熊本県山鹿市方保田[かとうだ]にクラフトビール(地ビール)の小さな醸造所「キラリブルワリー」が開業した。市内には千代の園酒造、熊本ワインファームの菊鹿ワイナリー、山鹿蒸溜所がある。県内で唯一、日本酒、焼酎、ウイスキー、ワイン、ビールの生産者がそろった「酒どころ」となり、観光振興への期待も高まっている。

 キラリは、ウェブサイト制作などを手がける山鹿市のプロセスデザインが開いた。代表の森淳二さん(44)と妻のゆかりさん(44)は10年来の欧米産地ビール愛飲家。趣味が高じて自ら醸造家を志し、「この数年間、関西以西で醸造所見学を重ねてきた」という。2人の熱意は大分の醸造家に通じ、弟子入り。約1年半定期的に通って地ビールの本場の一つである米国流の製法を学び、昨年12月に国からの製造免許を取得した。今年2月、会社近くの国道沿いの貸店舗(約30平方メートル)に念願だった醸造所をオープン。容量約100リットルの小型発酵釜3基を置いた。

 仕込みから約1カ月かかる地ビール製造。その工程の大半に関わっているのはゆかりさんだ。「女性の目線」を大切にしながらの商品展開を図る。定番商品五つのうち、「ヴァイツェン」(330ミリリットル=660円)は、隠し味にバナナや山鹿産米を使った。フルーティーな味わい。7月発売の「岳間茶IPA」(同=880円)は、地元緑茶の香りや苦味を生かした。いずれも好評という。「地元産の副原料で風味を加えることで、山鹿の魅力発信に一役買えたらうれしい」。営業は週4日程度だが、販路は市内外の物産館や飲食店などに広がりつつある。

 キラリにエールを送るのは、山鹿温泉観光協会の高野誠二会長(67)。「これだけ多彩な酒が一つの市で造られるのは珍しい。つまみの開発などで盛り上げたい」と話す。

 菊池川流域の自然・風土に育まれた地元の日本酒やワインは国内外の品評会で好成績を収めている。ウイスキーも再来年以降に本格的な製品が発売される見通しだ。お酒好きが注目する話題が続く中、観光戦略会社「くまもとDMC」(熊本市)も、外国人らの誘客に向け、各社の生産拠点をタクシーなどで巡るツアーを検討している。

 県観光統計によると、山鹿市への入り込み客数は新型コロナウイルス禍の影響を受ける前の2019年は延べ393万人に上る。ただ、経済効果が比較的小さい日帰りが中心なことが、長年の課題だ。市観光課は「山鹿で酒を楽しんでもらえると、宿泊につながりやすくなる。山鹿ならではの魅力をもっとPRして、宿泊客数の底上げを図りたい」と意気込んでいる。(猿渡将樹)