「シグヴァルディと共にノルウェーに行き、彼が戦っている間は決して戦場を離れないことを誓おう。」
ヨムスヴァイキングと呼ばれる戦士の一団。そこではこれまでの血族の繋がりを忘れ、団員同士を兄弟と考える様な強い掟がありました。彼らの拠点、城塞ヨムスボルグは、厳しい規律のもと戦士を培う場であり、19歳から49歳の男達が集ったと言われています。
のっぽのトルケルは、ヨムスの首領シグヴァルディの兄弟。デーン人を率いてイングランドを略奪し、その後イングランド側に付いてスヴェン双叉髭王と戦いました。かなり重要な人物だったことが伺えます。
そんな彼がまだヨムスヴァイキングにいた頃の話。ヴィンランド・サガのアニメ第1話、冒頭のヒョルンガバーグ海戦の前日譚です。
デンマークのスヴェン双叉髭王は、ノルウェーを攻めるべく、自らの父ハラルド青歯王とヨムスの親族の葬儀を合同で行う名目で、ヨムスヴァイキング達を一堂に集めました。
ヴァイキングには「王位を継ぐ者は葬儀の宴を開き、誓いを立てて杯を飲み干す」という慣習があった様です。その宴において、ヨムスヴァイキング達には、1番大きい角杯に1番強い酒が注がれました。スヴェン双叉髭王による亡き父ハラルド青歯王への杯から始まった「追憶の杯」の儀式は、続けて3度行われました。そして、その度にヨムスヴァイキング達は自らの杯を飲み干しました。
4度目の追憶の杯。ヨムスの首領シグヴァルディは、亡き父に捧げてこう誓いました。
「わしは3冬の間にノルウェーに行き、ハーコンを殺すか国外に追放するぞ。」
のっぽのトルケルがそれに続きます。
「シグヴァルディと共にノルウェーに行き、彼が戦っている間は決して戦場を離れないことを誓おう。」
そしてヴァグン・アーカソン。
「共にノルウェーに行き、トルケルレイラを倒してその娘をわしがもらう。それまでこの地に帰らないぞ。」
この後も多くの戦士達が、次々と厳粛な誓いをあげたと言われています。そして翌朝。酔いが醒めた彼らは、昨日は少しやり過ぎたと思いながら、ノルウェーを攻めるための策をあらためて考え直すのでした。
ヨムスボルグ没落のきっかけになる失敗談ですが、何とも気持ちの良い宴の一場面。誰かが誓う度にあがる戦士達の大きな歓声が聞こえてくる様です。
日本ヴァイキング協会