仁藤夢乃氏が代表をつとめる支援団体Colaboへの監査では、会計のミスはあっても横領などの不正は見つからず、補助金の返還も必要ないと認められた。その結果を不服として監査請求者は住民訴訟をおこなっている。
その「暇空茜」と名乗る監査請求者について、はてなブックマークでid:Capricornus氏が支持を表明し、はてな匿名ダイアリーで説明を足して、注目をあつめていた。
何より一民の当たり前の権利は保障されるべきとして暇空茜を支持する
タイトルで「市民」や「ひとりの民」ではなく「一民」という言葉をつかっているところからして、よくわからないが。少なくとも一般的な辞書では人名ばかりが引っかかる*1。
一般に通じない言葉をつかうことをエコーチェンバーの基準とするなら*2、この「一民」はその対象にならないのか、ならないとすればその理由は何だろうか。
本文を読んでも、Capricornus氏が何を主張して何に反論したいのかがよくわからない。
“少なくとも私は”とした私の個人的なコメントに星をつけてくれた人は皆わかってくれてると思うんだけどさ、
情報開示請求も住民監査請求も住民訴訟も、全ての国民に等しく当たり前の権利なのよね。
しかし監査請求も開示請求もひきだした反応をコンテンツとして商売にするため用意された制度ではない。そのような目的のため税金をつかって事務負担などかけられないと判断されれば制度が縮小されかねない。
ここ最近、私人逮捕を濫用して炎上することでYOUTUBEの収益をあげる問題が話題になっている*3。そのひとりは以前にColaboの活動現場に乗りこみ、安全性をそこなう問題をおこしていた*4。私人逮捕が法律でみとめられているからといって、このような迷惑系YOUTUBERを支持できるだろうか。
ちなみに批判を覚悟して私見をいえば、濫訴や陰謀論によって結果的に巨悪が暴かれることもあるし、迷惑系YOUTUBERはタブロイド紙に近い存在意義があると現在でも思ってしまっているが、それだけで支持を表明することはさすがにできない。
一方で、殺到する誹謗中傷に抵抗するため仁藤夢乃氏が弁護団を結成して記者会見をひらくことも、監査請求などを攻撃目的の法的嫌がらせと指摘することも、すべて形式的には市民がもつ権利というしかない。
そこから仁藤氏を支持するかは、実際に活動へ影響をあたえるほど誹謗中傷が殺到していたか、暇な空白氏の制度利用が法的嫌がらせといえるかを考慮して決めるべきだろう。
監査結果に不満をもって暇な空白氏は行政訴訟にすすんでいるわけだが、明かされた主張のなかに、高額の食費を過剰と主張するものがあった*5。その食費は横領などではなく、誕生日のような特別なイベントのために使用したことが監査で認められているのに。
ここで暇な空白氏の行政訴訟への支持を公言することは、最低限度の文化的な生活をおくることができなかった弱者から、文化をふたたびうばうことを支持するに等しい。そうでないというなら、行政訴訟は権利だという一般論ではなく、どこをどのような理屈で支持するのか具体的に論じる必要がある。
Capricornus氏が暇空茜こと暇な空白氏*6の問題として「性格」の悪さを認める話をしている意味もわからない。
原告の性格がどうのこうのなんてスキャンダラスな話があったからと、原告が悪人だからこの訴訟は認められない、行政は正しいなんて馬鹿げた人治主義的判断をしてきたのかって話でもあるのよ。
寧ろ本件のウェイト、それがでかすぎる。
暇空氏の性格に難がある事くらい全ての人間がわかっとるわ。
しかし性格という広い概念が暇な空白氏への批判で主流だった記憶がない。いったい誰に対する反論のつもりだろうか。
Capricornus氏とは以前にやりとりをしたが、別の場所で「暇空氏が嫌われるのとcolaboの不正疑惑は全く別の話」と言及されて、嫌いという話をしていない私としては当惑したものだ*7。
暇な空白氏が問題にされてきたのは「性格」ではなく、個別具体的な言動だろう。無理筋な行為を性格が悪いとだけ論評することは、むしろ動機や目的の具体的な問題を見失わせて、問題を矮小化させかねない。
しかもCapricornus氏は後半で、「性格」や「加害性」の問題が仁藤氏と同等のように主張している。主流の話題になっていない「性格」をもちだしたのは相対化のためだったのだろうか。
性格で言えば暇空茜と仁藤夢乃はどっちもどっちだ。根底が自己中で嫌いなものを手前勝手にこき下ろす。
加害性も良い勝負だろう。寧ろその加害性からの経済的損失や実害で言えば仁藤氏に軍配が上がるんじゃないか?町おこしやら潰してる常習者なんだから。
東京都への行政訴訟が形式的に権利として認められるなら、町おこしの妥当性を論じることも一市民の権利と認めなければならない。もちろん町おこしにも慈善活動と同じように不正の可能性がありうるし*8、個別具体的にそれぞれの主張の妥当性や結果の是非などを論じる必要がある。
町おこしそのものではないが、「温泉むすめ」というコンテンツに対して仁藤氏が批判したことは言論の自由の範囲内だったし、表現の修正をしながらコンテンツ自体は存続している*9。もちろん仁藤氏の言論に反論することも黙殺することも自由だが、批判という権利そのものの存在を否定することはできないし、その権利をうばうことが監査請求の目的にあることを暇な空白氏は公言していた*10。
引用を前後するが、監査請求や監査結果への具体性に欠けた論評もよくわからない。
彼の言ってることが全てデマと宣い、住民監査請求が通るほどの不備を無かったことにして良いのか?その監査結果のおかしな結論もスルーして、彼が犯したわけでもなければ寧ろ予め批判してた現地妨害やらも彼のせいにして、全てをデマだの攻撃だのとするバイアスの狂いぶりは何なんだよ。
監査請求が認容されたこと自体をもって暇な空白氏の正しさが証明されたかのように主張する意見は他でも見かける。
しかし少なくとも監査では横領などの不正はいっさい見つからなかった。監査以前から指摘されていたように*11、一定以上の経費からは補助金がもらえなくなる制度設計のため、経費を申請した範囲からミスや判断がわかれる部分を除外しても、団体がもちだしで活動していることになると確認された*12。会計のミスそのものは修正されたし、類似する団体とくらべて会計のミスが特段に多いわけでもなかった*13。そこまでは認める必要があるだろう。
そうして監査請求によって支援団体のおかれた状況の理解や議論が深まることを以前は少し期待していた。実際、本心から興味本位で注目していただけの集団においては、仁藤氏の意図や手法が理解されているところも見かける。もちろん理解することと肯定することは同じではないし、理解のための代償が許容されるかは別問題だが。
一方で監査請求や開示請求の結果そのものに不満をもつことも自由だが、明かされた情報を無視して主張をおこなうようでは攻撃のためにする請求だったと自白するようなものだ。少なくとも「公金チューチュー」のような表現でColaboによるピンハネを主張することは困難と認めて、主張を根底からたてなおさないといけなかった。
刑事犯罪でたとえるなら、逮捕や起訴されたことをもって有罪の可能性が高いと第三者が判断するまではいいとしよう。しかし逮捕も起訴もあくまで証拠をあつめて判断する過程であって、判決で無罪となった後に逮捕や起訴を根拠として有罪あつかいしていいわけではない。証拠不十分で無罪になったのではなく、完全なアリバイが見つかったり別人が真犯人とされたなら、なおさらだ。過去に有罪の可能性が高いと判断したことの正当性は認められるかもしれないが、その判断をそのまま判決後も主張しつづけることはできない。無罪判決を否定して有罪の疑惑をかけたいならば、裁判の過程で明らかになった情報などから過去の判断で誤解とわかった部分をとりさげ、根拠不足とされた部分は補強して、あらたな判断を構築する必要がある。
Capricornus氏は暇な空白氏が誹謗中傷をしていることは認めているようだが、「行政の不備へのツッコミは確か」ともちあげる根拠はよくわからない。
逆に言えばさ、彼の性格に難があるところはそれはそれで突っ込めば良いし、最もたる誹謗中傷は被害者に訴えられて裁かれても当然だけど、それとはまた別の話である彼の行政の不備へのツッコミは確かなものだと、いつも通り“これは行政の杜撰な仕事なので正されなければならない”と、朝日や毎日やらの左派マスコミや民の味方ですとしてる左派政党やらが正常に機能するなら、こんなにも私は彼を支持する必要はなかったよ。
監査結果を受けてなお、「左派」ならば追及するべき問題だと主張する意見は根深くある。いっさいミスがゆるされないと主張することが悪いとはいわない。しかし刑事裁判で有罪となるような森友学園や桜を見る会や東京五輪の収賄などと同列にできる疑惑ではないのだ*14。まったく重みの異なる問題に同じくらいの追及をもとめることは公平ではない。
ちなみに、今件で暇な空白氏に対する最初の司法的判断として、著作権を主張する団体を訴えた裁判は敗訴に終わった。
相手に著作権がないと思いこんで訴訟をしかけたまではいいとしよう。しかし団体から著作権を保持する証拠を最初に出され、そこで裁判所から裁判のとりさげまでうながされたのに*15、暇な空白氏は新たな主張をすることもなく裁判をつづけた*16。意図はどうあれ、あたかも敗北を先のばしにしてカンパをあつめる期間をひきのばしつつ、相手への負担をかけつづけるように。
下手な鉄砲も数を撃てば当たることもあるが、的が存在しないと調査されたところに鉄砲を向けて、的にあてるからと吹聴して経費をあつめることに何の正当性があるだろうか。
そして現在にすすめている行政訴訟が、著作権をめぐる裁判と同じような内容ではないと信頼することができるだろうか。念のため、ここで疑われるのは性格などではなく、「行政の不備へのツッコミ」なるものの妥当性だ。
*2:反証された争点を切断処理するのはいいが、切断したのに反証するのは不当だなどと反発されても困るよ - 法華狼の日記
*3:街角の人、「不審者」と決めつけ「逮捕」 SNSへの動画投稿に批判:朝日新聞デジタル
*4:仁藤氏によると、通報しても警察は私人逮捕するようにうながしたという。
*5:若年女性支援ばかり選択的に興味をもたれた「公金の使途」は、やはり生活保護否定のような社会福祉否定にいきついた - 法華狼の日記
*6:はてなアカウントはid:kuuhaku2。
*7:ビフォー「暇空氏と対話したら終了」「法華狼も法華狼擁護者も詭弁が過ぎる 」アフター「暇空氏に全乗っかりの賛同者みたいな幼稚な認識」「私から法華狼氏には反論も何もない」 - 法華狼の日記
*8:元課長補佐に実刑「返礼品業者へ影響力」 奈半利ふるさと納税汚職:朝日新聞デジタルさらに慈善活動については私自身も、今件へ最初に言及した2022年9月のエントリ末尾で、慈善活動にかくれた犯罪者がいることをあえて言及した。 仁藤夢乃氏の支援団体Colaboがバスカフェで提供している食品が一食2600円という計算は、さまざまな意味で誤っている - 法華狼の日記
*9:Colaboへの監査請求を支持する動機に「リーガルハラスメント」もあることが、はてな匿名ダイアリーで語るに落ちていた - 法華狼の日記
*10:あらかじめアレルゲンを除去した給食を「無菌室」と批判する暇な空白氏は、色々な意味でどうなのだろう…… - 法華狼の日記の注記に記録。
*11:私自身も2022年11月の時点で指摘していた。 東京都若年被害女性等支援事業は最初から4団体に委託しているのだから、もし制度に不正があるならば1団体の問題ではない - 法華狼の日記
*12:申請した経費を予想以上にこえる活動もしていたことにはさすがに驚いたが。 Colaboが約1300万円の人件費をもちだしていたという情報を見て、人件費を按分していなかったミスの背景を想像する - 法華狼の日記 それを説明する会計表「実際」が、なぜかColaboの落度のように主張する意見ががあることにも驚かされる。[B! 増田] 何より一民の当たり前の権利は保障されるべきとして暇空茜を支持するで、「不正の有無でいうと住民訴訟までフェーズが進んでから「実際」が出てきた時点で勝負付いたようなもんだけど、Colabo擁護勢は責任取るどころか反論すらできてませんよね・・・?」とコメントしたid:halfneet氏など。
*13:Colaboへの監査請求を支持する動機に「リーガルハラスメント」もあることが、はてな匿名ダイアリーで語るに落ちていた - 法華狼の日記 の後半を参照。
*14:仁藤夢乃代表の支援団体Colaboについて、東京都へ監査請求して却下された暇な空白氏は、大きな思い違いを三つしている - 法華狼の日記で、「モリカケ」と比較するコメントをいくつか引いた。仁藤夢乃氏や支援団体Colaboに対して「私の経験上の(違う現場の)感覚で公表情報に疑問点がある」というkuzumimizuku氏の「感覚」を過去の出来事で確認してみる - 法華狼の日記では、桜を見る会を矮小化しつつColaboに疑惑を向けることを正当化していることを指摘した。
*15: