名護市辺野古の新基地建設は、大きな局面を迎える。
斉藤鉄夫国土交通相が、埋め立て設計の変更申請を承認するよう、玉城デニー知事に迫った勧告の回答期限がきょう27日で、知事は何らかの態度を表明するとみられる。
地方自治法245条の8で定めた「代執行」の手続きで、知事が従わなければ、コマが前に進むことになる。
本来なら他の方法で是正することが困難で、さらに放置すれば著しく公益を害することが明らかな場合に認められる。限定的であり、抑制的でなければならない手段だ。
国が地方自治体の長の判断を否定する極めて異例の事態で、国と地方の関係に禍根を残しかねない。
今回の勧告には二つの疑問がある。一つは「他に方法はないのか」、もう一つは「『公益を害する』とは誰にとっての公益か」という点だ。
公有水面埋立法に基づき承認するかどうかの判断は、地元の事情に詳しい知事に割り振られた法定受託事務である。国と地方の対等関係を前提としている。
玉城知事は埋め立て海域の軟弱地盤の調査が不十分であること、膨大な数のくいを海中に打ち込む工事がジュゴンに与える影響を適切に予測していないことなど具体的な理由を示し、不承認とした。
沖縄防衛局は自分たちで集めた専門家の意見を根拠に県の主張は間違いと反論し、法的な対抗措置を重ねてきた。
国が地方の判断に異を唱え、覆す「裁定的関与」は、全国知事会でも「自分事」の問題と捉え始めている。
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この間、決定的に抜け落ちているのは国と県の対話だ。
国は県の主張に耳を傾け、擦り合わせたり、いったん取り下げ、再申請したりすることもできたのではないか。
県が設計変更の不承認を伝えたのは2021年11月である。岸田文雄首相は22年、23年の沖縄全戦没者追悼式、22年の復帰50周年記念式典で沖縄を訪れている。知事が上京した際を含め、膝を突き合わせる機会はあったはずだ。
代執行以外の「他の方法」の例に対話を加えたケースがある。最終的に和解した翁長雄志前知事による埋め立て承認取り消しに関する代執行訴訟で、国は県との計5回の集中協議でも「県の姿勢に変更がみられなかった」と訴訟に至った理由を説明した。
今回の変更承認申請では協議した形跡がみられない。岸田首相は代執行ではなく、玉城知事との話し合いの席に着く必要がある。
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国は辺野古新基地建設を進める「公益」として、普天間飛行場の危険性除去と、米国との約束を守ることによる国際社会の信頼を挙げる。
県は沖縄への米軍基地の集中による航空機騒音などの負担、事件事故などの被害が「公益を害している」と考える。だからこそ、辺野古移設に反対しているのだ。
その上、知事の権限を取り上げる代執行そのものが、地方自治に対する重大な侵害行為である。
国の「公益」を守るために、地方の「公益」を害する大義名分は見当たらない。