「電通の名前が出るたびに澱む芥」を読み解く
またもや「電通」がらみの「芥の澱み」が浮かんでいる。
新型コロナウイルス対策の持続化給付金の手続き業務をめぐり、経済産業省から委託された民間団体「サービスデザイン推進協議会」が、業務の大部分を電通に再委託していたことが明らかになったことで、報道やネットがザワツイている。
経産省が給付金の業務委託先として、一般競争入札を経て同協議会と769億円で契約。その大部分を電通が749億円で再び請け負ったという「分かりやすい裏図式」である。
経産省と協議会、電通の関係や取引の不透明性が問題になっているのだが、昭和のあの暗黒時代を知る世代にとっては、「またか!」とGERDの苦い胃液を飲み込んでしまうのである。
「安倍と電通」という戦後の「負の図式」をあらためて読み解いてみよう。
この問題が浮かび上がるたびに澱んでくるのが、戦後の「自由民主党」の結成資金となった「巨額麻薬資金」の存在である。
これは、A級戦犯の岸信介や笹川良一が首魁となり、里見甫らが「昭和通商」によって行った朝鮮・満洲のアヘン販売による巨額麻薬資金(M資金)である。
さらに、731部隊の人体実験資金の3兆円の一部やCIAからの資金提供をも含め、「自由民主党の結成資金」と成ったのが、この「巨額麻薬資金」である。
この巨額麻薬資金の胴元が「昭和通商株式会社」という日本陸軍主導で設立された「軍需国策会社」である。
「昭和通商」の前身である「泰平組合」は、明治41年6月に三井物産、大倉商事、高田商会の3社が共同出資して設立され、主に余剰となった軍の旧式小銃・火砲の払い下げを受けて中国・タイ等に輸出する事を目的とした組合だった。
第一次大戦では、同組合を通じて連合国のイギリス・ロシアにも100万挺を越える小銃を輸出したといわれている。
莫大な収益を得た同組合は、大倉財閥と懇意だった大隈重信内閣が発した対華21ヶ条要求中にも、日本製兵器購入を強要する一項を入れさせるなど、政治的な活動も活発に行っていた。
しかし大戦が終了すると同組合の輸出は伸び悩みはじめ、昭和14年4月には高田商会が抜け、航空機・装甲車輌などを製造していた三菱重工を傘下に持つ三菱商事が新たに加入して、昭和通商が設立されたのである。
昭和通商は、1939年(昭和14年)に陸軍省軍事課長の岩畔豪雄大佐の主導で設立され、業務上の指導・監督権や人事権を陸軍省が一手に握り、陸軍の施策に準じて商行為を行う半官半民的な商社だった。
岸信介は第二次世界大戦中、中国大陸で満州帝国国務院に勤務する一方、里見甫の経営するこの「昭和通商」で、吉田茂等と共に「アヘン密売」に従事し、満州帝国建設資金を調達していたのである。
福家は戦後、里見のアヘン資金を日本の政界に持ち込むエージェントとして、岸首相や福田赳夫首相、さらに美濃部亮吉東京都知事の選挙資金を拠出している。
日本統治軍GHQの「防諜レポート」には、里見と福家が密談し岸に政界工作資金を提供している点について、「要監視、注意」と報告されている。
日本ではまだ無名であった「岸」は、重光葵外相と共に訪米しダレス国務長官と会談し、雑誌「ニューズウィーク」の表紙を飾っている。
岸は、ボスの里見からブッシュのボス、ロックフェラーが2大政党制度を強く主張し米国で民主党の絶大な支援者である事を教えられていた。
岸は、ロックフェラーの「お墨付き」を貰い、その後「英語語学教師」ニューズウィーク日本支局長オンプトン・パケナムを通して、24時間、ロックフェラーとブッシュに監視される事になる。
1965年、里見が亡くなると、里見の資金を岸が引き継ぎ、その岸の人脈と金脈を引き継ぎ首相となったのが、2020年総辞職した安倍晋三である。 ※2021.9.19改定
三井、三菱といった大財閥に資金を出資させたのが、右翼の大物「里見甫」。
この里見甫こそ、「電通」が今のような広告会社になったきっかけを作った主要人物とされる。
こうした背景のもと、1947年「連合国軍最高司令官総司令部」により公職追放された上田碩三の後任として吉田秀雄が「電通」第4代社長に就任。
広告取引システムの近代化に努め、軍隊的な社則「鬼十則」を作ったことは有名な話である。
バブル時代、多くの会社員がこの「鬼十則」に洗脳され、仕事のバイブルのようにして滅私奉公していたのである。
共同幻想が解けた今となっては、時代錯誤のなにものでもなく滑稽ですらある。
そして、2016年厚生労働省が労働基準法違反の疑いで、電通本社と3支社に一斉に強制捜査に入った事件後、この「鬼十則」は表舞台から姿を消した。
その原因は、過労自殺した女性新入社員が労災認定されたことを受け、東京労働局などが電通の本支社や主要子会社に「臨検監督」の任意立入調査を実施し、その結果、電通が管理する社員の労働時間と実際の出退勤記録が整合しない部署があることが公表されたことにある。
東京・汐留の本社と関西支社、中部支社、京都支社に対し、「過特」(過重労働撲滅特別対策班)のメンバーらが強制捜査に入った事件は記憶に新しい。
その他、1991年にも入社2年目の男性社員(当時24)が長時間労働が原因で自殺。
2014~15年には、社員に違法な長時間労働をさせたとして、本支社が相次いで労基署から是正勧告を受けている。
労務管理を担当する幹部も、長時間労働が常態化している実情を把握しながらも、さらなるノルマ漬けによる「パワハラ」が常態化していたことは否めない。
これもバブル時代を代表する事件のひとつである。
☆☆☆GGのつぶやき
殺人的長時間残業とパワハラが蔓延したことは、「電通」の生い立ちと政界との濃密な癒着体質の中にある。
電通が人材派遣会社パソナとITアウトソーシング会社トランス・コスモスによって設立した団体「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」を隠れ蓑としていたことは許しがたい。
「電通による電通のための東京五輪」に代表されるように、国民から強引にむしり取る、まさに「搾取する裏構造」が透けてみえた「犯罪」と言っても過言ではあるまい。
新コロナも金儲けの餌にするとは、「電通」も落ちるところまで落ちたとしかいいようがない。