――画業生活15周年おめでとうございます。数多くのグルメ漫画を手掛けてきた魚乃目先生ですが、これまでに描かれてきた食の絵はどれも美味しそうなものばかり。美味しそうに描く秘訣はあるんでしょうか?
口に入れたときの歯ざわり、舌ざわりを想像して描きますかね。「これどんな食感がするんだろう」って思いながら描くと、自分としても食欲が湧いてくるんですよ。
だから漫画では実物の食べ物よりも大きく、わかりやすく描こうとしていますね。たとえば米を描くときは、米粒を大きくするなどの工夫をしています。
米粒を実物通りに描いてしまうと小さくなりすぎてしまって、食感が想像しづらくなってしまうので。
「戦争めし」「車窓のグルメ」…食にこだわりがない魚乃目三太が15年間マンガめしを描き続ける理由
「食べることは生きること」をモットーに、人と食を結び付ける漫画を発表してきた漫画家・魚乃目三太氏。今年で画業生活15周年を迎え、イラスト集『魚乃目三太のマンガめし画帖』(玄光社)が8月16日に刊行された魚乃目氏が語る人と食の関係とは?
『戦争めし』連載のきっかけとなった一枚の絵
提供/yc COMICS『戦争めし』(秋田書店)(1)
――2018年にNHK BSプレミアムでドラマ化もされた『戦争めし』。戦争を扱う漫画や映画は数あれど、戦時中の食にフォーカスした作品は非常に稀有だと思うのですが、きっかけは?
漫画の仕事で食えなくなり、新しい連載案を企画していたときにふとテレビをつけると太平洋戦争のインパール作戦経験者の方が描いた一枚の絵が写されていたんです。
それは、やせ細って無精ひげを生やした上半身裸の軍人が飯盒(はんごう)を持っている絵でした。
なんか引っかかったんですよね。なんで飯盒だけを持って歩き回っているのか、と不思議に思ったんです。
調べてみると、当時の日本軍は一人ひとりに戦地で自炊することを推奨していたことがわかりました。世界的にも戦地で兵隊が各々自炊するのは日本だけだったらしく、そのために飯盒を持参していたとのこと。飯盒が壊れてお米が炊けなくなってしまった……なんて話もあったみたいです。
そして、その日がたまたま終戦記念日だったのもあり、『戦争めし』のアイデアがひらめきました。
提供/『戦争めし』(秋田書店)「軍隊カーストめし」より、1コマ
――終戦の日が『戦争めし』のきっかけだったとは感慨深いです。
ただ、戦争というセンシティブなテーマだったので、どの出版社に持ち込んでもお断りされてしまいましたね。
何度もネームを描いては、ボツになる繰り返しで、ネームは溜まるばかり。しかし、終戦70年という節目のタイミングで、2015年に秋田書店さんで描かせてもらうことになったんです。
『戦争めし』は、戦地での玉砕という暗い話から、空襲下にもかかわらず自分で魚を寿司屋に持ち込んで大将に寿司を握ってもらうというこぼれ話まで、話のテンションがバラバラ。
それって実はネームをボツにされる度にネタの方向性を変えていたからなんですよ。結果的にエピソードごとの振り幅が広い、バラエティー豊かな内容に仕上げることが出来たんだと思います。
提供/『戦争めし』(秋田書店)「戦火のにぎり寿司」より、1コマ
――次第に戦争経験者の方にインタビューをした話も増えていきましたね。お話を聞いてきたなかで一番印象的だった方は?
戦争の語り部さんに取材したことがあったんですが、基本的にあの人たちは何十年も戦争のことについて語ってきた方々なので喋りが流暢で話が本当にお上手。
しかし、僕が「戦争中に何を食べていましたか?」と聞くと、急に言葉を詰まらせたんです。
たぶん、戦時中の食についてわざわざ掘り下げて聞かれたことがほとんどないからだと思うんですけど、遠い昔の記憶をたどって思い出そうとしてくださるので、そのときってなんとなく戦争当時の若かりし頃の表情に戻っているように見えるんです。といってもそれは嫌な思い出というわけじゃなさそうで。
戦争自体には辛い記憶ばかりだったと思うんですけど、そんなときだからこそ食事が唯一の楽しみになっていたのかもしれないですね。
語り部さんが「これだけは旨かった」と回想する姿に、どの時代でも“ごはんを食べる”という人間的な喜びは存在するんだと、目頭が熱くなりましたね。
新着記事
宮崎勤が奪った幼い命…被害者家族が明かした悲痛な胸の内。「行方不明になったAちゃんのポスターを見た娘は『かわいそうだね』と言っていました。まさか、その子が同じようにいなくなるなんて…」#1
昭和・平成 闇の事件簿1〜東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件発生から35年~
「勇気をもって、暗く苦しいほうへ進め」佐藤雫×今村翔吾 『花散るまえに』対談
危惧されるAIの進化と世界が危険視する“ゲノムテクノロジー”。「パンデミックをもたらす既存ウイルスの再形成」など、人類が滅亡する“確率”を上げる技術の行方
『人類滅亡2つのシナリオ』#3
【こち亀】空き巣などの検挙率1位の派出所、犯人逮捕のヒケツは“落とし物のケータイ”
Apple初のカーボンニュートラル製品「Apple Watch Series 9」と「Apple Watch Ultra 2」をひと足先に体験! 指先タップだけで操作できる画期的機能の実用性は?
Hermèsモデルのレザーバンドが廃止に
「“デザインベビー”を量産」ゲノムテクノロジーの進歩がもたらす本当は怖い未来…遺伝子操作で生まれ持っての才能の有利不利をなくすことは本当に幸せなのか?
『人類滅亡2つのシナリオ』#2
木原官房副長官は党に“避難”? 第2次岸田再改造内閣「内向き人事」の全内幕
「学校に来られないヤツは来なくていい」担任から“いない者”扱いされ不登校…就職でもつまずき、ひきこもりに。親に「働かないなら家から出ていけ!」と言われ、遂に…
ルポ〈ひきこもりからの脱出〉#1
「ひきこもりが社会に出てくる時は大抵、もめます」不登校、就活の失敗、リストラ、母親の介護疲れで4度ひきこもりを繰り返した男性が、それでも「最終的にものを言うのは“人とのつながり”」といえるワケ
ルポ〈ひきこもりからの脱出〉#2
パンドラの箱を開けてしまった人類…米中共同研究がサルとヒトの「キメラ」を作製。改変された遺伝子を注射する世界初の人体実験も…拡大するバイオテクノロジーのDIY化
『人類滅亡2つのシナリオ』#1