ACfAヤンデレ集   作:粗製のss好き

6 / 8
短めですまないです……


メイ・グリンフィールドの場合:2

 懐かしい大衆酒場、言ってしまえば居酒屋にて。

 

 有澤重工の職員に向けられたこの居酒屋はメイの言う通り、確かに『いいお店』と言えた。店に流れるBGM、置かれているお酒、おつまみに料理。何もかもが懐かしい。不覚にも前世の記憶を思いだして涙腺が緩くなる。

 

 BFFはイギリス系統の企業である。したがって、その周辺の店もどこか格式ばったモノが多かった。もちろんそれはソレで悪くないし、冴えない俺でもマナーさえしっかり押さえてれば何かを言われることもない。しかし、やっぱり俺にはこれくらいゆるーい雰囲気が合ってる。

 

 こんな素晴らしいお店を紹介してくれたメイには何て感謝すればいいのか。本当は素直にそう伝えたいのに、今日のメイはどこか変だった。主にお酒のペースが異常だったのである。

 

 「おーい飲み過ぎだぞー」

 

 かなり気持ちよくなっているようで、肩に寄りかかってくるメイに対しそのように告げる。

 

 「そうかしら。これくらい普通よ」

 

 「顔を真っ赤にして言うセリフじゃあないぞ」

 

 確かに彼女は酒豪である。何度か飲み交わしてるから、それは疑いようもない。お酒が大好きで、凄まじい肝臓の持ち主であることを知っている。しかしあまり慣れてないであろう日本酒の栓をパカパカ開けては、ばくばく飲んでいく様を見れば流石に心配にもなる。

 

 「……そういうあなたはあまり飲んでなさそうね」

 

 「日本酒ってのはそう沢山飲むもんじゃあないのさ」

 

 お猪口をあおりながら応える。そんでもってお塩がかかった天ぷらも食べる。すっげぇうめぇ。まさかこんな世紀末な世の中でここまで贅沢出来るとは。

 

 「でも飲み比べって文化があるそうじゃない」

 

 壁に貼られている『お得!! お好みのお酒三種、飲み比べ!!』と書かれたメニューを見ながら、メイは不満げに告げる。完全に出来上がってると分かる。

 

 「一本空ける事を飲み比べとは言わんだろ、流石に」

 

 別にそういう事に明るいわけではないが、少なくとも間違った事は言ってないと思う。何か複数のお猪口に別々のお酒が注がれてたような、そんな感じだったと記憶してる。

 

 「いいのよ。吐かなければ」

 

 「確かにそうだが。あーでもアレだ。そんな簡単に男に寄りかかると勘違いされちゃうぜ」

 

 「……勘違い、ね」

 

 目を伏せながら、メイは僅かに口角を上げた。或いは、俺には自嘲しているようにも見えた。

 

 「どうした? 最近あまり調子よくないのか」

 

 「いえ何でもないわ。でも、そうね。今日が最後だと思うと、ちょっとね」

 

 「最後?」

 

 「……付き合ってるんでしょ? BFFの王女様と」

 

 これは驚いた。俺とリリウムが交際関係にあることはまだ王小龍一人にしか明かしてない。苦言と嫌みの数々を吐かれたものの、それ以上どうこうされることは無かった。一応祝辞が書かれた手紙を渡されたし。素直じゃないのがまた彼らしい。

 

 閑話休題。

 

 つまるところ、()()()()を知るには俺とリリウム本人か、もしくは王小龍を通さなければあり得ない。無論俺はメイに話してないし、機密に近い情報をあの老人が話すわけもなく。とすれば何故か交友関係にあるリリウムが彼女に告白したという事なのだろうが。

 

 「……まぁな」

 

 なんにせよ申し訳なく思った。もしかしたら気を遣わせてるのかもしれないと、そう感じたからだ。だから質問に対する返答はせめて正直であるべきとも思った。

 

 「ふふ、どうしてそんな顔をするの?」

 

 「いや、なんつーか。気を遣わせちったなって。悪い」

 

 「そんな事はないわよ。寧ろ謝るのはこちらの方。ごめんなさいね、事情を知ってるのに誘っちゃって」

 

 憂いを帯びた表情で話すメイ。胸が痛くなるのは、多分俺にも非があるからだ。しかしそれがどういった過ちなのかが分からないところが、俺の俺たる所以なのかもしれない。

 

 「でも、なんだって最後なんだ? 別に個人的な付き合いならこれからも―――」

 

 「私、これでも貴方に好意を持ってるの」

 

 穏やかに微笑みながらメイは嘯いた。色々思うことはあった。しかしそのどれもが的外れな気がして、俺は答えに窮してしまう。

 

 「んー。いい顔。それだけで、十分よ」

 

 「お前、何を言って」

 

 「気に、しないで。これはただの、自己満足だから。私はね、私は―――」

 

 とろんと。俺に寄りかかってた彼女が不意に前のめりに倒れる。それを慌てて受け止めるが、既にメイの意識は微睡の中にあった。すぅすぅと、心地よさそうに寝息をたてながら静かに目を閉じていた。

 

 「……どうすっかな」

 

 無理やり起こすのも忍びない。というか起きそうにない。しかし、かといってこのまま放置するのもよろしくない。何より彼女を送ろうにも、俺は彼女の住まいを知らない。となれば―――

 

 「悪いな、リリウム」

 

 メールで今回の事情を全て伝えた。それでリリウムが許してくれるかどうかは分からない。意外にも返事はすぐに来ることは無かった。ともすれば、ソレが答えなのかもしれないが。

 

 どうあれ、俺はメイを自宅に連れて帰る。

 

 「———ごめんなさい。ダイキ、ごめんね」

 

 寝言であろうと謝り続ける女を一人残す。そんな無責任なこと、俺には到底出来ない。

 

 

 




GAの関係者に連絡してメイさんを送ればいいんじゃないの(名推理
ダイキ君も酔っててそこら辺の判断が出来なかったんですかね(すっとぼけ

—追記—
読み上げ機能なる存在を今知った。
そして思いついた。

▲ページの一番上に飛ぶ
Twitterで読了報告する
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。