今も人気の「あまちゃん」ビル、保存か解体か…老朽化で剥がれ落ちる外壁

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 NHK連続テレビ小説「あまちゃん」のロケ地となった岩手県久慈市の「久慈駅前ビル」を巡り、保存か解体かの議論が宙に浮いたままとなっている。2013年に再開発に向けて解体する構想が浮上したが、実現しないまますでに10年がたった。老朽化のため外壁が剥がれ落ちるなど安全面に懸念があるが、市も所有者も明確な方針を打ち出せずにいる。(広瀬航太郎)

老朽化が進む「久慈駅前ビル」。壁面には「あまちゃん」の撮影に使われた看板が掲げられている(23日、岩手県久慈市で)
老朽化が進む「久慈駅前ビル」。壁面には「あまちゃん」の撮影に使われた看板が掲げられている(23日、岩手県久慈市で)

 地上4階、地下1階建てのビルは、1965年に完成した。かつては百貨店が入居してにぎわったが、テナントが相次いで撤退し、現在は美容院1軒のみが営業する。

 13年放送のあまちゃんでは、架空の「北三陸市観光協会」が入る建物という設定で登場した。外壁には撮影に使われた「北の海女」などの看板が当時のまま飾られ、今もロケ地巡りに訪れるファンが後を絶たない人気スポットだ。

 ドラマ放送翌年の14年、久慈市はビルを公費で解体し、跡地に広場を整備する中心市街地の再開発計画を公表した。市民アンケートでは回答者の6割以上が解体を支持し、所有者の「久慈駅前ビル協同組合」も市の計画に合意する姿勢を示した。しかし、市はその後、駅前の別の場所で再開発を進めることを決め、解体は白紙となった。

 16年には、外壁が剥がれ落ちるなどしたため県から改善指導を受けた。組合は対策としてネットを張ったが、資金難で補修できずにいる。組合の試算によると解体には約7000万円が必要で、斎藤憲次代表理事(76)は「できることならロケ地として残したいが、市に活用の考えがないなら民間事業者への売却も検討する」と明かす。

 ビルの近くに住む男性(67)は「強風が吹くたび、落下物が人に当たらないかとひやひやする。早く解体したほうがいい」と望む。一方、千葉県松戸市から訪れた男性会社員(49)は「ファンとしては残してほしい。レプリカとして建て直し、中にドラマのセットを再現することはできないか」と提案する。

 ビルは市が発行するロケ地マップに紹介されているが、市商工観光課はビルの今後について「明確な方針があるわけではない。ファンと住民双方の意見を踏まえ、所有者の責任で検討してほしい」と静観の姿勢を貫いている。

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