さあ、面談じゃ面談じゃ!

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小学校からは、ステラ先生、ワキタ先生、U先生、

そして副校長のおせい先生。




こちらからは夫と私。




教室へ入る前に、ステラ先生が私の背中をごしごし

して「がんばって!」と耳打ち。え、そんな。

急に緊張……。なんか今までにない学校側からの気迫を

感じて戸惑う。






今日は夫に任せるつもりだったのです。

私もUも大人げなく、目も合わせなくなって久しい。






明るいおせい先生が司会になって、まず自宅での様子

を聞かれました。夫がべらべらと娘自慢を繰り広げ、

私はじーっと縮こまっている。

ふと顔を上げると、大げさに相づちを打って場を盛り

上げる先生方の中で、やっぱりU先生だけがじーっと

縮こまっている。






……ふふ。なんか可笑しくなっちゃった。






夫が「最近よく本を読みますね。あれ静かだな、と

思ったらひとりで夢中になって読書してたりして、

成長を感じます。ママがね、読み聞かせをずーっと

してきたからね、本は好きですね。」と、ちょっと

私を持ち上げてくれる。






すかさずステラ先生が「あらっ!ひまわり級の図書

の時間はすばらしいんですよ。先生方もみんな読書

するんです。そうすると子どもたちも自然に静かに

本を読み出すの。これはU先生のアイディアよね、

ね?」とU先生を持ち上げる。






私もUも、縮こまったまま、ちーんと黙っている。






「そうそう、図書の時間は三時間目なんですよ。

ひかりちゃん、きっと楽しいと思うわ。」とステラ

先生。


ほら、夫、きっかけを作ってくださったよ。




「……ああ、うちもよく図書館行くんですよお。」




もうバカだな夫!

違うよ、そこは「じゃあ三時間目まで行かせてみよう

かな。」でしょうが。






ステラ先生が投げたボールは、夫の手前で……落下。






気を取り直したおせい先生が、次に学校での様子を

先生方に尋ねる。





まずステラ先生が「ひかりちゃんは、毎朝なにかしら

プレゼントをね、持ってきてくれるの。きれいな小石

やどんぐり。昨日は、つばきの花びらがねハート型だ

って。U先生にあげるのね。ひかりちゃん、U先生が

大好きなのよね。」




…………。





次にいつも頼りないワキタ先生が、一生懸命

「あ、えー、去年取り出し授業で関わっていたとき

より、自我が……芽生えて…きたというか。あ、これは

U先生に教わったことなんですけど、成長がですね、

……云々」





はい、次はU先生お願いします。





ここで初めてU先生が口を開く。





「……だいぶ字がきれいになりました。」





…………。






なんとも歯車の合わないビミョーな雰囲気。

さっきごしごしされた背中の感触がよみがえる。





よおっし。




また脱線しそうな夫を目で制して、私の思いを。





まずは、字がきれいになってきたことについて。

この夏、エレメンタリーで出会った特別支援学校の

PTの先生のアドバイスで、3歳でやり残したと思わ

れる「大暴れ」を見守ってきたこと。

確かに身体つきが変わってきたと同時に、書字が整っ

てきたこと。

字が小さくなったことで、学研のくり上がりとくり下

がりのプリントが、難なくできるようになったこと。


それから「てつどうクラブ」で、お友だちや先生と

お弁当を持って一日遠足へ行くようになったこと。

長期入院以来、あんなに母子分離に不安があった子が

ひとりで参加できるようになったこと。

電車への興味から、時計も読めるようになり、路線図

や電車の型などにも知識が広がったこと。




学校にはろくに通わなかったけど、たくさんの方々に

いろいろな方面から支えてもらって、豊かな毎日を

積み上げていたことを、どうしても言っておきたかっ

た。そして、三年生から三時間目までにする、と本人

が言っている。その準備のために、三学期から週1回

三時間行かせたい。

病院の先生からは、曜日をきちんと決めた方が娘には

良いだろうと言われている。

娘とは、勢いのある月曜日にしようか、と言っていた

けど、ステラ先生のお話をきいて、図書のある水曜日

がいいかもしれない。今日、帰ってから娘と相談しま

す。あと、朝「お母さんにバイバイしましょう」は

言わないでほしい。娘、バイバイ恐怖症なんです。







結局、私がまくし立ててしまった。でも、ステラ先生

が嬉しそうに「そうしましょう!水曜日ね!」と

まとめてくださって、面談は無事終わりました。







「おそくなっちゃったわ。昇降口、開いてるかしら」





ちょっとわざとらしく言いながら、ステラ先生が

私についてくる。

私の背中をポンと叩き「今日は良かった。一歩前進。

だけど……。私、ひかりちゃんのこと、何も知らなかっ

たわ。ごめんなさいね。」






帰り道、自転車並走しながら夫が言う。


「あなたとU先生さあ、なんか子どものケンカだね」




ははは、私もそんな気がしてきたよ。

この世ではもう仲良くなれないかもしれないけど、

あの世で再会したら、思い出話に花が咲く、かもね。






ま、とにかく風穴あけてくれたステラ先生には感謝!