TSFではもう古典ですね。出版は1999年ですから、GIDも特例法も未だ...の時代です。



恵(けい)は入学した高校で、番長然とした上級生から、その「不良指定席」を仲間とともに奪って、「下剋上カルテット」と呼ばれていた。ある日、その「不良指定席」な校舎屋上で、恵は腹痛を訴えて気絶する...医者で診察を受けた恵は、実は女性であることが判明する。女性として生きることにした恵(めぐみ)は、診察した医者の姪の麻琴のサポートを受けて、一緒に1学年下に女子として入学しなおす。名前は読みが変わっただけ、住所も同じ、顔立ちも同じ....と、かつての仲間の下剋上カルテット、生徒会長、元番長、と男時代の恵を知る男たちに不思議がられてすぐに真相はバレてしまう。しかし逆に、男だった頃でも恵のかわいさ、色っぽさは実は気づかれていて、女になった恵を巡って、男たちはそれぞれ猛アタックをかけることになる...

はい、ハイテンションなラブコメですね。恵もGIDじゃなくて、ISで性転換します。まあ、ISで「性別を変更」するのじゃなくて「性別を訂正」するのは、特例法の前からもあったことではありますね。ですから、ないことじゃないのですが....やっぱりねえ、周囲の男性たちの切り替えっぷりが、フィクションだな~~という印象。今まで仲間の「男」だったのが、急に恋愛対象の「女」になる...いや意外に男性、こういうの抵抗感があるものなんですね。
やはり男性から見ると、「男が女になる」というのは、どうしても「仲間から脱落する」ようなニュアンスを持って見られてしまうわけですよ。下手すると男性の「去勢恐怖」を刺激しちゃいますしね。だから「男だった頃を知っている男性」からは、トランスするとドン引きされることが多いです。まあ、女性としての完成度がそれなりにあれば、そのうち「慣れて」くるものみたいですが。あるいは「みょーに馴れ馴れしくされる」こともありますけども、これも逆に意識しすぎることから来るように感じましたね。ちなみに「革命の日」でも少しだけ触れられていますが(というか、「続・革命の日」の実琴くんエピソードですが)、「女っぽい男性」を見ると、オトコって意外にイジりの一つで抱きついてきたりとかするんですよ。ホントこういうのメーワクですしね...これ同性愛じゃなくて、マウンティングの一種ですからね、イヤなもんですよ。おばさまみたいに、トランス前でも「女、バレバレ」な状態でしたけども、そんな感じでした。いかに男性が、公式ジェンダーの色眼鏡(観念)で他人を見ているか、ということの証拠のようにも思いますね。

逆に女性の方は「ようこそ女性の世界へ!」ってノリの人が多かったですね。「男してて気の毒な感じだったから...」と、結構ちゃんと見てて、「女の方が向いているから、女でいいじゃん」という対応の友達が多かったです。女性の場合「同性だと思って油断したときに、自分が性被害を受けるか?」というのが一番の懸念事項になるわけですから、これが「ありえない」という判断ならば「女でいいじゃん」という結論になるようです。男性は「女に成り下がる奴」ですけども、女性からは逆に「同じレベルに堕ちる」、まあ男尊女卑でもないけども、そういう感覚が対女性ではそうマイナスに働くわけでもないようです。そう親しいわけでもなかった女性が、強い興味を示して、トランスをきっかけに仲良くなった方というのも、結構いますしね。

まあですから、「革命の日」は「異色なBL」か「屈折したシンデレラ・ストーリー」みたいに読んだほうが適切なようにも思います。男性の方が「人間関係の慣性」みたいなものが強く作用しがちなので、「性別が変わったから、女でオトコたちにモテモテ!」というのは、ファンタジーですよ(苦笑)。性別逆だったら、意外にアリ?という気もしますけどねえ。

文句も言ったけど、絵は華麗。「続・革命の日」の口絵の男子ネクタイスーツがツボ。ま女性の男装だけどね。サポート役の麻琴が作者&女性読者の代弁者みたいなあたりに生彩もあるし。「女帝」って評されるのが笑える。早い話、BLの狂言回しになるような女性キャラのタイプやね。逆ハーだから「四人侍らせているすごい女っっ」ってドリーム(苦笑)。


(あと「先輩はおとこのこ」、ついに、りゅーじ、コクる。「同級生はおとこのこ」にタイトル変えたほうがいいんじゃない?とツッコまれる。次回からは木曜日更新みたい。)