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2023.09.27

創業2年で10億売却。Z世代人気No.1アプリ開発者の裏側に迫る

Z世代人気No.1位置情報共有アプリ「Naunau」の開発者、片岡夏輝氏。その開発期間はわずか2週間。2022年10月に同サービスをリリース後、2023年5月にモバイルファクトリー社と株式譲渡契約および株式交換契約を10億で締結した。現在アプリは国内外450万DLを突破し、Naunauの成長はとどまる所を知らない。圧倒的な成果を出し続ける日本版のイーロンマスク、片岡氏の全貌に迫る。

インドの凄まじい経済発展に触れた幼少期

片岡氏はインドのニューデリー出身という異色の経歴を持つ。インドへ移り住んだのは同氏が小学生の時。それから8年間をニューデリーで過ごした。当時は2000年代初期。道路には馬車やゾウ、ラクダが通り、街のエレベーターでさえも物珍しさに人だかりが出来るほどであった。

そこから経済体制の改革とともにインドは急成長を遂げた。今や世界のGDPランキングでは2050年に世界で第2位の経済大国になると予想されている。大きな変貌を遂げ、IT大国として今後も潜在力を秘めたインド。こうして圧倒的なスピード感を目の当たりにして育った片岡氏には、野心が芽生え始める。

NauNau誕生の原点

日本に帰国後、早稲田大学に進学した片岡氏は大学一年次にプログラミングと出会った。そのきっかけはSNSアプリだ。「インスタグラムの中でフォロワーとよりコミュニケーションが出来るサービスを作りたい」そんな思いを胸にプログラミングを始めた。元々、プログラミングは未経験。当初は数々の苦労があったという。

最初はSNSアプリの開発に取りかかったが、同氏は当時プログラミングができなかった。そこで高校時代の友人に頼み込み、アプリ開発を始めた。アプリに対するこだわりは細部に及び、ピクセル単位の修正や色の微調整が続いた。当然細かな調整を逐一求められるエンジニアの友人とも関係はギクシャクしていく。当時の状況を同氏はこのように語る。「自分で開発した方が早いし、自分でないと無理だ。やはりゼロからリリースまで全部一人で出来るようにならなくては」そんな思いがSNSアプリの開発へと結びついていく。

片岡氏は大学二年次にFlutterというiOSアプリとAndroidアプリを同時に開発できるクロスプラットフォームを勉強し始めた。勉強時間は1日10時間以上。プログラミングを始めてからこれまでに同氏が開発してきたアプリは30個、累計ダウンロード数は17万にまで上る。こうして片岡氏はアプリ開発者、そしてアプリ運営者として優れた経営手腕を発揮していった。

プロダクト無しで3500万調達。Naunauの開発秘話

片岡氏は大学三年次にSuishowを創業した。事業領域はNFTやメタバース。当時日本で起業ブームが高まっていたことも相まり、プロダクト無しで3500万円の資金調達を達成した。そんな中、NauNau誕生の鍵となったのは、2023年2月、10代を中心に絶大な人気を誇っていた位置情報共有アプリ「Zenly」がサービス提供を終了したことだ。元々片岡氏はSNSの延長線として位置情報共有アプリを考えていた。

また、当時は「会社の仕事を夜の22時までしか行わない」ことをマイルールとして設けていたため、それ以降は自身の自由時間としてアプリ開発に時間を費やしていたという。そんな中Zenlyのサービス提供終了を機に、片岡氏は類似アプリの開発をスタート。2週間でNauNauを開発しリリースした。
次ページ > キャッシュアウト寸前で孤軍奮闘し、450万DLを達成。

取材=戸村光 文章=金二美香

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2023.09.02

「ビル・ゲイツもシリア難民も使う」語学アプリDuolingo、CEOが語る誕生秘話

Duolingo創業者兼CEO、ルイス・フォン・アーン氏

世界でもっともダウンロードされている無料語学学習アプリがある。「Duolingo(https://ja.duolingo.com)」だ。「世界最高の教育を目指す」という本アプリの全世界の月間アクティブユーザー数は実に7400万人以上。日本には2020年11月に本格参入し、順調に利用者数を拡大中だ。2022年通期では、日本国内における教育アプリのダウンロード数、および収益ともにカテゴリートップとなった。

そのDuolingo創業者兼CEO、ルイス・フォン・アーン氏による講演会が8月28日、都内、東京大学情報学環・福武ホールで行われた。

アーン氏は元カーネギーメロン大学計算機科学部所属 准教授であり、コンピューター上の操作が人の手によるものであることを認証(「信号機をすべて選べ」「変形された文字を読め」など)するシステム「CAPTCHA 」「reCAPTCHA」の開発者でもある。また、マッカーサー・フェローシップ(別名「天才賞」)など多くの賞を受賞、出身地グアテマラのための非営利団体「ルイス・フォン・アン財団」も持つ人物である。

以下、氏の講演の内容の一部を紹介する(講義の後半はQ&A形式で行われたが、ここでは質問は省略し、氏の回答を中心に構成する)。


「もっとも貧しい」人と「もっとも富める」人が使うアプリ

「教育は平等を生む」という楽観主義者もいますが、私が生まれた非常に貧しい国、グアテマラのような環境では、貧しい人は決していい教育を受けられないので、貧しいままです。

そこで私は、平等な教育へのアクセス手段としては、「無料の教育」を提供する方法をローンチすることが一番と考え、Duolingoを創業しました。

たとえばですが、同じ「ウエイター」という職業でも、英語を学べばホテルでの仕事を得られ、より高い給料がもらえます。お金を得るためにはまず、英語が重要だと考えたのです。

私の母国語はスペイン語、Duolingoの共同創業者の母国語はドイツ語です。なので、Duolingoではまずスペイン語とドイツ語のコースを作ることになりましたが、語学学習はとにかく「退屈」です。それだけに、外国語を学ぶ上ではモチベーションの維持が一番だと知っていました。だからこそ、Dulolingoはゲームのように楽しめるように設計したのです。

そしてそれが、Duolingoが教育カテゴリーで世界でもっともダウンロードされている理由と思います。

ある時、シリア難民が、移住先の国の言語を習得するためにDuolingoを使っていることを知りました。ついではビル・ゲイツがフランス語の勉強に使っていることも知ったのです。なんとDuolingoは世界でももっとも貧しい人と、もっとも富める人が使うアプリなのです。このことを本当に誇りに思いました。


都内、東京大学情報学環・福武ホールで
次ページ > 2009年にグーグルに売却した「reCAPTCHA」とは

訳・文=石井節子

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