経営随想
中小企業が社会を創り社会を変える!
(株式会社ユーランドホテル八橋 代表取締役社長)
<秋田へ来た理由>
私の実家は戦前から東京の日本橋で天麩羅屋と銭湯を営んでおり、私はその3代目です。両親は東京で生まれ育ちましたが、転居することが多く、私は神奈川県横須賀市で生まれ横浜で育ちました。父の代で都内を中心に事業を拡大し対馬で河豚の養殖をするなど次第に地方にも事業を拡げ、平成2年に秋田市でユーランドホテル八橋を開業したことから我が家と秋田とのご縁が始まりました。その後、バブル崩壊による景気後退と急な事業拡大による超過債務等で経営が厳しくなり、長男であった私は25歳の平成5年4月に勤めていた会社を辞め初めて秋田に参りました。
<秋田で学んだこと>
企業経営など何も知らない素人でしたので、当初は「挨拶、清掃、節約」だけをテーマにしスタッフの方々と現場仕事の毎日でした。人を知らないと仕事に様々な支障を来すことを実感し人脈づくりの為、様々な会に入会しました。特に秋田青年会議所で損得抜きに付き合って頂ける先輩や仲間、後輩が出来たことは、その後の企業経営や私個人にとっても大きな力になっています。
東京と秋田の一番の違いは個人や企業と地域社会との関わりの強さだと思います。秋田で地元相手に商売をするには、事業者が街づくりもしないとビジネスが成り立たない恐怖を感じます。当初は人脈づくり目的で入会した青年会議所でしたが、その活動を通して、市民そして経営者としての地域社会における役割と責任の大きさを知りました。そして又、地方は国や行政の影響も本当に強く受けます。地方経済が国の公共事業によって成り立っていることを考えると当たり前のことです。更に国際社会の影響も東京と同じように受けます。こうなると秋田で商売していても全てのことが他人事ではなく、皆が社会のことに当事者意識を持つ必要性を感じざるを得ません。
私は数年前から「会社経営の目的は国づくり。企業理念には正しい国家観が必要」と考え社是にしています。国民を一番多く預かっている我々中小企業経営者にはスタッフに対してきちんとした社会人教育をする責務があると思います。スタッフが社会の現実を認識し当事者意識を持つことで会社に対する意識も変わり企業として力も上がりました。
<秋田の企業として>
これまで温浴・宿泊施設の増加や飲酒に対する意識の変化などユーランドの経営環境も随分変化しましたが、秋田で銀行融資を受け必要に応じて設備投資をし今までやってくることが出来ました。これは助かりました。やはり設備産業は一定の設備投資が出来ないと勝負になりません。東京の本社も業績は回復しましたが、多額の債務返済には至らず平成14年に民事再生法の適用を受け、平成22年秋に秋田の金融機関の支援により(株)ユーランドホテル八橋が東京本社を買収する形で苦境から脱却することが出来ました。ですから現在ユーランドは文字通り秋田の企業です。正直、「秋田の企業」でなければこのスキームは成立しなかったと思います。秋田にいたからこそ気が付いたことがあり、秋田にいたから出来たことがありました。
現在、東京では駒込(東京都北区)でビジネスホテルやカプセルホテル&サウナ、そして飲食店を経営しています。勿論秋田のお酒と秋田のお米を提供しており一つの個性になっています。これからも、秋田県内外に拘らず秋田企業として事業を展開して行きたいと考えています。
<旅館ホテル組合活動>
平成21年5月に秋田県旅館ホテル生活衛生同業組合の理事長を務めることになりました。弊社は旅館と言うよりは温浴施設ですので私自身違和感がありましたが、これも天命とお受けしました。結果的に全国最年少ということもあり他県の理事長や県内外の方々から事業に役立つ知恵やヒントを沢山頂いています。
そして東日本大震災。全国の仲間と協力して被災者の受け入れに取り組み、全国で延べ520万泊を超える受け入れを致しました。被災者の方々との交流を通じて我々業界が持つ社会的意義を再認識し、大変厳しい状況にある我が業界にとってこの経験は事業を継続していく新たな理由になりました。今後の災害時にはより円滑に受け入れ態勢が取れるようにと、秋田市、仙北市の両市とは組合が避難所協定を結びました。
旅行スタイルの変化や地方の人口減少などの影響で業界全体が大転換期を迎えています。その一方、観光産業への期待も大きくなって来ています。今や日本全国観光誘致合戦。ご存知の通り、秋田でも2年前に県庁に観光文化スポーツ部が創設され組合としても県や観光連盟と連携して取り組む事業が増えて来ました。秋田の酒で乾杯の推進、利き酒、寒天、枝豆、秋田舞妓、秋田看板娘、そして新たな秋田の観光キーワードや研修、施設の魅力アップ策など数え切れない程です。勿論、行政と民間は考えが相容れない部分もありますが、次の世代に秋田の文化や風土を繋ぎたいとの強い思いは共通です。是非、今の関係をより強固なものにし、一致団結オール秋田のチーム力で今までの常識にとらわれない「秋田スタイル」を皆で作り上げ、この難局を乗り越えたいと思います。
<目指せ!観光立県>
間もなく国民文化祭が秋田で開催されます。10月4日(土)から11月3日(月・祝)の1ヶ月間、秋田全県各地へ日本全国から多くの方々が訪れます。恐らく今回遠方から来る方々は今後何度も秋田に来ることはないと思います。今回が一期一会だ来ることはないと思います。今回が一期一会だと思い「秋田らしい心のこもったおもてなし」でお出迎えしたいものです。是非、国民文化祭を良い機会に「観光バス、リムジンバスには手を振る」「道で観光客らしき方を見かけたらにっこり笑顔でお迎えする」「家の周り、会社の周りはきれいな街でお出迎え出来るようみんなで掃除する」などやってみませんか!観光とはそこに住んでいる方々が自分の街を愛し誇りに思い、その街を訪ねてきた方々に街の素晴らしさを体感してもらうことだと思います。ですから県民全体がその気にならないと観光産業は成り立ちません。私は故郷自慢の秋田人にはぴったりの産業だと思います。観光は間違いなく裾野の広い素晴らしい産業になります。まずは国民文化祭から始めませんか!
会 社 概 要
1 会社名 | 株式会社ユーランドホテル八橋 |
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2 代表者名 | 代表取締役社長 松村 讓裕 (まつむら よしやす) |
3 所 在 地 | 〒010-0961 秋田市八橋イサノ二丁目16番29号 |
4 電話番号 | 018-863-7811 |
5 FAX番号 | 018-863-7210 |
6 U R L | https://www.youland.jp/ |
7 設立年月 | 平成2年5月 |
8 資 本 金 | 1,000万円 |
9 年 商 | 3億9千万円 |
10 従業員数 | 46人 |
11 事業内容 | 温浴を中心とした飲食宿泊業 |
12 社 是 | 企業経営の目的は国づくり。企業理念には正しい国家観が必要。(日々成長するスタッフが魅力の店づくり) |