NHKの実態とはどのようなものか。元NHK職員の暗部ちゃんは「NHKの信頼の根源ともいえる緊急報道の現場が崩壊している。この夏の豪雨災害でも、第一報が遅れるばかりか、映像が入ってもお天気カメラや視聴者提供映像ばかりの放送が相次いだ。その背景には、前田晃伸前会長の『人事制度改革』がある」という――。
日本放送協会(NHK)放送センターに掲げられたロゴマーク=2023年6月7日、東京都渋谷区
写真=時事通信フォト
日本放送協会(NHK)放送センターに掲げられたロゴマーク=2023年6月7日、東京都渋谷区

NHK「おはよう日本」の異変

「地震があったら何はともあれNHKをつける」

地震に限らず、災害や大事件・大事故の折にはまずNHKを見るという行動習慣が染み付いた方は、きっと多いでしょう。緊急報道はNHKの看板商品ですが、そのクオリティがこの1年間に急激に低下しています。

特に顕著なのは「おはよう日本」です。8月17日(木)の放送では、和歌山から上陸した台風7号が全国で豪雨災害をもたらしている最中だったにも関わらず、現在進行形の災害の報道はほとんど扱われませんでした。

代わりに放送されたのは、豪雨災害とセットにするのはご法度の“水のアクティビティ”。レッドブル・クリフダイビング・ワールドシリーズという、宮崎の観光地で行われた飛び込み大会の宣伝色が強いVTRでした。これは、NHK内では「ヒマネタ」と呼ばれる類の緊急性の低いニュースで、以前なら災害時には放送を取りやめて延期するのが当然でした。

異常な放送は「おはよう日本」だけではありません。この他にも全国各地での緊急報道を見ていると、NHKの独自取材映像やリポートは減少していると私は感じています。放送されるのは、国土交通省や自治体から提供された河川カメラの映像や、視聴者からの投稿された映像ばかり。仮にNHKの素材があっても申し訳程度にインサートされた天カメ(お天気カメラ)のロングショットくらいのものです。

崩壊しつつある「緊急報道のNHK」

これまで、緊急報道のおかげで、NHKは安泰だと言われてきました。何かあったらNHKをつける行動習慣が日本人には染み付いているからです。実際、私がNHKのディレクターとして勤務していた15年あまりの間も、これら緊急報道への対応スキルを磨き、若手に伝承していくことは最重要課題でした。

緊急報道(台風中継)中のニュースセンターの様子。撮影=2014年7月10日
筆者提供
【写真1】緊急報道(台風中継)中のニュースセンターの様子。撮影=2014年7月10日

NHK職員が、ロケVTRで構成されるドキュメンタリーだけでなく、多様な現場からの生中継番組を担当するのは、実は緊急報道のスキルを高めるためでもあります。また、仮に休日だろうと深夜だろうと、震度4以上の地震があれば飛び起きて出局することを習慣化しているのも、全て緊急報道を確かな取材情報と映像で伝えるためです。

この屋台骨が今、崩壊しつつあります。視聴者もこの劣化には敏感です。かつて「おはよう日本」の世帯視聴率は15%近くありましたが、先述の「おはよう日本」(8月17日)の7時台の平均視聴率(世帯)は8%台でした。

豪雨災害だけでなく、ジャニーズやビッグモーターの問題、ウクライナ情勢などで報道への関心が高まる中にあって、私が見たことないほどの低水準でした。緊急事態にあっても、報道が適切になされなければ当然ではあるのですが、この傾向が続けば、「緊急報道のNHK」の看板さえも通用しなくなるのは時間の問題でしょう。

では、一体、なぜ緊急報道さえもが崩壊しているのか? 実は、その最大の要因は、前田晃伸前NHK会長と飼い慣らされたNHK上層部が断行した「人事制度改革」にあります。