歩きタバコ注意する側なのに… ポイ捨て巡視員が路上喫煙 長野市、委託先を“処分”

コエチカ取材班に寄せられた写真。巡視員用とみられる黄色いジャンパーを着た男性3人が喫煙しながら談笑している

 歩きたばこを注意する立場の巡視員が路上で喫煙!? 長野市が「ポイ捨て防止条例」に基づき、業者に委託して行っている歩きたばこの巡回パトロールで「巡視員が路上喫煙していた」との情報が本紙「声のチカラ」(コエチカ)取材班に寄せられた。巡視員が路上で喫煙していては歩きたばこを注意された人も聞く耳を持たなくなる。市に確認すると、情報は事実で既に“処分”も済ませたという。(牧野容光)

 情報を寄せたのは長野駅前で料理店を営む30代男性だ。雪がちらつく2月のある夜、偶然、黄色いジャンパーを着た巡視員とみられる男性たちが路上で喫煙している様子を目撃、写真に収めた。以前から、巡視員がきちんと業務をしているか疑問を持っており、許せなかったという。

 提供してもらった写真には確かに、駅近くの路上で男性3人がたばこや缶飲料を手に談笑している様子が写っていた。

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 取材班はまず、所管する市環境保全温暖化対策課に取材を申し込んだ。すると担当者は、巡視員が路上で喫煙している―との情報提供が同課にもあり、既に事実を確認済みだと明らかにした。

 前提として、長野市の場合、歩きたばこを全域で禁止しているが、立ち止まった状態で携帯灰皿を使用しての路上喫煙は禁じていない。ただ、市は業務委託の仕様書で、巡視員の巡回時間中の喫煙を禁止しているという。

 巡回中に路上喫煙をしていたのは、2022年度に受託した太平ビルサービス(東京都新宿区)の巡視員だ。同社はビルメンテナンスなどが主な事業。従業員数は2万4千人余で、長野市など全国に支店や営業所がある大企業だ。

 問題を踏まえて同社が今年3月に市に提出した回答書などによると、巡視員3人が2月15日午後9時15分ごろ、同社長野営業所のすぐ近くで路上喫煙した。自動販売機で缶飲料を買い、休憩していた時のことだったという。

 巡回中の喫煙を禁止している理由について同課は「歩行喫煙を注意、指導する者が自ら喫煙することは業務上そぐわないため」と説明。「市の施策に対する信用失墜行為」として抗議したという。

 同課は「一定時間職務を離れ、談笑していた行為は契約違反」とも指摘。喫煙中(4分間)の人件費と、業務実態を調べるのにかかった市職員の時間外勤務手当計7万6300円を、同社への年間委託料269万円から減額した。

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 同社は、市に提出した回答書で、巡回前後にミーティングを行い、注意喚起するといった再発防止策を示した。ただ、なぜ契約で禁じられた路上喫煙をしたのか、社員に契約内容をきちんと説明していたのか―といった原因については触れられていなかった。

 取材班は複数回、同社に取材を申し込んだが、担当者は「回答書が全て。取材には応じない」とした。

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 【長野市の路上喫煙対策】 2018年4月に施行したポイ捨て防止条例に基づく。子どもや車いす利用者がやけどをしたり、火の不始末による火災を防いだりする狙い。市内全域で、歩きながらや自転車やバイクに乗りながらの喫煙、携帯灰皿(吸い殻入れ)を持っていない時の喫煙のほか、ごみのポイ捨てや飼い犬のふんの放置を禁じている。重点地区での違反には罰則(5万円以下の過料)もあるが、現在は重点地区を設定していない。巡回パトロールは毎年、業者に委託して実施。巡回は毎月2~4回、午後8時から2時間、長野駅前の繁華街を中心に4人の巡視員が2班に分かれ、啓発用のポケットティッシュを配りながら行っている。

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