「universe25」実験の結末とは
人類にとっての理想郷とは?
皆さんにとっての理想郷(ユートピア)とは、どのようなものでしょうか。
戦争のない平和な世界
皆が平等で貧富のない世界
その人、1人ひとりの環境や生活様式によって、求める理想郷は異なることでしょう。しかし、最低限の生活いわゆる「衣・食・住」に困らない世界があるとしたら、我々人間にとって一種の理想郷なのでは?と考えてしまいます。
もし我々人間を含めた生物たちが、そうした環境で生活した場合、どのような結末を迎えると皆さんは予想するでしょうか?
そこで今回は、上記の世界に近い環境を再現し、マウスを使って実験した【UNIVERSE 25】という実験の概要と、その結末をご紹介したいと思います!
実験【UNIVERSE 25】
概要
1960年代のアメリカで、動物行動学者であるジョン・B・カルフーンは、【UNIVERSE 25】というマウスの行動を観察する実験を行います。
食料や水を無制限に与えて、病気などを予防、更に天敵のいない環境を作り出し、マウスにとっての理想郷を作ることで、マウスの行動パターンや繁殖率などを観察するのが目的です。
実験の詳細
上の図のように、マウスの収容スペース(3840匹)まで収容可能な高さ1.4mの側面に2.7mの正方形空間を4つに分割して部屋を作ります。因みに、4つの仕切りはマウスが自由に行き来できます。
※唯一、この実験では収容スペースだけ限度があります。
各部屋8匹ずつ(計32匹)オス・メスのマウスを放し実験開始!
実験結果
結論からいうと、マウスは最大2200匹にまで増殖しますが、最終的には全滅してしまいます。
マウスにとって理想郷であるはずの世界(収容スペース)で、何故このような事が起きてしまったのでしょうか。
その真相に迫っていきたいと思います。
格差社会の誕生
食事やスペースに一切困らない環境である為、文字通り”ねずみ算式”に繁殖を始めたマウスたち。実験開始から約300日経過すると620匹まで増殖しました。
やがて争いが始まり、この権力闘争でオスの中で階層が生まれ、強いオスが広いスペースや多くの餌を独占するようになります。
異常行動
本来縄張り意識のあるマウス。他の個体とコミュニケーションを取りながら規律のある生活をするのですが、増加率が低下した頃から次第に、その特質を持たないマウスが現れ、ストーカーや同性愛・引きこもり、共食いなどを始めます。
引きこもり化したマウスは実験内で「美しい者達(争いなどに参加せず傷などが無いため)」と名付けられます。
「美しい者達」は、メスに関心を示すことなく交尾もせず、食べる事と寝る事しか考えていません。食事の共用スペースで一緒には食べずに他のマウスが寝静まってから食事を摂ります。
その為、それらの個体は他のマウスからも無視され社会から孤立してしまいます。
貧富の差
富裕層のメスは子煩悩で、子どものマウスの世話をよくしていました。妊娠すると熱心に出産準備に取り掛かり、自身の縄張りの環境を整えたり、出産後の子育ては世話をしっかりしたりと、子どもマウスの死亡率は約50%程に留まります。
しかし貧困層のメスは子育てが上手くできず、スペースがない為か、中々巣作りは進まず、出産では直接飼育箱の底に産み落としてしまうメスもいました。
更に本来メスは危険を察知すると子どもを守るため行動しますが、貧困層のメスは、子どもを無視したり、自分だけが避難するというような個体も存在していました。
結果として、生育異常の為、収容スペース全体の妊娠率や流産率が著しく減少していきます。
実験の結末
全滅
実験を開始して560日目にして個体数は完全に停滞し、600日目には死亡率が出生率を上回ります。
若いマウスは、交配活動や子育て・縄張り争いなどには関心を示さず、ただ食事と毛づくろいをすることに時間を使います。その後、若いマウスは、反社会的な行動(略奪・縄張り争いとは関係のない攻撃など)を繰り返すようになりました。
920日目に最後の妊娠が確認されますが、生まれる事はなく、1780日目には最後のオスが死亡してしまいます。
25回とも同じ結末
この実験は、異なるスケールで実に25回も繰り返されますが、日数や個体数は異なるものの、最終的には25回ともすべて同じ結果(全滅)になってしまうのでした。
実験からわかること
人類との比較
この実験の内容や結果に関して、まず先に思い起こされるのは「人類も同じ道を辿るのではないか?」という事です。
日本では現在、少子高齢化による影響で人口減少が懸念されているものの、世界的に人口は増加し続けています。
このまま世界の人口が増え続ければ、エネルギーや食糧の不足、また、国や地域によっては居住スペースにも限界がくる可能性も否めません。
マウスと人類の異なる点
【UNIVERSE 25】では、マウスを実験台として25回同じ結果が出ています。人類史をこの実験のフェーズで例えるなら、現在はマウス実験における絶滅へのカウントダウンの段階であると言えるでしょう。
しかしながら、人間には知能があり、テクノロジーや文化を有しています。過去から学ぶこともでき、今を改善する力を持っているのも事実です。
つまり、マウスと全く同じ結果になるのかと言われれば、ほぼあり得ないと言ってよいでしょう。
ですが同時に格差社会や貧富の差、或いは争いといったものが最悪の結末をたどってしまう要因であることも事実です。
地球という限られたスペースや資源で、1人でも多くの人々が豊かな暮らしを実現する為には、それらの要因を人類自ら向き合いつつ、改善させていかなければならないのかもしれません。
以上、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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