:いやぁ、ほんとそうですね。ここまでボリュームが出るとは思ってなかったです。最初は4、5曲かなと思ってたんですけど、曲が増えていって、最後に「Ghost of GLAY 愛のテーマ」が追加されて、さらにボリュームが出た感じがします。
――そしてこの1曲目の「Buddy」がとてもポジティブでソウルフルで、盛り上がる曲になっています。
TERU:そうですね。3月から始まったホールツアー(【HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2023 -The Ghost of GLAY-】)の最初はまだこの「Buddy」をあたためていて、後半戦でようやく発表したんです。そのライブでTAKUROが「ずっと支えてくれたファンのみんなが俺たちのBuddy(=相棒、大切な存在)だ」という言い方をしてたんですよ。コロナの3年間ずっと耐えてくれた、それも声出しちゃいけないとかマスクしなくちゃいけないとか、すごく規制の多い中でもGLAYを支えてくれたそのファンの子たちに対してね。今まではGLAYERという呼び方をしていたんですけど、明確に「僕たちのBuddyだ」という位置付けで告げたのは、ちょっと珍しかった。それだけ、すごくいろんなことがあったからだろうなと思いますね。
――TAKUROさんは「Buddy」に関して「長い間お互いを励まし、助け合い、時にはライバルとしてぶつかり合い、刺激し合いながら歩んできた2人の物語を描きたく、2年ほど前から準備して参りました」というコメントを発表しています。TERUさんがこの曲を聴いたのもそのぐらいですか?
TERU:初めて聴いたのは、たぶん昨年の頭のほうですね。リモートのレコーディングの中の一環として、僕は仮歌を自分の家で唄いました。その後にバンドみんなで集まる機会があったので、その時に音を合わせて、リアレンジしたりしましたね。この曲の歌詞に飲食店のくだりが出てくるんですけど、それはコロナ禍の自粛がちょっと緩和された時期にTAKUROや仲間が集まってご飯食べていたお店がモデルなんですよ。そこの店主と女将さんはほんとに苦労してそのお店をふたりでやってきて……そういうのも重なって、すごく思い入れの強い曲になりましたね。
――TERUさんにも、そのお店への思いがあるわけですね。
TERU:はい。そこから歌詞を置き換えて、支えてくれたファンの子たちに対する思いも含まれるものにしたんです。だから自分にもすごく情景が見えるというか……。僕らの世代の仲間たちって、みんな会社を立ち上げて、でも銀行からお金借りれなくてすごく悩んだという話をよく聞いていたんですよ。それがまさしくこの歌詞の中にあるから「わかるよ!」って思う。同世代の仲間たちもライブで初めて聴いて「あの曲めちゃくちゃいいね!」と言ってくれてるんです。いろいろと苦労してきた時代を思い出したりする曲ですね。
――そうですね。たくさんの困難を乗り越えてきた人たちの物語が見えてきます。
TERU:うん、頑張ればどうにかなるような時代ではないんだけど……でも「頑張ればどうにかなってる人もいるよ!」みたいな。
――(笑)。でも歌を唄う人はそういう姿勢であってほしいと思います。僕は歌詞の2番の<焦る気持ち募るばかり自分がわからなくなっていっても/信じる人がいるならいい悔いなく生きよう/人生はせわしないから>というところがとてもGLAYらしいなと感じたんです。GLAYだって、前向きな時ばかりだったわけではないじゃないですか? 大きな成功をつかんだゆえの苦労があって、それからも大変な時期がありながら、みんなで乗り越えて、ここまでやってきたバンドですよね。
TERU:そうね……振り返ると、「結局は何だったんだろう?」ってことも多いんですよ。ポジティブになるのは、やっぱりそれなりの経験をしてきたからこそなんですよね。自分も50過ぎてきて、そのうちに「あれは何だったんだろう」と思える時期が来るから、前向きに考えていくことのほうが多くなるというか。そういうことをこうして言葉にして、若い世代の人たちに伝わってくれればね。それは歌詞の通り。そんなに焦らずに。でも、時間はそんなにないよ、って(笑)。
――たしかにそうですね。そして<いつまでも楽しくそんな事ないのにオマエには永遠を感じてる>というところもGLAYだからこそだと感じます。
TERU:そうですね(笑)。それはちゃんとファンの子たちに伝わってると思う。そしてその言葉で「よし、頑張ろう」と思える人たちも必ずいると思うので。今回のツアーでは歌詞を(ビジョンに)出してライブをしましたけど、共感して、「頑張ろうと思いました」という言葉をたくさんいただきました。
――それから<相変わらずふざけてそれなのに真面目に愛唄うオマエが愛しい>というフレーズは、この飲食店のご夫婦のことでもあるだろうし、TAKUROさんからこれを唄うTERUさんへの向けた言葉のようにも思います。
TERU:そうかもしれないですね!(笑)それも感じますし、あと、この<愛唄う>というのは、声に出して唄うだけではなく、ベースだってギターだって<唄う>という表現の仕方もできるので。GLAYの音を一緒に唄ってる、というのも感じますね。
――サウンド的にはキーボードの音色が新鮮だったり、ちょっとシティ・ポップの感覚もありますね。
TERU:この曲に関しては、アルバム『FREEDOM ONLY』(2021年)からの流れがありますね。実際のシティ・ポップとはちょっと違うかもしれないけど、「いま自分たちが追い求めるポップとはなんぞや」みたいなものを形にした曲なんじゃないかな。「これから自分たちがどういうポップサウンドを日本の中でどう響かせていくのか挑戦し続けていく」という表明でもあると思います。『FREEDOM ONLY』もそうでしたけれど。
――だからこのバンドの熱さと、それをポップシーンにリーチしながら実現させる、そのバランスがとれているとも思います。ライブで唄っていて、どうでした?
TERU:いやぁ、ツアーの後半の4本ぐらいでしか唄ってないんですけども、でもその唄い方はまるでCDと違ったので、あらためてライブツアー終わってから歌い直した曲なんですよ。
――あ、そうなんですか?
TERU:そう、曲の中の「ヘイ!」という声も、やっぱりライブで叫んだものと全然違ったから、「ヘイ!」は絶対に直したいと思って(笑)。それからサビの勢いもどんどん馴染んできたから、レコーディングし直しました。ほんとに間に合って良かったなと思います(笑)。MVはライブの場面をつなげたり、そのドキュメントだったりになってますね。
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リリース情報
EP『HC 2023 episode 2-GHOST TRACK E.P-』
- 2023/9/27 RELEASE
『HC 2023 episode 2-GHOST TRACK E.P-』特設サイト
GLAY 関連リンク
HC 2023 episode 2 -GHOST TRACK E.P-
2023/09/27 RELEASE
PCCN-59
Disc01
- 01.Buddy
- 02.Pianista
- 03.U・TA・KA・TA
- 04.刻は波のように
- 05.SEVEN DAYS FANTASY
- 06.THE GHOST (80KIDZ Remix)
- 07.Ghost of GLAY 愛のテーマ
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