2023.09.02

「口は開かず、体をねじまげ、のたうちまわり」…かつて日本人がインドネシア人に行った「残虐な行為」

半ば強制的に連行されたうえ、人体実験の「実験台」にされ、破傷風で苦しみながら死んでいく―かつて日本軍に惨たらしく殺された人々がいた。多くの日本人が知らない歴史の闇を明らかにする。

隠された旧日本軍の人体実験

「インドネシアでの日本軍の人体実験を示唆する資料を初めて目にした瞬間、驚きと興奮で震えが止まらなかった。でも、本にまとめるまで20年近くかかってしまいました。長年隠されてきた日本軍の罪を暴く研究なので、誰もが納得するような証拠を積み上げるのに時間が必要だったからです。

私は日本占領下のインドネシアを研究テーマにしていますが、戦時中の日本軍の悪事について書くと、しばしば抗議に遭いました。保守系の政治家から『お前が騒ぐから問題が大きくなるんだ』と言われたり、現地調査に必要なビザが取りにくくなったり。様々な妨害を受けましたが、ようやく確信を持って日本軍の戦争犯罪を明るみに出せると考えています」

こう明かすのは、インドネシア史を専門とする慶應義塾大学名誉教授の倉沢愛子氏だ。

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大半の日本人は知らないが、かつて日本軍は、占領したインドネシアの人々を半ば強制的に連行し、奴隷のごとく過酷な労働に従事させていた。しかし蛮行はそれだけにとどまらず、彼らを「実験台」にしていたことが明らかになったのだ。

これまで日本政府はこうした歴史を無視し、米国なども不問に付してきた。しかし今回、新たに解読された日本軍の内部文書を元に、歴史の暗部を暴く書籍が世に出た。それが倉沢氏と、同じく慶應義塾大学名誉教授の松村高夫氏による共著『ワクチン開発と戦争犯罪』(岩波書店)だ。

『ワクチン開発と戦争犯罪 インドネシア破傷風事件の真相』(岩波書店)/倉沢愛子、松村高夫

身勝手な人体実験の犠牲になったインドネシア人たちの死の真相は、戦後78年にわたって隠されてきた。彼らはなぜ無念の死を遂げることになったのか。闇に葬られた真実に光を当てていこう。

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