宅建業法の保証金制度とは?営業保証金や弁済業務保証金について詳しく解説
宅建試験の対策で、宅建業法の保証金制度である「営業保証金」と「弁済業務保証金」の違いを覚えるのに苦労する方は少なくありません。
宅建業法の保証金制度は、宅建試験で毎年のように出題される項目で、押さえておきたいポイントのひとつです。
この記事では、宅建業法の保証金制度である「営業保証金」と「弁済業務保証金」について分かりやすく解説しています。
宅建試験の合格を目指す方は、保証金制度についてしっかりと理解を深めていきましょう。
目次
宅建業法の保証金制度とは?
そもそも宅建業法の保証金制度とは、売主(顧客)が買主(宅建業者)に不動産を売却した後に、宅建業者が経営の悪化などで代金が支払えなくなる事態に備えた保証制度です。
宅建業を開業して営業をはじめる際、この保証金を供託所へ預ける義務があります。
万が一宅建業者が経営の悪化で倒産した場合、保証金からお金を受け取れるので、顧客は損失を免れることができるのです。
特に知識や経験が少ない顧客と取引する場合、宅建業者と対等に取引することは難しく、顧客を守るための保証金制度が必要となります。
この宅建業法の保証金制度には、「営業保証金」と「弁済業務保証金」の2種類が存在します。
金額や納付先が異なるのでそれぞれの違いを見極めながら、宅建試験に向けて対策をしていきましょう。
営業保証金とは?
まずは営業保証金とはどういった内容なのか、以下の4点から解説します。
- 営業保証金の金額
- 営業保証金の供託手続きについて
- 営業保証金の保管替えとは?
- 営業保証金の取り戻しとは?
営業保証金の要点を押さえて、理解を深めていきましょう。
営業保証金の金額
営業保証金を国の機関へ直接提出し、管理を委ねる金額は以下の通り「本店」と「支店」で異なります。
- 本店(主たる事務所)の場合:1,000万円
- 支店(その他の事務所)の場合:事務所ごとに500万円
複数の支店を有する場合、その本店・支店の数だけ保証金額分の金銭や有価証券を国の機関への提出が義務づけられていて、多くの資金が必要といえます。
また、新しく支店を増やす場合、その都度500万円を預けなければ営業ができません。
営業保証金の供託手続きについて
営業保証金を国の機関へ提出し管理を委ねる「供託」の手続きは、主たる事務所(本店)の最寄りの供託所(法務局)での申請が必要です。
都道府県から「宅建免許通知」の案内が届いたら営業保証金の納付・供託書の写しの提出が必要で、通知の日から3か月以内に手続きを完了させなければなりません。
営業保証金の保管替えとは?
営業保証金の保管替えとは、本店の異動による供託所の変更を指します。
供託所は主たる事務所(本店)の最寄りの法務局になり、そこで営業保証金を管理するとお伝えしてきましたが、もし本店が移転した場合、移転先の最寄りの法務局に保管替えを行う必要があります。
ただし、有価証券で供託している場合は保管替えはできず、新しい事務所の最寄りの供託所で新規手続きを行い、移転前の供託所にて営業保証金を取り戻す手続きが必要となります。
営業保証金の取り戻しとは?
営業保証金の取戻しとは、営業保証金の全部または一部を供託所から返還してもらうことを指し、宅建業者が免許の失効・取消・廃業などをする場合に取り戻しが行われます。
万が一宅建業者の免許が無効になった場合や、事務所の廃止により保証金が法定額を上回った場合でも、取り戻しは可能です。
弁済業務保証金とは?
弁済業務保証金とは、宅建業者が保証協会に加入して納付する保証金のことです。
ここでは弁済業務保証金の詳しい内容について、以下の4点から解説します。
- 弁済業務保証金の金額
- 弁済業務保証金の不足分の供託について
- 弁済業務保証金の還付について
- 弁済業務保証金の取り戻しとは?
宅建試験の出題ポイントを確認して、理解を深めていきましょう。
弁済業務保証金の金額
弁済業務保証金の金額は、本店・支店の数によって異なります。
- 本店(主たる事務所)の場合:60万円
- 支店(その他の事務所)の場合:事務所ごとに30万円
弁済業務保証金の納付先は保証協会で、納付は金銭のみで有価証券は受け付けていないのが特徴です。
弁済業務保証金の不足分の供託について
弁済業務保証金の不足分は、以下の流れで供託します。
- 保証協会に弁済業務保証金の不足が通知される
- 保証協会が通知を受けた2週間以内に不足分の弁済業務保証金を供託し、社員の免許権者に供託した旨を届ける
- 保証協会は社員に不足が生じた旨を通知
- 社員は通知を受けてから2週間以内に不足額を保証協会に納付
万が一社員が2週間以内に不足額を納付しなかった場合、社員の地位を失います。
弁済業務保証金の還付について
弁済業務保証金の還付の流れは、以下の通りです。
- 顧客が保証協会に認証の申出をする
- 保証協会から申出の承認通知を受け取る
- 顧客が供託所に還付を請求する
- 供託所から還付を受ける
弁済業務保証金の還付を受ける場合、保証協会への手続きが完了した後に顧客が供託所に直接請求する必要があります。
弁済業務保証金の取り戻しとは?
弁済業務保証金が不要になった場合、保証協会から保証金を返還してもらえる場合が2パターンあります。
ひとつ目は社員の地位を失ったケースで、6か月以上の期間を定めて官報へ公告し、その期間終了後に分担金と同額を受け取ることが可能です。
そして2つ目の事務所の一部を廃止したケースでは官報への公告は不要で、宅建業者が納付した分担金が法定額を超えるので、超過額に相当する額を取り戻せます。
営業保証金と弁済業務保証金の違い
ここまで見てきた営業保証金と弁済業務保証金の違いを、表で比較していきましょう。
営業保証金 | 弁済業務保証金 | |
供託所 | 主たる事務所(本店)の最寄りの供託所(法務局) | 法務大臣およおび国土交通大臣の定める供託所 |
供託する金額 | 本店:1,000万円支店:500万円 | 本店:60万円支店:30万円 |
供託する手段 | 金銭または有価証券 | 金銭 |
事務所の新設と供託の手順 | 供託した後に営業開始 | 事務所の営業開始から2週間以内に分担金を納付 |
場所や供託する金額などがそれぞれ異なるので、しっかりと押さえておきましょう。
まとめ
営業保証金は宅建業者が直接法務局に保証金を支払い、弁済業務保証金は保証協会を通して保証金を支払います。
保証協会の有無によって供託する金額は大きく異なることや、手段・手順などに細かな違いがあることに注目しながら学習を進めることが大切です。
宅建業法の保証金制度は宅建試験で頻出される項目なので、インプット学習や過去問を繰り返し宅建試験合格を目指しましょう。