4年半勤めた会社を辞めた話

最近新卒入社で入った会社を辞めました。
なんとなく整理のために入社してから辞めるまでを振り返って書いていこうと思います。

勤めてた会社は日本〇産(最近Nid〇cとかに社名変更したやつ)です。
そこで車載製品のメカ設計を担当してました。

ちなみに私がこの会社を一言で表すとしたら、「でかい中小企業」です。

入社から退職までを振り返る

入社~配属

まともな仕事をするまでの流れは、
「事前研修→入社式→配属前研修→配属決定→拠点別研修→配属して仕事」という流れでした。

入社前に事前研修という名で2日ぐらい拘束されたり、事前課題として「入社決意文」とか「会長の出版本の感想文」とか「会長の講義の感想文」とか書かされました。
新卒入社が200人もいるのでどうせ詳細も読んだりしないくせに、しょうもないものを書かせるなぁという感想でした。

研修は合計で3か月くらいありました。
モータに関する専門的な研修をしたりして、良い取り組みだなぁと思う一方、しょうもないマナー講座(キレ芸が得意なマナー講師を呼んで数時間耐久させる苦行)とかもあったので微妙な点もありました。
とは言え、他と比べて研修に力を入れているのは分かったので、ここは好印象でした。

配属~1.5年目くらい

配属先は車載部品のメカ設計になり、同部署に同期は20人くらいいました。
同チームにも2人同期がいて、かなり同期には恵まれてたと思います。
機械系では無い同期も半数以上いました。
機械系出身では無い同期は、そもそもギヤもモータも材料力学も分かっていないので苦労している節はありました。

私の最初の仕事は樹脂部品の耐油性試験の評価でした。
これ設計の仕事か?と思う一方、特に難しい内容でも無かったので、ここでは苦労はしませんでした。

もう少し経って部品の設計を担当し始めたタイミングでも、苦労しつつもこなせてたと思います。

1.5年目~2.5年目くらい

ここら辺から流れが変わった気がします。
同チームにいた同期がなんやかんやあって別チームに散っていって、私の教育担当が別チームに移動したくらいからです。
チームリーダーに直接仕事をレビューしたり、方針相談したりするようになったくらいから仕事がうまくいかなくなりました。

仕事がうまくいかなかった理由を端的にいうと、チームリーダーとの相性が良くなかったのだと思います。

チームリーダーが厳しい人で、アドバイスするというよりも「自分で考えてこい!、本当にちゃんと考えてきたかぁ?」と言うタイプでした。
まあ、厳しい人と言ってしまえばそれまでなのですが、仕事に慣れきっていない自分には、辛かったです。
いろいろ考えてレビューしに行ってもダメ出しをされ、アドバイスを求めてもしっかしした方針を貰えたりはしなかったので、そこでチームリーダーに対して苦手意識がついてしまいました。
苦手意識がついて報連相が滞り、それが原因で余計うまくいかないという負のスパイラルになってました。

私がダメなだけかとも思っていましたが、実際同チームの同期2人もチームリーダーにメンタルブレイクさせられたので、私だけが原因というわけではなかったと思います。

私もメンタルがかなりやられていて、一番酷いときは出社のために家から出たはいいが足が進まず、道中で今日は休む旨を電話して帰宅したことがあるくらいでした。

フォローしておきますが、チームリーダーは技術者としてはクソ優秀で尊敬できる人なのです。未熟な人を育てる能力が無いだけで、リーダーとしても優秀です。

この間の私の評価は5段階中の1~2で最低でした。
まあ、仕事ぶりからしたら妥当かと思います。

2.5年目~3.5年目くらい

ここら辺で転機が来ました。
チーム移動が発生して、そのチームリーダーとは離れることになりました。
恐らく自分が仕事できていなかったのでテコ入れが入ったんだと思います。
新しいチームリーダーになり、今までのような苦手意識が無くなり、報連相がまともに回せるようになって普通になりました。
ここら辺は苦労しつつ、きちんと仕事を回せていたので適度な達成感もあり、良い状態だったかと思います。

この間の私の評価は5段階中の3で、普通に戻った感じです。

3.5年目~退職まで

またここら辺でチームが変わり、上司も変わったりしました。
他部署から来たメンバーが大多数の新興チームとなり、私はその製品の経験年数がチームで2番目に長くなりました。
ここら辺では仕事をうまく回せるようになり、周りもフォローできるようになりました。
製品全体を見渡してコントロールする立場にもなりました。

この間の私の評価は5段階中の4で、うまく仕事できていたと自負しています。

ただ、退職半年前くらいから部署の動きが怪しくなり始めました。

  • 仕事の内容は一切変わらないのに部署名が変わる
  • 部署を変えた理由を役員が説明するが、具体性が無く願望的な話だけしか出てこない(製品にもっと研究的な内容を反映したいから部署を変えたとのことだが、現場の意見としては、「そもそも今の製品開発は予算も納期も工数も成り立ってないのに、その上研究要素をどうやって足すんだよ」って感想しかなかった。)
  • 半年設計してきた製品を作ることなく、それを捨てて要求仕様がまったく固まってない仕事にシフト、お客様の気まぐれで仕様が変わり設計しては捨てるを何度も繰り返す
  • 日程破綻しているのが明確なのに、誰もストップをかけない

みたいなことが発生してメンバーのモチベは地の底まで下がっていきました。
そこらへんが退職を確定させる最後の一押しになりました。

退職理由と会社の良い点・悪い点

退職した理由は詰まるところ、良い点より悪い点が勝ったからです。

下記で記す内容はあくまで自分の部署目線の話で、会社全体に必ずしも適用されるかは分かりませんのでご注意ください。

良い点

<早い段階で製品設計を担当できる点>
配属後半年くらいには1部品の設計担当になっていましたので、かなり仕事を任せられるのは早いと思います。
まあ、これは人がいないから新入社員にもどんどん仕事を振らないと回らないってだけですが、まあ個人的には良い経験値となりました。

特にちゃんと図面を書けるようになったのは良い経験だと思います。
それはドロアーの役割ができるという意味だけではなく、図面に必要な公差が計算検討できるという意味です。

<車載品という厳しい要求の量産製品の設計フローを体験できる点>
車載品って信頼性も量産性もコスト性も要求される厳しい製品なのでそれをどのように作っていくか、というのはかなりためになりました。

  • 試作する前の綿密な机上検討
  • 机上検討で網羅できない場合の実測評価
  • 組み立て性、製造性を考慮した構造設計
  • 不具合の原因解析と対策
  • サプライヤに対して厳密な要求仕様書の作成

などなど、学生ではイメージすらできなかった部分を経験できたことは良かったです。

悪い点

<労働者よりコストカット重視>
一番悪い点はこれですね、これが嫌で私は仕事を辞めました。
いくつか実際にあった例を挙げると、

  • コストカットのため真夏にエアコンを切って、労働者(PC作業者)を32度の部屋の中で労働させる。そのせいで2人倒れるが改善されない。設計部長が改善要求しても得たものは扇風機2台。
  • コストカットのため用務員を削減し、それによって荒れた敷地内の雑草狩りを社員に土日ボランティアさせる
  • コストカットのためにエレベータを4台中2台を止め、食堂の夕食サービスを停止する
  • スクラップとして売るために、不良品とか試作品のモータを各材料別に手作業で分解する(数万円分の人件費を払って数百円の利益を得る作業)
  • 物を買うためには5回の値下げ交渉をする必要があり、そのフォーマットまである
  • 物を気軽に買えないから消耗品管理に厳しく、養生テープを借りる際に用途を聞かれる(いや、テープの用途なんてちょっとした固定とかだよ....。それ300円で買えるものだよ?)
  • 物を気軽に買えないため、破損した道具や持ち込みの個人道具が溢れる。(折れたラジペン、欠けたニッパ、データ移動のための個人USBメモリ、個人で購入したウエスや小袋)
  • 数万円の物を買うために会長(1兆円企業のTOP)の承認が必要で、死ぬほど遅いし手間がかかる

などなど無限にあります。
私が直接体験した特に最悪なものは、

1つ目は、
油作業に使用するウエス(1000円くらい)を購入しようとしたら、なぜ必要なのか、どれくらいの量が必要なのか、どれくらいの値段なのか、を記したパワポを3枚用意させられたうえ、買ってくれませんでした。
俺の仕事に1000円も支払ってくれないのか....その資料を用意する時間のほうがコストかかってるんだけど....と絶望してました。

2つ目は、
設備に過負荷をかけてしまい、測定精度保証ができなくなってしまったので早くメンテナンスしなければならなかった際に、
「10万円の見積もりを貰う」→「5人から値下げ交渉をメンテナンス業者に行う」→「3人くらいの役員クラスに説明と判子リレー」→「会長にまで承認書類を回す」→「会長から値下げが足りんからNGという回答が来る」→「再度値下げ交渉」→「判子リレー」→「会長承認」というフローを踏むことになりました。
時間にして1か月以上もかかりましたし、自分も結構な工数とストレスをかかったうえ、役員クラスの人の時間も拘束したので、100万クラスの損失になっていたかと思います。
支出を嫌うあまりに100倍の人件費を払う会社なんだなぁと実感しました。
これで業務を効率化しろとか言ってるので笑えます。
この件で私はモチベに多大なるダメージが入りました。

<会長が絶対的で、企業文化が宗教じみている>

  • 毎朝、会長が書いた名言集みたいなのを読ませられる
  • 3Q6S(整理整頓とかのやつ)は会社の憲法だから」とか言って理屈を無視してきれいに見せることに工数をかけさせられる(便利にするとか管理しやすくとかではなく、きれいに見せるためにしているところがポイント)。部材を保管するための空箱を管理するために、空箱の保管期限を書いて管理したりする。
  • 会長が書いた本を社員みんなに買わせようとする。しかも普通に個人負担。買ってない人には上司からプッシュされるうえ、全体メールで「まだ〇〇名の人がまだ購入していないので買ってください」みたいなのが1か月間くらい回ってきてた。

もう宗教レベルになっていて、こういうことが企業文化レベルで染みついています。

<お客さんが絶対的で交渉しない(できない)>
これは自部署に限った話かもしれないですが、お客さんを最優先する節があります。
それ自体が悪いことではないのですが、そのために土日出勤や、0時を超えるような残業を、「お客さんが言ってるんだからやるしかないでしょ」の一言で済まして強制するのは問題だと思います。

まともな開発をできない日程の仕事を取ってくるのも問題だし、
客先側の要求が未熟なことが理由の場合は、なんとか頑張る前にちゃんとお客さんと交渉するべきでしょ、と思うシチュエーションがありました。

最後の仕事はそこらへんが酷すぎて、チームの士気がゼロになっていました。

退職理由

上記の良い点・悪い点があって、最初の頃こそスキルアップという意味で良い点が勝っていましたので、辞めたい気持ちはありつつも続けていました。
でも、時間が経つにつれてスキルアップの頻度が減っていくが、悪い点は変わらないので、良い点と悪い点が逆転していきました。
そこらへんで、長い時間かけていたプロジェクトが転機を迎えたことで退職を決心しました。

もうこの頃には同期は半減していましたし、退職者の話を聞いても、「辞めないほうが良かった」という意見は聞いたことが無いです。

辞めるべきでない理由があるとすれば、管理側になると年収が一気に上がって1千万クラスになるらしいので、耐え続ければ給与面ではよいかもしれません。
管理側になるのは早くて12年目くらいですので、そこはメリットがあるかと思います。ただ、それに見合う苦労は間違いなくさせられますし、あの苦労をするのであれば管理職になりたくない。という意見も結構ありました。私もそう思ってます。

あとは、自分としては

  • 量産立ち上げまで経験できなかったこと
  • 後輩を育成したことが無いこと
  • マネジメントする立場を経験していないこと

が退職の二の足を踏む理由でしたが、そのためにあと3年は勤める必要があるので、すっぱり諦めました。

最後に

新しい仕事も見つけたので、この選択が正しかったかどうかはあと1年後くらいにわかるでしょう。
願わくば、この選択しが正しかったことを証明していきたいですね。

追記データ

データをまとめたのでいくつか書いておく。

残業データ

残業が長いとき短いときの波が激しいが、これは、
「残業規制が入る→業務が成り立たなくなり規制解除→残業規制」
というのを繰り返したせいで上下が激しくなっています。
残業規制が入っても仕事は減らないので、サビ残が増えたりします。定時後59分間はタイムカードに反映しなくても記帳できるので、そこまで働いて帰る人がめっちゃ増えます。
恒常的に30分サビ残しているので、実質の残業時間は+10時間くらいあると思います。

給与内訳(直近12か月)

賞与と残業の比率が結構高いですね。
賞与は評価の影響が非常に効いてきますので、評価が低いと結構年収下がります。