どうする?飲み残したワインの保存方法 「瓶にラップ」or「コルクを戻す」? ソムリエに聞いてみた

ラップを巻いたワインボトル(左)とコルクを戻したボトル

 秋はワインを味わう機会が増える。新酒の解禁、ワインフェスタなどに刺激を受け、酒販店やスーパーでワインに手を伸ばす人も多いと思う。記者もその一人。しかし、自宅で飲んでいても、家族の中でワインを飲むのは記者だけで、なおかつお酒にあまり強くないため、一般的なフルボトル(720ミリリットルや750ミリリットル)を購入しても一晩では飲みきれない。そこで、飲み残したワインを保管するために、瓶の口にラップを巻いて冷蔵庫に入れて保管。「早く飲まないと」と少し焦りながら、数日かけて飲み干している。

 しかし、同僚にこの話をすると「ラップはあり得ない!」と否定されてしまった。同僚は、飲み残したワインを保存する場合は「瓶の口にコルクを戻している」という。彼曰く「ラップはかっこ悪く、酔いがさめる」そうだ。確かにコルクの方が見栄えはいい。だがしかし、コルクを戻すといっても、一度抜いたコルクは広がって瓶の口より太くなる。つまり、元通りに栓はできない。この旨を同僚に伝えると「そこを何とか、強引にねじ込む」と返された。「無理するぐらいなら、ラップでよくない?」「いや、ラップはなし!」としばらく激論が続いたが、結局わかり合えなかった。

 飲み残したワインの保存に最も適しているのは、どんな方法なのか? ラップかコルクか。それとも市販されている保存用の栓を買うべきなのか? 自宅でもっとおいしくワインを楽しむために、長野県ワイン協会公認「NAGANO WINEアンバサダー」でソムリエの花岡純也さん(47)に教えを請うた。

■ワインは空気に触れると酸化する

 結論から言うと、「ラップもコルクも保存には適していない」との返答だった。花岡さんによると、飲み残したワインと瓶の中にある空気が触れるとワインが酸化して味が劣化してしまう。しかし、ラップもコルクもワインと瓶の中の空気の接触を防ぐことはできない。「ワインをこぼさないという目的には良いが、劣化を防ぐ手段ではない。市販の栓も同じ」と花岡さん。

 同僚とあんなに言い争ったのに、2人とも間違えていた。ただ、1点だけ強調したい。花岡さんによると「ワインをこぼさない目的でコルクを瓶に戻す際は、開封前に瓶に入っていた部分ではなく、上下をひっくり返して元々表に出ていた部分を瓶に入れる」。つまり、同僚のやり方は間違っていることになる。一矢報いた気分だ。

■空き瓶を活用しよう

 では、飲み残したワインをおいしく保存するために適した方法とは何なのか。花岡さんが勧めるのは、ガラスの小さな空き瓶にワインを移し替える方法だ。用意するのはキャップ付きの小瓶。飲み残したワインを小瓶になみなみと注ぎ、できるだけ瓶の中の空気を少なくした状態でキャップを閉める。赤でも白でも、保存先は温度が一定に保てる冷蔵庫がよい。この方法で「2週間程度は品質が保てる」と花岡さん。

 市販されている保存用の栓の中には、瓶の中の空気をポンプで抜くタイプもある。このタイプでも空気とワインの接触は減らせるが、花岡さんは「万能ではない」と話す。「市販の栓もいろいろと試したが、瓶に移し替える方法が最も適していた」

■二次利用、三次利用して使い切ろう

 空き瓶に移し替えて保存しても、結局は「飲みきれない」「味が変わった」と感じる人もいるだろう。そんな人に花岡さんが勧めるのは、飲み残したワインでサングリアを作ることだ。作り方は赤でも白でも同じで、「ワインにオレンジジュースと砂糖を混ぜ、オレンジなど柑橘系のフルーツを入れ、冷蔵庫で一晩寝かせる」。オレンジジュースや砂糖の量はお好みで、複数の種類のワインを混ぜて作ってもよい。花岡さんは「どのワインを使ってもおいしいサングリアができる」と太鼓判を押す。

 「サングリアも飲みきれなかった」と言う人には、ワインソースにして食べることがお勧めだ。花岡さんによると、サングリアを鍋で煮詰めるとワインソースになり、これをカツレツなどにかければ「イタリア料理風に楽しめる」。工夫次第で最後の一滴まで使えるワイン。花岡さんは「ワインを無駄なく、おいしく楽しんでほしい」と話す。

■気軽に普段飲みでワインを楽しむ

 長野県内にはワイナリーが71カ所(2023年3月時点)あり、山梨県に次ぐ産地に成長。ワインを軸にした観光の魅力向上と観光客の増加が期待されている。ただ、そのためには長野県産ワインのさらなる普及が必要で、花岡さんは「自宅や飲食店などで日常的にワインを飲む環境や雰囲気づくりが大切」と話す。

 記者はこれまで、ワインの飲み残しを気にしてフルボトルの購入を控えることもあった。だが、飲み残しても小瓶に移し替えれば2週間もおいしく保存できると知って、少し気が楽になった。手製のサングリアもおいしそうだ。今後は季節を問わず、もっと気軽にワインを楽しみたい。(半田茂久)

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