SIREN in Bloodborne   作:猫屍人

7 / 13
終了条件 知人の家で香を回収する


無謀

 墓地に囲まれたオドン教会は、その役割上ヤーナム市民が日常的に訪れることはそうない。だがいずれ死体が流れ着く地である以上、死と関係の深いヤーナム市民ならば誰もが知る場所でもある。

 そうした場所に、今は生あるものが集っている、というのは実に面白い事実であるともいえよう。その理由が、命を脅かすもの共からの避難というのだから事更に。

 

「赤ずきんさん、これでいいの?」

「あ、あぁ」

 

 そのような陰鬱な場所に、まだまだ未来と命を感じさせる若い声が響く。対するのは赤いボロ衣でなんとか体を覆っただけの、怪しく醜い風貌の男。男は歪みきった口の端を僅かに持ち上げながら、戸惑うように少女への返答を口にしていた。

 対する少女は香につけていた種火を消して微笑んだ。それを聞いた赤衣の男は、こうして微笑みかけてもらえるという事実に耐えきれず、困ったように顔を伏せるばかりであった。

 

 一度吹っ切れた、ということもあるのだろうか。その顔は平静のそれだ。

 泣きじゃくっていた弱いだけの少女は、次第に狩人の紹介で訪れる避難してきた住人たちに多少の会釈をされながら、弱まっていく香の匂いを嗅いでいた。だからこそだろう。ここまで逃げてくる中、よほどの緊張感に溢れていたのか、どこか疲れ切った様子で訪れる人々のために何かできることはないかと、幼心が行動力を生み出した。

 

 その考え抜いた結果が、悪い人だとは思えないこの赤い衣の男に協力し、香を絶やさないようにすること。自分の命はもちろん、獣と化した者共や、正気を失った教会の修道士なども寄せ付けぬ神秘の香は、炊くほどに安全性を保証する。

 

 彼女の父―――ガスコイン一家の父親は、獣を狩り、(かぞく)を守ることを生業とした。ならばこそ、その娘である自分も、人の命を守る使命があるのではないか、と。

 

 明けない夜は無いが、ヤーナムに住む者ならば皆が思う。夜は時に長くなりすぎるものだ、と。その中でも、特に今夜は長かった。一日という時間の枠すら越えて夜があり続けるのだ。もはや正確に時を刻むものすら無くなるほどに。

 その長い夜の中で、アヴァは確かに成長したのだろう。親しいもの皆を失って、立ち上がらざるを得なかったとも言えるだろう。されど、彼女は前を向くことを決心したのだ。そんな蕩けようもない堅き瞳を見て、赤衣の男は何かを言おうとして、言葉をつまらせた。

 

「お嬢ちゃん、もう香は十分よ。ほら、女の子がはしたなく煤なんて服につけるもんじゃないわ」

「アリアンナさん」

「こっちにいらっしゃいな。とってあげるわ」

 

 そしてひと仕事を終えたアヴァに、娼婦のアリアンナが優しい微笑みを携え彼女をいたわった。アリアンナも、ここに来てあまり調子が良くはない。自分の身は自分で守るつもりではあったが、こうも働き者の少女がいるともなれば、任せてしまおうと思うのも無理はないことだった。されど、労りたいと思うのも人間ならば当然の帰結。

 そうして見せる微笑みの裏、自分の不調は決して悟らせないのはこの汚れた街の娼婦であるが故か。何も知らぬ無垢なるアヴァに対して、アリアンナはどこか遠い目をして服についた煤を払った。

 

「ほら、これで大丈夫」

「ありがとう、アリアンナさん」

「いいの。……それにしても、本当、長いわね」

 

 いつもならば、大きな獣を狩れば終わった。どこからともなく鳴らされる、教会の鐘が今宵の獣狩に幕が閉じたことを知らせ、住人たちは何かを喪いながらもまた次の獣狩の夜へと備えていた。

 だが今夜は、あまりにも長く、そして終わらない。狩人の活躍は知らずとも、断末魔を上げる獣の咆哮は街のいたるところでもう2つは聴いた。それでも終わらぬとは、一体何が。

 

 アリアンナはそこまで思考を巡らせて、きょとんとした顔でこちらを見上げる少女を見据えた。そして苦笑する。物思いにふけるにしても、対話相手がいるのでは失礼であろうなと。

 終わらぬ夜に、相手の男と語り明かすのは以前には何度かあったものだ。だが今は、目の前に性と快楽のみのまぐわいすらも知らぬ少女が語らいの相手。なんの因果かと、ごまかすように彼女の頬へと手を伸ばした。

 

「あなた、綺麗になるわ。お肌のお手入れはその年からでも覚えなさいな」

「え、あ、ありがとう…?」

「ふふっ、ごめんなさいね。こんな突然に触れられて、嫌だったでしょう?」

「ううん。アリアンナさんの手、柔らかくて優しいから…お母さんとおじいちゃんの次に好きだよ」

「あらそう、光栄だわ。お父さんはいいの?」

「お父さん、ごつごつして乱暴だからあんまり好きじゃなかった、かな」

「そう……」

 

 ガスコインの娘ということもあって、アリアンナは彼女への扱いをなんとも決めあぐねている。そしてアヴァ自身はそんな他人の評価など知ったことかと、己のままに振る舞うことを覚えた。なんとも、奇妙な光景であろう。

 

 そうして女二人の語らいがポツポツと余興に乗り出した頃だった。

 オドン教会の正面入口から、カツカツと杖を突きながら初老の男が訪れる。

 彼は教会の中にいる住人をぐるりと見渡すと、気難しい表情で眉間にシワを寄せ、口汚く言い放った。

 

「あの余所者め、やはり嘘つきだな。診療所ではなくここに皆いるじゃあないか……」

 

 ほれみたことか、俺は騙されなかったぞ。己に言い聞かせるように言葉を吐きつけた男は、じっと彼の様子を見つめていたいくつかの視線に気がついた。赤いボロ衣の男には汚らしいモノを見るような視線を向け、アリアンナと少女には忌々しいといった表情をし、頭を抱えて椅子に座る老婆には多分の同情と優越感をないまぜにした視線を送る。

 そして観察も十分に行ったと思ったのか、男は彫像が祀られてあった台座に腰掛け、くぼみに身体がはまるようにして背中を預けた。傍若無人な振る舞いを、行動と言葉で体現したかのような彼は、今度はブツブツとつぶやきながら目を伏せる。

 

「…なんか、感じ悪いな」

 

 ぶすっとした表情のアヴァがつぶやけば、聞こえていたのか男はキッと視線を向けて威嚇するようにアヴァをみた。だが彼女は男の視線には期待するような態度を出さず、じとりと見つめ返す。間が悪いと感じたか、男は何も言わずに頭を掻きむしり、再び背を壁に預けて目を閉じた。

 

「やっとの思いで辿り着いたのよ、きっと疲れてるんでしょうね」

 

 娼婦業をやっている家の近くに住んでいることもあって、その偏屈さと理由を知っているアリアンナは、憐れむような口調でアヴァを諭した。初老の男とて、以前の夜までは口調は荒いながらも人思いのよき隣人であったのだ。

 ただ、獣狩の夜を堺に彼も又、余人には預かりしれぬ何かを失った。ソレだけの話だ。事情はアヴァとなんら変わりはない。歪むか、立ち上がるか、それとも伏せるか。その選択肢から歪みを取ったに過ぎぬ。

 

 ほう、と香の煙が風を受けた。

 

「あぁ……」

 

 赤衣の男が焦るように声を上げた。

 

「赤ずきんさん、どうしたの?」

「その、なんだ……その、さ。まだ結構保つんだ、でもこのままだと香が」

 

 自らの背後にある、香の残りを確認しながら赤衣の男は焦りを見せる。そして彼の手伝いをしていたからこそ、アヴァは赤衣の男の言わんとすることがわかった。

 あと数時間もすれば香が無くなる。

 

 通常の夜ならば、まだいいだろう。明日の朝に医療教会の者から調達すればよいのだから。だが今宵は獣狩の夜。あまりに長すぎるこの夜が、あと数時間で終わるなどとはこの場の誰も思っていない。

 数時間。それはきっと、5時間にも満たぬ短い時間だ。ならばそれまでにすることは、わかりきっていた。

 

 アヴァは意を決したように立ち上がると、赤ずきんの横を通り過ぎようとする。

 

「待ちなさい」

「まっておくれ」

 

 当然だが、良識を持ち合わせた二人に呼び止められる。

 赤衣の男は声が重なったことに罪悪感を感じているのか、所在なさげに手を動かしたあと、おそらく同じことを言おうとしているアリアンナに言葉を譲った。

 

「外に行って香を持ってくるつもりでしょ?」

「…うん」

「だめよ。危険すぎるわ。香なら、また狩人さんが来たときにでも頼めばいいのよ」

 

 狩人ならば、この夜を出たとしても問題はない。

 死んだとて、悪い夢のようなもので終わり、また悪夢のようなこの街を巡るのだ。詳しい事情は知らずとも、今宵のために選ばれた月の香の狩人ならば、頼んだところで断ることも無いだろう。

 

 だがアリアンナの思いは届かない。

 なぜなら、アヴァとて此度の行動は単なる親切心ではないのだ。

 

 無力な己を感じることが嫌だから。

 たったそれだけの、現実逃避。

 

「ダメ。私は、私はなにかしないと……他の家になら、うん、きっと、香も残ってるはず」

 

 思い起こすのは自宅の近くの住人だ。夜通し狂いきった老婆や、自分が家にこもっている間に食い殺されたのであろう隣人の音。僅かな狂気に負けじと奮い立たせた自我、確かに彼女の中で暴走していた。

 

「待ちなさい! 獣相手じゃあなたは何も出来ないわ!」

「あいつらを倒す武器なら、あるよ」

「そういう問題じゃ」

 

 これ以上、アリアンナの声を聞くことで決意が鈍ると感じたのか、アヴァは胸元に抱いたブローチを強く握ってオドン教会の地下墓地方面へと続く書斎の小部屋へと駆け出した。乱暴に蹴り飛ばされた、いくつかの本が散らかる音が扉の向こうから聞こえてくる。

 やがて木のハシゴがしばらく軋み、静寂がオドン教会へと訪れた。

 

 アリアンナは目元を抑えながら脱力して椅子に深く腰を落とし、赤衣の男は何事かをつぶやきながら両手で顔を覆って体を丸くする。

 

 ヤーナムの狂気とは猟奇に限ったことではない。時に蛮勇もまた、含まれるのだ。

 

 

 

 

 

 地下墓地には、見覚えのある黒帽子と白装束が落ちている。

 見慣れた父親の狩装束であるそれを拾い、獣の血と匂いにまみれたそれをアヴァは身にまとった。獣である以上嗅覚は発達している。だがこの狩装束はそうした獣の血を浴びてなお、獣には気づかれにくく、また攻撃を受け流すに適した製法にて編まれている。

 

 父親の狩りの話を子守唄代わりに聞いていたアヴァは、優れた狩人である父親に憧れると同時、いつしか父の仕事を手伝いたいと、その手の知識を付けていた。そして血の繋がりと残されたぬくもりに縋りたいという残された少女としての感情から、遺品となったそれらに手を伸ばしたのだ。

 

 ついで、手を伸ばしたのは祖父のように慕っていた父親の狩り仲間、ヘンリックが手にしていた獣狩の短銃である。なんという運命か、折り重なるようにして死に場所を同じくしたヘンリックが恭也に討たれたことを知っていたアヴァは、同時に彼の手にしていた武器が散らばっている事も想定していた。そして、思惑通りに銃を手に入れた。

 

 ノコギリ鉈にも視線を向けるが、それを取り扱うだけの筋力が足りていない。故に反動は抑えきれずとも、一時とて、獣を退けるに足る短銃こそが今のアヴァには相応しい。

 

 憎しみではなく、理性で己の武器を手にとった彼女は、脈打つ心臓が早まる緊張を感じながらも、必死に住宅街へと向かった。幸い街のエレベーターは起動しており、彼女を自宅がある住宅地帯へと導くには十分な役割を果たす。

 

 だが、順調なのはそこまでだ。

 

「………いる、よね」

 

 疾患者が成り果てる黒毛の獣は居ない。だが、その理性を瞳に蕩けさせた民衆が新たに湧き出ていた。同じく理性を獣に落とした同輩は決して襲わず、仲間意識を持って健常なる人を襲う気狂いの初期症状。そして同時に手遅れの民。

 中には、アヴァが見知った顔がある。当然だろう、なぜならここは、彼女が暮らしていた街なのだ。だが到るところに人ではありえぬ体毛を伸ばし、時にはその片腕が疾患者の末期症状じみて2倍ほどに長く伸び、狂気的に呪詛をつぶやき続ける姿に、アヴァの記憶の中で生きている人の様相は何一つとして感じられぬ。

 

 獣だ。あれはもはや理知の光すらなくした獣。

 

 ヤーナムにおいては珍しいことではない。だが納得できるはずもないのだ。

 

 それを語るのがアヴァの悔しさと恐怖にまみれた表情である。ほんの前日までは朗らかな笑顔で接してくれた隣人は、今や松明を翳し、サーベルを片手に呪詛と唸り声ばかりを漏らすモノに成り果てた。少女が、到底耐えきれるものではないのだ。

 

 だが目的地は、その知人の家と今決まった。

 その知人はいつも、家の鍵を外の鉢植えの下に隠している。そして臆病なほどに慎重だからこそ、香はいつも地下室に溜め込んでいる。此度の目的地としては最適だ。

 

 アヴァの短銃を握る手の力が強まった。手汗でじっとりと濡れたグリップの固く冷たい感触が彼女の意識を引き戻した。

 

「大丈夫」

 

 そんなわけがないのに、人は自らの精神を落ち着かせるために自らを騙す。純真無垢な少女であれ、それは変わらないらしい。アヴァはひっそりと息を殺し、よたよたと拙い足取りで中央広場に向かっていった知人を見送ると、すばやくその前庭にある鉢植えへと向かった。

 そして彼女が考えていたとおり、獣になったからこそ、捨て置かれたのだろう。鍵は簡単に手に入り、くるりと鍵は360度右に回り、カチャリと施錠を伝えてきた。

 

「……」

 

 香の匂いは無い。煌々とゆらめくランプの炎が怪しく玄関を照らしている。お邪魔します、といつもどおりに言おうとして、アヴァは咄嗟に己の手で口をふさいだ。

 

 左右を見渡す。誰も居ない。確か家族はみないなくなっていたはず。

 

 途端、彼女は緊張のあまり心臓の鼓動が早くなる。ここから先、あの獣の知人が戻ってくることも考えられるのだ。そうなれば、この狭い家の中で上手く逃げるのは難しいだろう。最悪の想像ばかりが頭の中を巡る中、アヴァはいつしか、家の地下倉庫となる開いた床の前まで辿り着いていた。

 

 何度も見渡すが、やはり何の気配も感じられない。

 ほっと息をつく。

 

「……あった」

 

 開いた倉庫には獣避けの香の元となる、白い香木がいくつも積み重なっている。獣避けの香の中でも、相当に長持ちするものだ。これを20ほど失敬するだけで、オドン教会の香は十全とも言えるだろう。

 アヴァは、顔が綻んでいくのを実感していた。これで、私にも何かをなせたという証明ができる。私はなすことのできる人間なのだ。お父さんとお母さんが居なくても、ちゃんと、立てるような。

 

「会いたいよぉ、お父さん。お母さん」

 

 蓋をしていた感情が、また溢れだした。それでも、だけども、泣いてばかりではいられない。こんな場所で立ち止まっては、それは自分の命が失われることと同義であるのだから。

 ここで止まれば、自分の命が助かった意味がない。涙を服で拭って、香木を大きな布にくるんで体に巻いた。乾燥した白い香木のようなそれの重さはあまり無いが、まきついて膨らんだ背中から伝わる、ゴロゴロとしたでっぱった不安定さが、どことなく不安を煽る。

 

 行きはよいよい帰りは怖い。とは彼女が知る由も無いが、有名な言葉。されど先程の高揚が不安な心をごまかすように覆い隠しているため、彼女はついぞ気がつくことが出来なかった。

 己の命を容易く奪うことができる存在が、すぐそこにまで迫っていることに。

 

 アヴァが知人だったものの家を出た瞬間、ふっと辺りが暗くなる。

 月の光を雲が覆い隠したのだろうか? などと、彼女の甘い考えはすぐさま痛みとなって襲いかかってきた。

 

 肩口から、熱い痛みが襲いかかってくる。刺さっていたのはサーベル。振り下ろしたのは、知人だったもの。病の疾患者。

 

「あ、ぁ」

 

 サーベルが引き抜かれたその瞬間、全てを理解したアヴァは先程までの蛮勇もなにもかもを投げ出し、

 

「いやぁあぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 ただ叫び逃げ出すことしか出来なかった。

 

「痛い、いたい、あああ、あう、ああ、いやあ!」

 

 痛みがで涙が止まらない。手にしていたヘンリック(おじいちゃん)の銃を構えることも忘れて、その身一つでただただ獣に満ちた街を駆け出した。じくじくと痛む肩口から、どくどくと滲む血が、彼女の肩口から、もう腰のあたりまで白い服を酷く真っ赤に染め上げている。父親の狩装束のおかげで切断にまでは至らないが、サーベルの刃が深く切り込まれた左腕は、もうろくに力を入れることも出来ないほどの痛みに溢れている。

 

 ダラダラと流れ、手の先から飛沫として撒き散らされる濃厚な生き血の匂いは、やがて追いかける知人の獣だけでなく、周囲の鼻を「いい匂い」としてくすぐっている。一人、二人、三人。彼女の追跡者は次第にただただ増えていく。

 

 もう痛みも何もかも投げ出して、背後から聞こえる獣の民衆の怨嗟の声が、捕まれば逃げる希望すらなく殺される事実を伝えてくる。アヴァの頭の中は、ただただ逃げなければならないという使命感と、怖い痛いという単純な一言ばかりが埋め尽くしていく。

 

「けて」

 

 自分がいかに愚かであったのか。無意識が語りかけてくる。

 自分がいかに無力であるのか、疲労する足がもつれて囁いてくる。

 

「たすけて」

 

 アヴァの命運はここに尽きた。

 もとより、理性と身体能力を失った、只人の少女が獣に対抗する術など、獣という恐ろしい自然の摂理より逃れる術など無かったのだ。彼女ができるのは、己が被食者となるまでのほんの僅かな間、がむしゃらに逃げ回って獣の嗜虐心を満たすことだけ。そして、物理的にその空腹を満たすことだけ。

 

 失せろ、失せろ、呪われた獣め、全部お前のせいだ、呪いだ、呪いだ。

 民衆の口から漏れるのは、アヴァこそが叫びたい言葉ばかり。そして、彼女の心を縛り付ける呪いの言葉。がんじがらめに心を縛り付けられた彼女は、破裂しそうなほどに早鐘を打つ心臓が限界を伝えてくる。

 

 やがて無茶な運動と、流れ出る血が命の限界を伝える。

 

 アヴァはその場に無様に転がり、背中に下げていた包みから、香木が彼女の前に転がり落ちた。彼女の無意味をあざ笑うかのように。

 

「助けてぇ!」

 

 身をすくませ、必死に叫んだ言葉の上。

 サーベルが月の光を受け、何もなせぬ少女へと振り下ろされた。




須田くんはオドン教会で会話してる頃です。

4/17追記 サブタイトル変更しました

▲ページの一番上に飛ぶ
Twitterで読了報告する
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。