AIを使って英語を極めるコツ 言語学者が教える「革命的」な勉強法

ChatGPT

鈴木智之
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 英語を話したいのに話せない。長年、勉強しているのに単語も文法も身につかない。そんな自分でも生成AI(人工知能)を使えば上達できるのでは――。ChatGPTチャットGPT)をいち早く英語の授業に活用してきた立命館大学生命科学部の山中司教授(44)=応用言語学=に使い方のコツを聞いた。

 ――英語を自由に操りたいけど、なかなか勉強できません。

 大前提として、日本人は長い時間、英語を学ぶのに苦労している割にうまくなりません。テレビでは朝から晩まで日本語が流れ、本屋に行っても日本語の本だらけです。

 自国の言語だけで文化やエンタメを楽しみ、学問もできるという国は実は意外と少ない。英語にはかなわないけれど、パワフルな日本語があるためガツガツしなくても済んでしまうんです。

 ――納得してしまいます。

 日本人にとって英語は母語ではなく、割り切りも必要です。昔、イギリスの床屋で「髪の毛を全体的に3センチぐらい切ってくれ」と伝えられなかった。中学レベルの英語で話せるはずだと分かるのに簡単な言い回しが出てこない。英語力が足りないというより、母語話者(ネイティブ)じゃないからです。

 チャットGPTや機械翻訳が登場する前に学生に言っていたのは「簡単に言うしかない」でした。例えば「男女共学」なら「男の子と女の子が一緒に学校に行く」と言い換えればいい。でも厳密に言ったら妥協です。

 ――生成AIの登場で妥協しなくてよくなりましたか。

 少なくとも読み書きは、ネイティブに肩を並べられます。チャットGPTは膨大な量のテキストを学習し、ネイティブでない人間には思いつかない自然な表現を出力してくれます。抵抗する人もいるけれど、私は使うべきだと思います。

 授業では学生が自力で英訳した英文とチャットGPTの出力結果を比較させたり、チャットGPTでそれぞれの関心に応じた教材をつくらせたりしています。

 いつでも使えて、個人のレベルに応じて添削し、適切な表現や言い回しを教えてくれる。どんな英語の先生よりもすごくて、革命的。英語学習を180度変えるものだと、わくわくしています。

 ――AIがあれば人間の先生はいらない、なんてことになりませんか。

 先生はいなくなってもいいと半分思っていますが、教室という空間での表現や人間同士のコミュニケーションがなくなるわけじゃない。少なくとも教え方を変える必要はあるでしょう。

 教員なので教え込みたい気持ちもありますが、多分、もうチャットGPTの前ではかなわない。

 ――「話す」のはどうしましょう。

 授業では「とにかく自分の言葉として何回も話しなさい」と言っています。AIによる出力結果は自分が言いたい英語なわけです。覚えてしまうんです。

 ――英語を学びたい人は生成AIに触れるべきでしょうか。

 最新のテクノロジーを活用できるのはチャンスです。使い続け、慣れることがすごく大事。食わず嫌いが大きな機会損失になる可能性もあります。まずは自力で英訳し、チャットGPTの英文と比べてみてください。

 チャットGPTが出してくるネイティブらしい難しい表現より、自分が思いついた簡単な英文の方が伝わりやすいこともあるでしょう。使い分けてみてください。(鈴木智之)

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