60歳の誕生日が近づくと、「ねんきん定期便」が届きます。それを見て、?となったことがありました。

どうやら、私は63歳から、「特別支給の老齢厚生年金」が頂けるもののようです。報酬比例部分だけのようですが、女性、ですからね。男性だったら、もらえません。

いや、本当? 大丈夫か?私?

というのもですね、特例法にこんな付則があるので、私は「男性扱いで、65歳からしかもらえない」と思っていたのです。(性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(平成十五年法律第百十一号)付則の3)

(性別の取扱いの変更の審判を受けた者に係る老齢基礎年金等の支給要件等の特例に関する措置)
 国民年金法等の一部を改正する法律(昭和六十年法律第三十四号)附則第十二条第一項第四号及び他の法令の規定で同号を引用するものに規定する女子には、性別の取扱いの変更の審判を受けた者で当該性別の取扱いの変更の審判前において女子であったものを含むものとし、性別の取扱いの変更の審判を受けた者で第四条第一項の規定により女子に変わったものとみなされるものを含まないものとする。

これを見ると、国民年金について、受給資格などの基準になる性別が、特例法による性別変更の影響を受けない...ように読めるのです。自分がかかわる法律ですからね、やはりしっかり条文を読んで覚えているのですよ。いい機会なので年金事務所に問い合わせてみました。

やはり年金事務所でも、すぐにはわかりません。調べてもらうことにします。支給してもらったあとに、「返せ!」ということになるのだったら、嫌ですからね。まあとはいえ、年金事務所の方でも「問題ないんじゃないかな?」なんてご意見も聞きましたし、別に「墓穴を掘った」わけでもないようです(苦笑)

今日この調査結果を教えていただきました。うん、問題なく私は女性として、63歳から報酬比例部分をいただけるそうです。

要するにこの付則は、「国民年金法等の一部を改正する法律(昭和六十年法律第三十四号)」という、国民年金について大改正(旧法から新法、って業界では呼ぶようです)があったときの移行措置に関する法律について、適用除外を定めた内容だそうです。40年も昔の話題なのでした。「今」の新法に基づく国民年金の受給については、移行後の性別ですべてが処理される、ということになります。

老齢年金の特別支給の支給開始年齢について、男女差があるのは、民間企業で定年の男女差が広くみられていたことを是正する目的だそうです。法律自体は私よりも20歳以上年上の人たちの扱いから徐々に移行していくことになりますから、今からもらう私の世代でも、移行措置の名残があるわけですね。

私は女性として、63歳から少々ですが年金が頂けることになりますから、助かります。逆に同年齢の FtM さんだったら、「もらえないように変わる」ことになります。まあこういう法令で定められた男女差(というか、女性の優遇)は、そういうものだ、と思うしかないのでしょうね。

具体的な法令で男女の区別があるものが、社会保険関連を中心にどのくらいあるかはわかりませんが、一般論としてはなくなる方向に進んでいるわけです。それがいいことなのか、悪いことなのかは、私がどうこう言うことでもないでしょう。


とはいえ、TRAが主張するような「性自認至上主義」が認められたら....いやいや、厚生年金の早期支給を狙って「性自認が女」なんてことを主張する「不幸な人」が出るのかしら? 「法的な性別」を変える、ということには、いろいろな法律的な効果が実は今でも隠れているのです。けして単純な「個人の選択の自由」で勝手に変えられるわけではありません。

TRAを叩いたついでに、公平のためにフェミニストも叩きましょうか?
特例法のころに、大島先生との雑談の中で、「憲法や民法をしっかりジェンダーの視点で読んでみたけども、いくつか既知の問題点(婚姻年齢や再婚禁止期間・認知の非対称性)はともかくとして、全体としては男女平等を踏まえた法律だ」という話になったことがあります。もちろん社会に男女差別がいろいろ残ることは否定しようがないことですが...
それでもフェミニストにこんな話をすると、怒られるのですよ。嫌になりますね。社会運動にハマる層というのが、法律に無知かつ勉強する気もない、というのを目の当たりにしたわけです。

ツイッターで私が受けた攻撃は、そういう「社会運動のダメさ加減」の現れですね。