「Unity」の移行先の候補になるゲームエンジンまとめ
ゲームエンジンのUnityが2023年9月に「ダウンロードやインストールの回数に応じて課金する」と発表した問題では、多くのゲーム関係者が続々と怒りや失望の声を上げており、二度とUnityでゲームを開発しないと表明する開発者も少なくありません。ゲーム開発環境の移行先を求める声に応じて、ゲームエンジンの研究開発を専門とするプログラマーであるケーシー・ムラトリ氏が、ゲーム開発者から評判のいいゲームエンジンをまとめました。
Comments - Game Development Post-Unity - by Casey Muratori
https://www.computerenhance.com/p/game-development-post-unity/comments
ゲームエンジンの開発者であるムラトリ氏は、ゲーム開発現場のトレンドを追う中で、2022年ごろから「Unityとゲーム開発者の関係は致命的に悪化するだろう」と予見していたとのこと。なぜなら、Unityが四半期ごとに公開している決算報告からは、Unityの財務状況が芳しくないことや、収益に占めるゲームエンジンの利益は半分以下で収益の大半が広告に依存していることなどの実態が如実にうかがえたからです。
そんな中で発表された料金体系の大きな見直しは、Unityに依存していたゲームクリエイター、特にインディーゲームの開発者に大きな動揺をもたらしました。
ムラトリ氏の元には、移行先としてふさわしいゲームエンジンは何かの質問が舞い込むようになりましたが、ゲームエンジンの開発者であってゲームエンジンの利用者ではないムラトリ氏にはアドバイスができません。そこで、ムラトリ氏は逆にUnityに代わるゲームエンジンについての意見を募集し、その中で言及が多かったゲームエンジンをまとめることにしました。
◆Godot
ムラトリ氏によると、GodotはUnityの代替として最も多く言及されているとのこと。次に挙げるUnreal Engineのようなハイエンドなエンジンの機能にはあまり重点を置いておらず、初心者がすぐに使えることに注力していることが特徴です。一方、Unityに比べてバグが多く機能も不足しているため「まだその域に達していない」と評価されており、プロのゲーム開発者が必要とする家庭用ゲーム機向けのサポートも不足しているという声が多いそうです。
◆Unreal Engine
1年間にリリースされる大作のかなりの割合がUnreal Engineを採用しており、ムラトリ氏は「有名なので紹介するまでもないでしょう」とコメントしています。大作の開発に求められるNanite、Lumen、Metahumanのような機能を多く提供していますが、その複雑さのために使い始める際のハードルが高く、技術的な専門的知識を多く必要とするというのが一般的な不満とされています。
なお、Unreal Engineには元Unityユーザー向けのドキュメントが用意されています。
by Joshua | Ezzell
◆Defold
Defoldは上記の2つ同じくらい言及されていたとのこと。2Dゲームやモバイルゲームを開発する場合はチェックしておくといいエンジンとよく言われている一方、3Dゲームには不向きとされています。
◆RayLib
RayLibはゲームエンジンそのものではなく、C++のようなネイティブ言語でゲームを素早く構築するのに使えるライブラリ群です。
◆Open 3D Engine
Open 3D Engineは、CryEngineをベースにAmazonが開発したゲームエンジンである「Lumberyard」がオープンソース化されたものです。そのため、ムラトリ氏は「開発元であるCryTekが好きなら興味がわくかもしれません。ただし、高度に専門化された大作向けのエンジンの子孫なので、学習曲線がきついおそれがあります」と指摘しました。
◆GameMaker
GameMakerは2Dゲームの開発者には不動の人気を誇るゲームエンジンで、「Undertale」など有名な2Dゲームの多くがGameMakerで開発されました。そのため、3Dや派手なライティングを必要としないなら手堅い選択肢になる一方で、技術的な要求が高いゲームを開発しようとするとすぐに限界に達してしまうとのことです。
by steamXO
◆Unigine
Unigineはゲームが専門ではありませんが、選択肢としてたびたび名前が挙げられているとのこと。とはいえ、シミュレーター向けに設計されているため、Unityからの移行先としての使い勝手については未知数なところがあるとされています。
◆Bevy
BevyはRustの愛好家から支持されているエンジンで、Rustでゲームをプログラミングしたい人にとっては要チェックです。ただし、完全な編集環境がセットになっているわけではなく、ゲーム自体に編集を加えるための埋め込み可能なツールがいくつか入っているようなので、Unityの統合編集環境から移行する人にはハードルが高いかもしれないとムラトリ氏は述べました。
◆Flax
Flaxは大規模な機能セットが売りで、導入してすぐに統合編集機能が使えるようになるとのこと。ただし、実績が少なくFlaxで開発されたゲームに特筆すべきタイトルがあまりないため、可能性については疑問が残るとされています。
◆Cocos
Cocosは統合開発環境を備えたエンジンで、2009年にリリースされたFarmVilleというゲームの開発に使われたツールと同じ系統のものだとのこと。ムラトリ氏が調べても詳しいことがわかりませんでしたが、記事作成時点でもモバイルゲームに特化したエンジンとして使われているそうです。
◆Stride
StrideはParadoxというエンジンがXenkoと改名され、その後Strideに改められたゲームエンジンです。Unityと同様にC#に特化したエンジンで、完全な編集環境が付属しているのが特徴とのこと。
◆Monogame
Monogameは「Stardew Valley」で知られるMicrosoft XNAを前身としたゲーム開発者向けSDKで、C#開発者からの支持が厚いとのこと。
◆その他
上記のエンジンはいずれも2回以上言及されたエンジンですが、ほかにも「Construct」「Ogre3D」「Solar2D」「HARFANG 3D」「CryEngine」「FNA」「libGDX」「LÖVE」「Fyrox」「C4Engine」「Hazel」「Wicked」「TelluSim」「heaps.io」の名前も挙げられました。
また、ソーシャルニュースサイト・Hacker NewsではBittyというゲームエンジンが話題になっていました。
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