「そのような契約を結ぶのは、不可能ではないでしょう。というのも、出版社自体は映画の興行収入に応じて収入を得ている場合もあるからです」(杉本氏)
契約次第で原作者も歩合制報酬をもらえるということか。では順を追って、話の前提となる映画製作の内情を教えていただこう。
「まず、当然ですが映画をつくるには莫大な資金が必要です。よって、今日ではさまざまな会社が制作費を出資しあって、製作委員会というものを設けているのが一般的。上映して得られた利益は、その出資の比率に応じて製作委員会を構成する各社に分配される、という仕組みです。
そして、最近では出版社も製作委員会に参加しているケースが多いんです。その場合、出版社自体が映画の売り上げに応じて利益を得られるため、出版社と原作者の間で“映画の利益に応じて歩合制で支払う”という契約を結ぶことは不可能ではありません。ただし、そういった契約はできれば結びたくないというのが出版社の本音でしょう。出版社はなるべく多くの分配金をもらいたいでしょうからね」(杉本氏)
なるほど。では『劇場版「鬼滅の刃」』は制作委員会を設けていて、そこに出版元の集英社は加わっているのだろうか。
「集英社も加わっています。エンドクレジットの製作委員会に記載されている会社は、集英社とアニプレックスとアニメを制作したufotableの3社。ちなみにこれはメジャー映画の製作委員会としては、参加社数が非常に少ない例です。一般的な製作委員会はテレビ局や映画会社、さらにはJRのような鉄道会社やLINEのようなIT企業が参加することもあり、10社ほどが名を連ねるような作品も珍しくありません。これだけの大ヒット作品の利益を3社で分配できるので、3社ともかなり儲かることになるでしょう」(杉本氏)
それでも漫画の映画化があくどい商売ではない理由
それでは、製作委員会に名を連ねた映画制作会社や出版社だけが儲けを独占しているのかというと、必ずしもそういうわけではないらしい。
「映画化によって原作使用料が生じるのとはまた別に、DVD・ブルーレイなどの二次使用料は、売上に応じた歩合制報酬が原作者に支払われるのが通例です。その原作者に支払われるDVD・ブルーレイの二次使用料の比率は、ソフト本体価格の1.75%×出荷枚数が一般的な相場。最近は少なくなりましたが、レンタルの場合は3.35%が原作者の取り分です。
つまり、本作の原作使用料が数百万円だったとしても、これだけ映画が大ヒットしていればDVD・ブルーレイも売れるでしょうし、そうなれば原作者のもとにも多額の報酬が入ることが予想できます。また、世間的認知度が上がって原作漫画の重版がかかり印税収入が増えることが作者にとっては一番の恩恵です。ですから出版社はそういったメリットを原作者に説明することで、映画化の説得を図っているのでしょう」(杉本氏)














