去年の年末に、危機感を持った私は、「性別不合当事者の会」に加わることにしたのですね。TRAは大嫌い。で、TRA のイデオロギーはけして、当事者の多数意見でも何でもない、と思ってますよ。「性自認」で勝手に「トランスジェンダー」を名乗って、それを私たちTSを包括しようとするのならば....

全然、別のものですからね。トランスジェンダーなんぞにいいように利用されるのはごめん被ります

と、言いたいわけです。TRA は「女装崩れ」とでも呼ぶべき困った人々を煽って、年末に商業施設の女子トイレに突入させるなんて暴挙を起こしたわけですが、当然そんなの私は支持しません。女性たちは完全に怒ってます。TRAはわざわざ「寝た子を起こした」わけですが、こうなったらもう、

女子トイレの利用は、SRS済&戸籍変更でないと不可

というあたりでないと、女性たちを納得させることはできないあたりにまで、女性たちを追い詰めてしまったわけです....本当に迷惑千万なことをしてくれました。迷惑を被るのは、SRS済&戸籍変更の私たちもですよ。SRS済&戸籍変更済でも、パス度が高い人ばっかりじゃありませんからね。戸籍が女性になっていても、パス度が低い人が女子トイレを利用できなくなる....「女装崩れ」の暴挙は大変な迷惑を引き起こしてくれたわけです。

加えてTRAの「性自認至上主義」によって、私たちが求める「まともな医療」を後退させるようなことを許すわけにもいきません。SRSとホルモン療法は完全に一体のものなのですから、両方ともが健保適用されなければ、誰も使えません。TRAは脱病理化を進めようとしますが、

病気でもないものに、どうやって健康保険を適用できるの?

まさにその通り、でしょう?この一点をもってしても、TRAの主張は手術を求める TS の利害に反した存在です。

というわけで「性別不合当事者の会」の「特例法そのまま維持」路線に、私は完全に賛成で、今でも支持をしつづけているのですが....

うん、じゃあなんで最近はもう活動しないようにしたか、ということですね。この問題に介入したのは、本当に私は善意以外の何物もないのですけども、私の立場はどうも他の方のご理解を得づらく、しかも無用な軋轢を TERF の過激派と起こしてしまうようです。だったら、この問題を憂慮する人々全体のご迷惑でしかない....と思うようになったのです。

前から書いていますが、私は「完パス・埋没」系です。SRS&戸籍変更は済んでいますから、女性たちに文句をつけられるところはない、と思っているのですけどもね....いやいや、TERFの過激派は違うようです。運動である以上、トランスにもいろいろ立場があり、それぞれの立場を尊重しつつ、進めていくのがよいことであるはずなのですが.....どうやら TERF さんたちは「完パス・埋没」の私たちは許しがたいようなのです。パスしない人たちの方が許せるようなんですよ。不思議。

つまり、「戸籍変更後でさえも、女性スペースに立ち入ることは許されない!」とする、過激な立場の場合には、「完パス」の人々は、見た目全く区別できませんからね。それがどうも脅威のようなんです。もちろん、「完パス・埋没」でそれこそ埋没歴20年、なんて人はもう意識は完璧に女性以外の何物でもないわけで、

じゃあ、戸籍が女なのに、なぜ女性スペースの利用を拒むの?

と当然のように抗議することでしょう。TERF過激派は、そもそも「戸籍変更」の法律的な意味よりも、自分たちの狭隘で観念的なイデオロギーを優先したがる人々なのでしょうね。

戸籍が女ならば、女性スペースが使えるのは当然です。

それが「法」というものです。だからこそ、手術要件をしっかりと維持する必要があるのです。

そうしてみると、TERF過激派にとって、見て「わかる」ノンパス MtF はさほどには脅威ではない、ということになります。ただ糾弾し、警察を呼べば対策できるからです。戸籍変更済みの完パスを敵視するのならば、そういう簡単な手段が全く使えないのです....身分証明書だって「女」ですからね。

としてみるのならば、私がいくら女性の立場に好意的でも、問題をややこしくするだけならば、自分の立場を主張しない方がいい、ということになります。まあだったら、黙りましょう。勇敢でないといえばその通りですが、やはり「完パス・埋没」は少数派ですからね。声の大きい多数派にはかないません。

で、よくよく考えると....仮に TERF か TRA か、どっちでもよろしい。完全勝利を収めたとして、特例法を廃止することになりました。その場合、

すでに特例法を使って性別を変更した人々の、性別を強制的に元に戻すことができるか?

と考えてみましょう。これは絶対的に不可能なことです。人権問題といえばまさにそうですけども、それを言わなくても、法律的にまったく無理筋です。

・性別を変えて結婚している夫婦を、強制的に離婚させることができるか?
・性別を変えて結婚した夫婦のどちらかがすでに亡くなっている場合に、遺産相続を白紙にできるか?

ね、いかに不可能な話なのか、よく分かるでしょう?としてみると、TRA も TERF も、すでに戸籍を変えた私たちには、指一本触れることはできないわけです。

私たちはすでに「自分が欲しいもの」は手に入れています。そして、その「手に入れたもの」を侵す脅威が迫っているか...というとそういうわけでもないのです。もちろん、「今、性別を変えようと考えている」人たちにとっては大問題です。だからこそ、そういう人たちのためにアピールしようと思っていたのですが....

いや、戦いはそれによって「得るもの」「守るべきもの」がしっかりある人たちに任せましょう。彼らの方がずっとよく戦うはずです。「すでに得た」「守られている」私たちがおせっかいをするのも、余計なことのようですので、「戦う人々」のお邪魔をしないようにした方がいいのでしょう。

まあですし、私の場合には完全な「素質組」だったこともあって、本当言うと、「パスしない人々」の気持ちってわからないところが多いのですよ。問題の少ない私たちの立場を優先するわけにはいきませんから、「パスしない人たち」の立場を表に出して、それを主張するのはまったく構わないのですが....いやいや、だからと言って、「完パス・埋没」組の立場をまったく主張することが許されないのならば、運動に参加する意味を求めづらいのです。嘘をつかないとできない、とかそういうことではないのですが、

理屈としては分かっていても、実感として語れないことを、全力で主張しないといけない.....

やはりこれは、ツラいです。勘弁してください。