2015年~2017年バックナンバー
男性弁護士の局部を切断した元ボクサーの公判
起訴状によりますと、小番被告は、平成27年8月13日午前7時40分ごろ、東京都港区虎ノ門の弁護士事務所で男性弁護士(42)の顔を素手で数回殴ったうえ、持参した枝切りばさみで下腹部を切断したとなっていて、罪名は、傷害と銃刀法違反です。
平成27年11月26日、東京地方裁判所で、第2回公判が開かれました。
第1回公判では、弁護側が「詳しすぎる」として中止となった検察側の冒頭陳述が述べられました。
なお、ニュースで、司会者やアナウンサーが「冒頭陳述」というとき、少しためらったような言い方をして、「冒頭陳述」は法律用語ですからねと補足するのがユーモラスでした。
法律家は、何でも省略するのが好きなので、「冒頭陳述」は、ふつう「冒陳」となります。一般事件なら何の問題もなく、男性・女性いずれの法律家でも平気「冒陳」といいます。
少し脱線しますが、民事事件で「自己に不利益な陳述」のことを「不利陳」という人もいます。
私が昭和55年に司法研修の最後の修習をしていたとき、当時の民事裁判の教官が、うれしそうに話していた記憶が鮮明に残っています。
冒頭陳述によりますと、弁護士と事務員が不倫関係になり、関係を絶とうとした事務員が、夫に、肉体関係を強要されたなどと嘘の告白をしたことが原因となっています。
よくある話と言えば、よくある話ですね。
普通は、慰謝料をよこせというところです。
ニュースにもなりません。
被害者である男性弁護士が「無理やりしてない」と答えると、被告人は突然殴打し失神させ、局部を切断しました。被害者である男性弁護士が意識を取り戻し、真っ赤になった股間を見て「ここどこ? なんで血出ているの」と錯乱状態で叫ぶと、被告人は「強姦したからです」と言い放ち、笑い声をあげたそうです。妻は夫の凶行をただ、見守っていたということでした。
もちろん、被害者である男性弁護士にも落ち度があります。
依頼者などから、雑談で「何年くらいと思いますか」と聞かれますが、「そんなことわかるはずがありません」と、素っ気なく答えています。
しかし、復讐としてみると、少ない対価で、最大限の効力を発揮したといえるではないでしょうか。
殺人なら重いですね。
ある意味、法科大学院生ですから、何の犯罪をすれば、どれくらいの系があるかを考えて、犯行に及んだのかも知れません。
被害者ですが、精神的にタフですね。
名前はネットなどで知れていますが、従前通り活躍しているそうです。
民事はいくらになるでしょう。
後遺障害慰謝料は「生殖器に著しく障害を残すもの」で後遺障害等級9級で670万円(大阪高裁管内基準)ですが、かなりの金額が上乗せされるでしょう。
逸失利益は、42歳で、可能年数25年、ライプニッツ係数14.094、労働能力喪失割合35%ですから、年収(収入-経費)×0.35×14.094となります。
大体、年収(収入-経費)の5倍です。
他もありますが、額は知れてます。
いずれにせよ回収できないでしょうが・・