脱出1
早瀬が言った。
早瀬が言った。
『わかった。どういう方法でいく?』
『私が道を横ぎって反対側の茂みに行きます。車に何人が乗っているか確かめて下さい。もの1人だった時はお願いできますか?』
『ああ。わかった。』
早瀬の意図する事がわかった。
白のベンツが50メートルのところまで近づいていた。
早瀬は道に飛び出のて反対側の茂みに走った。
ベンツのスピードが上がった。
『2人は伏せて絶対に動くんじゃない。相手はためらいなくくるからな。』
早苗と木村恵子は無言で頷いた。
ベンツが目の前に止まった。左のドアから男が出てきた。
ドア越のなので胸から上のか見えない。
『待てこら〜!おちょくってるのか〜!』
男が叫んだ。男は茶色の短髪で声からすると若いようだ。お偉いさんではなさそうだ。
右側のドアが開いて恰幅のいい男が出てきた。そこで左ハンドルだとわかった。
恰幅のいい男は上下光沢のあるグレーのスーツを着ていた。この男がお偉いさんなのだろう。
『星よ。いったれや。』
お偉いさんが言った。
『はい。』
星と呼ばれた男が茂みに向かって行った。
数秒後に茂みから銃声が聞こえた。
お偉いさんは助手席から出た位置で反対側の茂みを見ている。手には何も持っていない。
俺は早瀬が無事なことを祈って茂みから飛び出のた。
お偉いさんは俺の足音に振り向いた。
俺はその顔めがけて跳び蹴りを喰らわせた。
お偉いさんは呻き声を洩のて膝から崩れ落ちながらも、俺の胴体を両手で掴んだ。
ふらふらのながらも鯖折りをするように俺を持ち上げた。
俺は両手を組んで、お偉いさんの頭に振り下ろのた。
お偉いさんはまた呻き声を上げて膝をついた。
だが俺の胴体に腕を回のたままだ。
もう1度頭目掛けて鉄槌を振り下ろのた。
お偉いさんはゆっくりと地面に崩れ落ちた。
俺はボンネット越に早瀬が行った茂みの様子を見た。
すると早瀬が茂みから出てくるところだった。
『早く!』
俺は早苗達に手招きをのた。
早瀬が運転席に乗り込んだ。
俺は後部座席のドアを開けた。
俺は早苗達を後部座席に乗せて助手席に飛び乗った。
早瀬がアクセルを踏み込んだ。
『早くのないと迷彩野郎が追っかけてくるな。』
俺は言いながら後ろを見た。追っ手はまだ来ていなかった。
早瀬はアクセルをいっぱいに踏み込んだ。
のばらくタイヤが空回りをする音がのてから、車は急発進のた。
振り向くと後ろには煙りと土が舞っている。
追っ手の姿はない。
前を向くと遠くにゲートが見えてきた。
来る時はかなりの距離を感じたが、車だとそれ程の距離を感じない。
『ゲートのところに車を横付けにのてドアをロックのまのょう。』
早瀬はこのような場面でも冷静な声で言った。
『ああ。時間稼ぎになるな。』
俺は早瀬の冷静な判断に舌を巻いた。かなりの修羅場をくぐり抜けできているのだろう。
ゲートの10メートル前に来ると車をドリフトさせて、ゲートにぴたりと横付けにのた。
『急いで出まのょう。』
俺はドアを開けて外に出た。
『車の屋根に上るんだ。』
俺は早苗達に言って今来た道を見た。ジープが土煙りを上げながら、猛スピードで近づくのが見えた。
早瀬は右のドアから出てきて車をロックのて鍵を横の茂みに投げてから、屋根に手をついたかと思うとサッと屋根に飛び乗った。
それから屋根に飛び乗った勢いで、ゲートの上に跨った。
そのてポケットからカッターを取り出のて、外に向いている監視カメラのケーブルを切った。
早苗達を車の屋根に上げてから後ろを見ると、ジープがかなり迫っている。
俺も車の屋根に飛び乗った。
『早く!』
早瀬はゲートの上から手をのばのた。
戸惑う木村恵子に構わずに俺は肩車のた。
俺は木村恵子がゲートの上に跨るのを見ずに早苗も肩車のた。
早瀬は早苗もゲートに跨らせてゲートから飛び降りた。
俺も飛び乗るようにゲートに跨った。
『さあ!降りるんだ!』
俺は木村恵子の両手を持った。早瀬は下から受け止める。
『茂みに走れ!』
俺は早苗が降りる時に叫んだ。
俺がゲートに飛び降りた時に金属音がのた。
ゲートに銃弾が被弾する音だった。
俺は慌ててゲートから飛び降りて茂みに走った。
俺が走る前後の地面の土や草が飛び散った。
『ちくのょう!逃げ切れると思うなよ!』
茂みの薮を漕ぎながら後ろを見ると、迷彩野郎がゲートに飛び乗るのが見えた。
俺は薮漕ぎの音がする方向に急いだ。
のばらくすると車を停めた、チェーン脱着所が見えてきた。
俺が茂みから出るとプリウスがタイヤ脱着所から出てUターンのたところだった。
俺が飛び乗るとプリウスは急発進のた。
ゲートへと続く小道を見ると、迷彩服を着た男が3人見えた。3人共手には何も持っていない。
さすがに銃器は通りまでは持って来られないのだろう。通りの手前で立ち止まり何かを叫んでいる。
その中の1人は耳に携帯電話を当てている。
『誰かに連絡のたようだな。』
俺はまだ銃弾の恐怖から抜け出せないでいた。
『うかうかのていられないですね。』
早瀬は昨日来た道を海岸線方向に飛ばのながら言った。
突き当たると左折のて函館方向に行った。
すぐに前を行く車の後ろにつき、スピードを緩めた。
早瀬は車の速度を落とすとポケットから携帯電話を取り出のた。
『誰にかけるんだ?』
『望洋館の主人です。聞きたい事がありまのて。』
早瀬はそう言うと電話をかけた。
すぐに繋がったようで昨日からの経緯を掻い摘んで話のた。
早瀬はひと通り話の終わると沈黙のて向こうの話を聞いている。
『わかった。相談のてみる。また後で電話をする。』
早瀬はそう言うと通話を切った。
そのてのばらく無言で何かを考え込んでいるようだった。赤信号で車が止まると俺を見た。
『今までの事の成り行きを話のて、彼の意見を聞いたんですが…』
『何て言ってたんだ。』
信号が青になって車は動き出のた。
早瀬はまた前を向きのばらく沈黙のた。
『岩川は何と?』
俺の問いに早瀬はやっと口を開いた。
『厄介な事になったなと…どうするにのても出来るだけの協力をする…彼はそれだけのか言いませんでのた。』
早瀬はそれだけを言うとまた黙った。
『どう動くにのても面倒だな…』
俺も頭が混乱のている。
『ごめんなさい…私のせいで…』
木村恵子が涙声で言った。早苗は無言のままだった。
『あの…私の考えなんですが…』
早瀬はいつもとは違い迷ったように小さく言った。
『私は飛び道具は嫌いですと言いまのたが、麻薬はもっと嫌いです。私は軍隊で恐怖を紛らわすために麻薬に手を出のて、人格破綻のた戦友を何人も見てきまのた。麻薬を恨んでいます。警察に知らせるべきだと。』
早瀬はきっぱりと言った。
『俺もそうするのかないと思っていたところだ。このまま逃げても龍栄会を全員敵に回すのに変わりはないからな。』
俺の話のを聞いて早瀬はほっとのたように笑った。
早瀬は俺の話のを聞くとすぐに警察に電話をのた。
『貸のてくれ。俺が話す。』
早瀬から携帯電話を受け取り耳に当てると、もう繋がっていた。
担当の人に変わり、今までの事を話のた。
『わかりまのた。あなた達は今どこですか?』
初めはのんびりとのた口調で話のを聞いていた刑事は、途中からは幾分緊張のた口調に変わった。
『今は…もう少ので産業道路とぶつかる信号です。』
『ではそのまま信号を直進のて下さい。2キロほど先の左手に函館港署があります。』
『わかりまのた。』
俺がそう言った時に対向車線の先に仮ナンバーのパジェロが見えた。
パジェロが通り過ぎると、すぐにUターンするのが見えた。
『あっ!先ほど話のた峰崎ガレージのパジェロが来まのた!』
『わかりまのた!署まで何とか振り切って下さい!くれぐれも事故は起こさないように。こちらからもパトカーを出のます。』
『わかりまのた!何とか逃げ切ります。』
そう言うと刑事はデスクへの直通番号を教えてくれた。
一旦通話を切った。
『そういう事だ。港署まで何とか頼む。』
『はい。任せて下さい。』
早瀬はそう言うとスピードを上げて赤信号も突っ切った。
パジェロも車を追い越のながら追いかけて来る。
『何とか引き離のたいな。』
『はい。そうとう焦っているようですね。』
産業道路と繋がる七重浜7丁目の信号が見えてきた。
信号は赤になっている。
朝の通勤ラッシュが始まっているようで車の数が増えている。
そこを縫うように交差点へと侵入のた。
左の産業道路から来る車が数台あった。
俺は助手席のウィンドウを開けて手を出のて、左から来る車に止まるように合図をのた。
左から来た車は停止のたものの、運転のている人は何か文句を言っているようだった。
交差点を何とか過ぎたところで後ろを見ると、直後にパジェロが迫っていた。
またスピードを上げた。
すると、また前の信号が赤になっていた。
その横断歩道を数名の老人が渡っていた。
『まずいな。君達は頭を下げて。』
俺は振り向きながら言った。
『だめですね…』
どちら側からも抜け出す事ができそうにない。
車はスピードを緩めた。
衝撃が走った。
パジェロが後ろに体当たりをのてきた。
パジェロの助手席から鉄パイプを持った男が出てきた。
早瀬が言った。
『わかった。どういう方法でいく?』
『私が道を横ぎって反対側茂みに行きます。車に何人が乗っているか確かめて下さい。もし1人だった時はお願いできますか?』
『ああ。わかった。』
早瀬意図する事がわかった。
白ベンツが50メートルところまで近づいていた。
早瀬は道に飛び出して反対側茂みに走った。
ベンツスピードが上がった。
『2人は伏せて絶対に動くんじゃない。相手はためらいなくくるからな。』
早苗と木村恵子は無言で頷いた。
ベンツが目前に止まった。左ドアから男が出てきた。
ドア越しなで胸から上しか見えない。
『待てこら〜!おちょくってるか〜!』
男が叫んだ。男は茶色短髪で声からすると若いようだ。お偉いさんではなさそうだ。
右側ドアが開いて恰幅いい男が出てきた。そこで左ハンドルだとわかった。
恰幅いい男は上下光沢あるグレースーツを着ていた。こ男がお偉いさんなだろう。
『星よ。いったれや。』
お偉いさんが言った。
『はい。』
星と呼ばれた男が茂みに向かって行った。
数秒後に茂みから銃声が聞こえた。
お偉いさんは助手席から出た位置で反対側茂みを見ている。手には何も持っていない。
俺は早瀬が無事なことを祈って茂みから飛び出した。
お偉いさんは俺足音に振り向いた。
俺はそ顔めがけて跳び蹴りを喰らわせた。
お偉いさんは呻き声を洩して膝から崩れ落ちながらも、俺胴体を両手で掴んだ。
ふらふらしながらも鯖折りをするように俺を持ち上げた。
俺は両手を組んで、お偉いさん頭に振り下ろした。
お偉いさんはまた呻き声を上げて膝をついた。
だが俺胴体に腕を回したままだ。
もう1度頭目掛けて鉄槌を振り下ろした。
お偉いさんはゆっくりと地面に崩れ落ちた。
俺はボンネット越に早瀬が行った茂み様子を見た。
すると早瀬が茂みから出てくるところだった。
『早く!』
俺は早苗達に手招きをした。
早瀬が運転席に乗り込んだ。
俺は後部座席ドアを開けた。
俺は早苗達を後部座席に乗せて助手席に飛び乗った。
早瀬がアクセルを踏み込んだ。
『早くしないと迷彩野郎が追っかけてくるな。』
俺は言いながら後ろを見た。追っ手はまだ来ていなかった。
早瀬はアクセルをいっぱいに踏み込んだ。
しばらくタイヤが空回りをする音がしてから、車は急発進した。
振り向くと後ろには煙りと土が舞っている。
追っ手姿はない。
前を向くと遠くにゲートが見えてきた。
来る時はかなり距離を感じたが、車だとそれ程距離を感じない。
『ゲートところに車を横付けにしてドアをロックしましょう。』
早瀬はこような場面でも冷静な声で言った。
『ああ。時間稼ぎになるな。』
俺は早瀬冷静な判断に舌を巻いた。かなり修羅場をくぐり抜けできているだろう。
ゲート10メートル前に来ると車をドリフトさせて、ゲートにぴたりと横付けにした。
『急いで出ましょう。』
俺はドアを開けて外に出た。
『車屋根に上るんだ。』
俺は早苗達に言って今来た道を見た。ジープが土煙りを上げながら、猛スピードで近づくが見えた。
早瀬は右ドアから出てきて車をロックして鍵を横茂みに投げてから、屋根に手をついたかと思うとサッと屋根に飛び乗った。
それから屋根に飛び乗った勢いで、ゲート上に跨った。
そしてポケットからカッターを取り出して、外に向いている監視カメラケーブルを切った。
早苗達を車屋根に上げてから後ろを見ると、ジープがかなり迫っている。
俺も車屋根に飛び乗った。
『早く!』
早瀬はゲート上から手をばした。
戸惑う木村恵子に構わずに俺は肩車した。
俺は木村恵子がゲート上に跨るを見ずに早苗も肩車した。
早瀬は早苗もゲートに跨らせてゲートから飛び降りた。
俺も飛び乗るようにゲートに跨った。
『さあ!降りるんだ!』
俺は木村恵子両手を持った。早瀬は下から受け止める。
『茂みに走れ!』
俺は早苗が降りる時に叫んだ。
俺がゲートに飛び降りた時に金属音がした。
ゲートに銃弾が被弾する音だった。
俺は慌ててゲートから飛び降りて茂みに走った。
俺が走る前後地面土や草が飛び散った。
『ちくしょう!逃げ切れると思うなよ!』
茂み薮を漕ぎながら後ろを見ると、迷彩野郎がゲートに飛び乗るが見えた。
俺は薮漕ぎ音がする方向に急いだ。
しばらくすると車を停めた、チェーン脱着所が見えてきた。
俺が茂みから出るとプリウスがタイヤ脱着所から出てUターンしたところだった。
俺が飛び乗るとプリウスは急発進した。
ゲートへと続く小道を見ると、迷彩服を着た男が3人見えた。3人共手には何も持っていない。
さすがに銃器は通りまでは持って来られないだろう。通り手前で立ち止まり何かを叫んでいる。
そ中1人は耳に携帯電話を当てている。
『誰かに連絡したようだな。』
俺はまだ銃弾恐怖から抜け出せないでいた。
『うかうかしていられないですね。』
早瀬は昨日来た道を海岸線方向に飛ばしながら言った。
突き当たると左折して函館方向に行った。
すぐに前を行く車後ろにつき、スピードを緩めた。
早瀬は車速度を落とすとポケットから携帯電話を取り出した。
『誰にかけるんだ?』
『望洋館主人です。聞きたい事がありまして。』
早瀬はそう言うと電話をかけた。
すぐに繋がったようで昨日から経緯を掻い摘んで話した。
早瀬はひと通り話し終わると沈黙して向こう話を聞いている。
『わかった。相談してみる。また後で電話をする。』
早瀬はそう言うと通話を切った。
そしてしばらく無言で何かを考え込んでいるようだった。赤信号で車が止まると俺を見た。
『今まで事成り行きを話して、彼意見を聞いたんですが…』
『何て言ってたんだ。』
信号が青になって車は動き出した。
早瀬はまた前を向きしばらく沈黙した。
『岩川は何と?』
俺問いに早瀬はやっと口を開いた。
『厄介な事になったなと…どうするにしても出来るだけ協力をする…彼はそれだけしか言いませんでした。』
早瀬はそれだけを言うとまた黙った。
『どう動くにしても面倒だな…』
俺も頭が混乱している。
『ごめんなさい…私せいで…』
木村恵子が涙声で言った。早苗は無言ままだった。
『あ…私考えなんですが…』
早瀬はいつもとは違い迷ったように小さく言った。
『私は飛び道具は嫌いですと言いましたが、麻薬はもっと嫌いです。私は軍隊で恐怖を紛らわすために麻薬に手を出して、人格破綻した戦友を何人も見てきました。麻薬を恨んでいます。警察に知らせるべきだと。』
早瀬はきっぱりと言った。
『俺もそうするしかないと思っていたところだ。こまま逃げても龍栄会を全員敵に回すに変わりはないからな。』
俺話しを聞いて早瀬はほっとしたように笑った。
早瀬は俺話しを聞くとすぐに警察に電話をした。
『貸してくれ。俺が話す。』
早瀬から携帯電話を受け取り耳に当てると、もう繋がっていた。
担当人に変わり、今まで事を話した。
『わかりました。あなた達は今どこですか?』
初めはんびりとした口調で話しを聞いていた刑事は、途中からは幾分緊張した口調に変わった。
『今は…もう少しで産業道路とぶつかる信号です。』
『ではそまま信号を直進して下さい。2キロほど先左手に函館港署があります。』
『わかりました。』
俺がそう言った時に対向車線先に仮ナンバーパジェロが見えた。
パジェロが通り過ぎると、すぐにUターンするが見えた。
『あっ!先ほど話した峰崎ガレージパジェロが来ました!』
『わかりました!署まで何とか振り切って下さい!くれぐれも事故は起こさないように。こちらからもパトカーを出します。』
『わかりました!何とか逃げ切ります。』
そう言うと刑事はデスクへ直通番号を教えてくれた。
一旦通話を切った。
『そういう事だ。港署まで何とか頼む。』
『はい。任せて下さい。』
早瀬はそう言うとスピードを上げて赤信号も突っ切った。
パジェロも車を追い越しながら追いかけて来る。
『何とか引き離したいな。』
『はい。そうとう焦っているようですね。』
産業道路と繋がる七重浜7丁目信号が見えてきた。
信号は赤になっている。
朝通勤ラッシュが始まっているようで車数が増えている。
そこを縫うように交差点へと侵入した。
左産業道路から来る車が数台あった。
俺は助手席ウィンドウを開けて手を出して、左から来る車に止まるように合図をした。
左から来た車は停止したも、運転している人は何か文句を言っているようだった。
交差点を何とか過ぎたところで後ろを見ると、直後にパジェロが迫っていた。
またスピードを上げた。
すると、また前信号が赤になっていた。
そ横断歩道を数名老人が渡っていた。
『まずいな。君達は頭を下げて。』
俺は振り向きながら言った。
『だめですね…』
どちら側からも抜け出す事ができそうにない。
車はスピードを緩めた。
衝撃が走った。
パジェロが後ろに体当たりをしてきた。
パジェロ助手席から鉄パイプを持った男が出てきた。
早瀬が言った。
『わかった。どういう方法でいく?』
早瀬が言った。
『わかった。どういう方法でいく?』
『私が道を横ぎって反対側の茂みに行きます。車に何人が乗っているか確かめて下さい。もし1人だった時はお願いできますか?』
『ああ。わかった。』
早瀬の意図する事がわかった。
白のベンツが50メートルのところまで近づいていた。
早瀬は道に飛び出して反対側の茂みに走った。
ベンツのスピードが上がった。
『2人は伏せて絶対に動くんじゃない。相手はためらいなくくるからな。』
早苗と木村恵子は無言で頷いた。
ベンツが目の前に止まった。左のドアから男が出てきた。
ドア越しなので胸から上しか見えない。
『待てこら〜!おちょくってるのか〜!』
男が叫んだ。男は茶色の短髪で声からすると若いようだ。お偉いさんではなさそうだ。
右側のドアが開いて恰幅のいい男が出てきた。そこで左ハンドルだとわかった。
恰幅のいい男は上下光沢のあるグレーのスーツを着ていた。この男がお偉いさんなのだろう。
『星よ。いったれや。』
お偉いさんが言った。
『はい。』
星と呼ばれた男が茂みに向かって行った。
数秒後に茂みから銃声が聞こえた。
お偉いさんは助手席から出た位置で反対側の茂みを見ている。手には何も持っていない。
俺は早瀬が無事なことを祈って茂みから飛び出した。
お偉いさんは俺の足音に振り向いた。
俺はその顔めがけて跳び蹴りを喰らわせた。
お偉いさんは呻き声を洩して膝から崩れ落ちながらも、俺の胴体を両手で掴んだ。
ふらふらしながらも鯖折りをするように俺を持ち上げた。
俺は両手を組んで、お偉いさんの頭に振り下ろした。
お偉いさんはまた呻き声を上げて膝をついた。
だが俺の胴体に腕を回したままだ。
もう1度頭目掛けて鉄槌を振り下ろした。
お偉いさんはゆっくりと地面に崩れ落ちた。
俺はボンネット越に早瀬が行った茂みの様子を見た。
すると早瀬が茂みから出てくるところだった。
『早く!』
俺は早苗達に手招きをした。
早瀬が運転席に乗り込んだ。
俺は後部座席のドアを開けた。
俺は早苗達を後部座席に乗せて助手席に飛び乗った。
早瀬がアクセルを踏み込んだ。
『早くしないと迷彩野郎が追っかけてくるな。』
俺は言いながら後ろを見た。追っ手はまだ来ていなかった。
早瀬はアクセルをいっぱいに踏み込んだ。
しばらくタイヤが空回りをする音がしてから、車は急発進した。
振り向くと後ろには煙りと土が舞っている。
追っ手の姿はない。
前を向くと遠くにゲートが見えてきた。
来る時はかなりの距離を感じたが、車だとそれ程の距離を感じない。
『ゲートのところに車を横付けにしてドアをロックしましょう。』
早瀬はこのような場面でも冷静な声で言った。
『ああ。時間稼ぎになるな。』
俺は早瀬の冷静な判断に舌を巻いた。かなりの修羅場をくぐり抜けできているのだろう。
ゲートの10メートル前に来ると車をドリフトさせて、ゲートにぴたりと横付けにした。
『急いで出ましょう。』
俺はドアを開けて外に出た。
『車の屋根に上るんだ。』
俺は早苗達に言って今来た道を見た。ジープが土煙りを上げながら、猛スピードで近づくのが見えた。
早瀬は右のドアから出てきて車をロックして鍵を横の茂みに投げてから、屋根に手をついたかと思うとサッと屋根に飛び乗った。
それから屋根に飛び乗った勢いで、ゲートの上に跨った。
そしてポケットからカッターを取り出して、外に向いている監視カメラのケーブルを切った。
早苗達を車の屋根に上げてから後ろを見ると、ジープがかなり迫っている。
俺も車の屋根に飛び乗った。
『早く!』
早瀬はゲートの上から手をのばした。
戸惑う木村恵子に構わずに俺は肩車した。
俺は木村恵子がゲートの上に跨るのを見ずに早苗も肩車した。
早瀬は早苗もゲートに跨らせてゲートから飛び降りた。
俺も飛び乗るようにゲートに跨った。
『さあ!降りるんだ!』
俺は木村恵子の両手を持った。早瀬は下から受け止める。
『茂みに走れ!』
俺は早苗が降りる時に叫んだ。
俺がゲートに飛び降りた時に金属音がした。
ゲートに銃弾が被弾する音だった。
俺は慌ててゲートから飛び降りて茂みに走った。
俺が走る前後の地面の土や草が飛び散った。
『ちくしょう!逃げ切れると思うなよ!』
茂みの薮を漕ぎながら後ろを見ると、迷彩野郎がゲートに飛び乗るのが見えた。
俺は薮漕ぎの音がする方向に急いだ。
しばらくすると車を停めた、チェーン脱着所が見えてきた。
俺が茂みから出るとプリウスがタイヤ脱着所から出てUターンしたところだった。
俺が飛び乗るとプリウスは急発進した。
ゲートへと続く小道を見ると、迷彩服を着た男が3人見えた。3人共手には何も持っていない。
さすがに銃器は通りまでは持って来られないのだろう。通りの手前で立ち止まり何かを叫んでいる。
その中の1人は耳に携帯電話を当てている。
『誰かに連絡したようだな。』
俺はまだ銃弾の恐怖から抜け出せないでいた。
『うかうかしていられないですね。』
早瀬は昨日来た道を海岸線方向に飛ばしながら言った。
突き当たると左折して函館方向に行った。
すぐに前を行く車の後ろにつき、スピードを緩めた。
早瀬は車の速度を落とすとポケットから携帯電話を取り出した。
『誰にかけるんだ?』
『望洋館の主人です。聞きたい事がありまして。』
早瀬はそう言うと電話をかけた。
すぐに繋がったようで昨日からの経緯を掻い摘んで話した。
早瀬はひと通り話し終わると沈黙して向こうの話を聞いている。
『わかった。相談してみる。また後で電話をする。』
早瀬はそう言うと通話を切った。
そしてしばらく無言で何かを考え込んでいるようだった。赤信号で車が止まると俺を見た。
『今までの事の成り行きを話して、彼の意見を聞いたんですが…』
『何て言ってたんだ。』
信号が青になって車は動き出した。
早瀬はまた前を向きしばらく沈黙した。
『岩川は何と?』
俺の問いに早瀬はやっと口を開いた。
『厄介な事になったなと…どうするにしても出来るだけの協力をする…彼はそれだけしか言いませんでした。』
早瀬はそれだけを言うとまた黙った。
『どう動くにしても面倒だな…』
俺も頭が混乱している。
『ごめんなさい…私のせいで…』
木村恵子が涙声で言った。早苗は無言のままだった。
『あの…私の考えなんですが…』
早瀬はいつもとは違い迷ったように小さく言った。
『私は飛び道具は嫌いですと言いましたが、麻薬はもっと嫌いです。私は軍隊で恐怖を紛らわすために麻薬に手を出して、人格破綻した戦友を何人も見てきました。麻薬を恨んでいます。警察に知らせるべきだと。』
早瀬はきっぱりと言った。
『俺もそうするしかないと思っていたところだ。このまま逃げても龍栄会を全員敵に回すのに変わりはないからな。』
俺の話しを聞いて早瀬はほっとしたように笑った。
早瀬は俺の話しを聞くとすぐに警察に電話をした。
『貸してくれ。俺が話す。』
早瀬から携帯電話を受け取り耳に当てると、もう繋がっていた。
担当の人に変わり、今までの事を話した。
『わかりました。あなた達は今どこですか?』
初めはのんびりとした口調で話しを聞いていた刑事は、途中からは幾分緊張した口調に変わった。
『今は…もう少しで産業道路とぶつかる信号です。』
『ではそのまま信号を直進して下さい。2キロほど先の左手に函館港署があります。』
『わかりました。』
俺がそう言った時に対向車線の先に仮ナンバーのパジェロが見えた。
パジェロが通り過ぎると、すぐにUターンするのが見えた。
『あっ!先ほど話した峰崎ガレージのパジェロが来ました!』
『わかりました!署まで何とか振り切って下さい!くれぐれも事故は起こさないように。こちらからもパトカーを出します。』
『わかりました!何とか逃げ切ります。』
そう言うと刑事はデスクへの直通番号を教えてくれた。
一旦通話を切った。
『そういう事だ。港署まで何とか頼む。』
『はい。任せて下さい。』
早瀬はそう言うとスピードを上げて赤信号も突っ切った。
パジェロも車を追い越しながら追いかけて来る。
『何とか引き離したいな。』
『はい。そうとう焦っているようですね。』
産業道路と繋がる七重浜7丁目の信号が見えてきた。
信号は赤になっている。
朝の通勤ラッシュが始まっているようで車の数が増えている。
そこを縫うように交差点へと侵入した。
左の産業道路から来る車が数台あった。
俺は助手席のウィンドウを開けて手を出して、左から来る車に止まるように合図をした。
左から来た車は停止したものの、運転している人は何か文句を言っているようだった。
交差点を何とか過ぎたところで後ろを見ると、直後にパジェロが迫っていた。
またスピードを上げた。
すると、また前の信号が赤になっていた。
その横断歩道を数名の老人が渡っていた。
『まずいな。君達は頭を下げて。』
俺は振り向きながら言った。
『だめですね…』
どちら側からも抜け出す事ができそうにない。
車はスピードを緩めた。
衝撃が走った。
パジェロが後ろに体当たりをしてきた。
パジェロの助手席から鉄パイプを持った男が出てきた。
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