【独自】祝甲子園の紅白まんじゅう配布に「待った」 朝日新聞社が松本市の百貨店に「商業利用抵触の可能性」 恒例行事、過去には報道も…

松商学園高校の優勝に備え、井上が用意した紅白まんじゅう

 7月の全国高校野球選手権長野大会決勝で、百貨店の井上(松本市)が地元の松商学園高校の甲子園出場に備えて用意していた紅白まんじゅうの無償配布と懸垂幕の掲示に大会主催者が「待った」をかけていたことが6日、分かった。日本学生野球憲章が禁じる学生野球の商業利用に抵触する可能性がある―との指摘だった。しかし、地元高校が甲子園出場を決めた際のまんじゅう配布は30年ほど続く恒例行事。舞台裏で何があったのか。

 7月26日午前9時58分、信濃毎日新聞松本本社報道部にファクスが届いた。「祝甲子園出場、紅白まんじゅう配布 懸垂幕掲示のお知らせ」。翌27日の決勝で松商学園高が勝った場合、紅白1個ずつ入ったまんじゅう150箱を試合終了後、本店1階で配ることを知らせる報道機関向けの案内文だった。

 しかし26日午後4時11分、再び井上からファクスが届いた。「中止のお知らせ」。最初の案内文から、わずか6時間後。紅白まんじゅうの配布と懸垂幕の掲示が「諸事情」により中止する旨を伝える内容だった。

 井上によると、最初に案内を出した後、大会主催者に名を連ねる朝日新聞社の長野総局(長野市)から、学生野球の商業利用を禁じる日本学生野球憲章の規定に抵触する可能性がある―と指摘があった。井上の担当者は「喜びを分かち合いたいという趣旨なんですが…」と落胆する。まんじゅうは従業員が持ち帰って食べたという。

 朝日新聞社広報部は取材に対し「商業施設での物品の無償提供や垂れ幕の掲示は高校野球を利用した企業や商品の宣伝につながりかねず、商業利用を禁じる日本学生野球憲章に抵触する恐れがある」と回答。もう一つの主催団体、県高野連と協議し、長野総局が井上側に「懸念」を伝えたという。

 ところが、朝日新聞のデータベースを検索すると少なくとも過去3回、井上の紅白まんじゅう配布を記事にしていた。2010年の優勝校は松本工業高(松本市)、11年は東京都市大塩尻高(塩尻市)で、いずれも甲子園初出場を決めた際のまんじゅう配布を紹介。17年は甲子園2回戦で敗れた松商学園高について「健闘をたたえて」などの見出しで配布現場の写真を添えて記事にしていた。

 市民に親しまれる恒例行事なのに、今回なぜ「懸念」を伝えたのか回答を求めた。朝日新聞社広報部は「個別事案の判断に関わることであり、お答えを差し控えます」とした。県高野連は6日、取材に対し、井上からは「当初は地域貢献として始まった」と聞いており「敬意と感謝でいっぱい」とした上で、「憲章がある以上、これが大原則」と強調。井上には「憲章に基づいた対応が本来の形であるとご理解いただいている」とした。

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【日本学生野球憲章】大学野球や高校野球の一般的な諸原則について公益財団法人日本学生野球協会(東京)が定めたもので、「学生野球の憲法」とも言われる。学生野球の基本原理をまとめた第2条は「学生野球は、学生野球、野球部または部員を政治的あるいは商業的に利用しない」と規定している。戦前は学生野球の商業化などが進み、国が1932(昭和7)年に学生野球を管理する野球統制令を施行。学生野球界が反発して46年に同協会が発足し、憲章の前身となる要綱ができた。野球統制令は47年に廃止され、50年に憲章が制定された。

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■地域の応援あっての地方大会 「憲章」厳格適用に疑問の声も 高校野球の商業利用

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