【コラム】海外通信員
ワクワクしない?ネイマールのサウジアラビア移籍
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今から30年前、Jリーグが創設された時、欧州や南米のスター選手たちが多額の報酬で集められた。一度引退をして、復帰した選手もいた。それを揶揄してベテランにとって最後の稼ぎをする『年金リーグ』と言われることもあった。
中国リーグも一時、豊富な資金力で欧州リーグからブラジル人のスター選手を移籍させていた。オスカール、フッキ、パウリーニョなどセレソンの選手たちも選手生命の終盤に中国リーグで大きな収入を得ることができた。
その昔なら31歳は、サッカー選手としてかなり終盤に差し掛かったころの年齢だった。終盤の最後の花火的な期待感もそれなりに大きかった。しかし、今は栄養的にも、医学的にもフィジカルコンディションを整え、ケアし、30代後半までプレーする選手がたくさんいる時代になった。そう考えれば31歳というのは、まだリタイア前とは言えないだろう。
ネイマールが31歳でサウジアラビアリーグにというのは、ワクワクするかしないかといえば、正直言えばしない方が大きい。
まだまだ、トップレベルでやれるだろう?最後のお金稼ぎにはまだ早い。まだ、世界一を目指したっていいじゃないか。どうも、不完全燃焼的なムードが漂う。
ネイマールに付けられた値段を払えるクラブはアル・ヒラルだった。移籍金は9000万ユーロ(約143億円)に、出来高を含むと1億ユーロ(約159億円)。
ネイマールが受け取る年俸(推定)は、2年間で3億2000万ユーロ(約508億円)。
金銭的には大成功。
そりゃあ、欧州のビッグクラブに行けるものなら行きたかっただろう。まだまだ、第一線でやれるだけの実力もスター性も持っている。しかし、PSGが首を縦に振るだけの値段を欧州のクラブは払おうとしなかった。払えなかったのが現実だ。
2019年の時点で、PSGは27歳のネイマールを放出することをイエスと言っていた。もちろん、投資した分の回収可能な金額ならという条件で。当時、2年間だけで、約4700万ユーロをネイマールに費やしていた。バルセロナへの違約金、税金、サラリーもろもろに。
それだけの金額を払ってネイマールを獲得してくれるクラブは無かったため、ネイマールはPSGに残り続けたが、結局ムバッペ、メッシとスター選手を揃えながらも、チャンピオンズリーグは優勝に手が届かなかった。
ネイマールとPSGの思惑はCLの優勝という悲願達成で一致していたはずなのに、その目的も果たせず、マンネリ化したネイマールのPSGライフはもう終わりに近づいていたのは明らかだった。問題は、いつも同じだった。ネイマールという株に投資した分のリターンだ。
ネイマールはサントスにいた時から株だった。株式の株だ。
投資家や企業がネイマールという株に対して期待の高値を付け、相場が動くたびに、配当を得てきた。マネタイズのためにはネイマールは移籍をしなければいけないのだ。
欧州では高い配当を出せなくても、オイルマネーがうなっている中東ではそれが可能だった。
今回の移籍マーケットで、ネイマールは欧州のビッグクラブたち、バイエルン・ミュンヘン、レアル・マドリー、バルセロナ、チェルシー、マンチェスターCなどと交渉をしていたと言われ、特にバルサとの交渉がニュースになったが、まとまらず。
こうなると、バルサを出て行ったことが間違いだったのか?
いや、そもそもサントスからバルサでなく、14歳に初めて訪問して良好な関係を保っていたレアル・マドリーに行っていた方が良かったのか。
ネイマールの決断は、本人よりも常にネイマールという株に対する投資とリターンが重要視された。それは元々、ネイマールは『ネイマール』という登録商標であり、商品であり、投資の対象であるから。
ネイマールのことを早く大人になれとヤジを飛ばす人たちがいるが、それは父親の存在が大きいこともある。父ネイマール(同じ名前)はネイマールが成功を収める前から常に「ネイマールはひとつの会社」と言っていた。フロントとしてピッチでボールを蹴るのはネイマール本人だが、ミドルオフィス、バックオフィスには社員を抱えて収益を上げないといけない。元々は小さな家族経営の会社から、次第に大きくなり、今では一大ビジネスとして関係する企業、関わる人たちの数は膨大だ。
ネイマールのサウジアラビア行きは、サウジアラビアのサッカーファンはワクワクするだろう。しかし、多くのサッカーファンにはワクワクが感じられない。お金のためだと批判をする人は多い。
しかし、ネイマール株式会社としては負債を抱えることなく、売る方も買う方もハッピーと大成功なのだ。
でも、やっぱり寂しい感じがするのは私だけではないだろう。(大野美夏=サンパウロ通信員)
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