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2023/08/28 16:08

いまMotoGPを席巻しているドゥカティだが、このマシンの基礎はホルヘ・ロレンソが築いた。そう言っているのは現在ドゥカティで、ペッコ・バグナイアのチーフメカを務めているクリスティアン・ガバリーニ。彼はストーナー時代からのドゥカティの艱難辛苦を知り尽くしている人物であり、そのような人物が「ホルヘはドゥカティにいた最高のライダーのひとりだ」と真っ先に名前をあげていることは、ホルヘのライダーとしての優秀さを改めて証明している。

現在のMotoGPでは当たり前となった空力装置だが、その実際の効果をコースの上で誰よりも詳細かつ敏感に感じ取っていたのがホルヘだという。他にもエンジンやシャシーなど、あらゆるコンポーネントの開発に貪欲で、どれほどわずかな変化であっても、ホルヘはそれを見逃さなかったと。

「現在ドゥカティがMotoGPで走らせているマシンに使われているアイデアの多くは、ホルヘのアイデアとフィードバックが元になって作られたものと言っていいと思う」とガバリーニ「その貢献度でいえば、ドビチオーゾと双璧をなす。それくらい優れたライダーだった。いま私が担当しているペッコもそれは凄まじく繊細な感覚を持っていて、マシンに施した変更を見逃すことはない。ホルヘもそうだったけど、彼らの指摘は、エンジニアとしてプロフェッショナルである我々も、時に言葉を失うくらい正確なんだ」

(ドゥカティでは、これから!というところでクビになってしまったホルヘだったが、その走りがドゥカティに及ぼした影響は想像以上に大きかったようだ。:画像はロレンソのインスタグラムより)
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「マシン開発にはぼくくらい繊細な感覚を持ったライダーが必要だ。だからぼくをクビにしたヤマハはつくづくもったいないことをしたものさ」これはホルヘが以前言っていたことだったが、いかんせんホルヘ自身の口から出た自画自賛だったものだから、またホルヘのやつが悔し紛れに何か言ってるぜくらいのものだったが(事実ヤマハはこのホルヘの発言を否定した)、今回第三者によってなされた証言によって、ホルヘのライダーとしての感覚がいかにすぐれており、それがマシンの開発に役立ったかが証明されることになった。ヤマハのジャービスなどは、ライダーがマシンを開発すると思っているような人は現場を知らない「素人」だ(マシンはあくまで設計者とエンジニアが作るものだ)とばっさり切り捨てていたが、そう言っていたヤマハがいまの惨状にいることを考えると、ただ速いだけではない、適切な開発能力(マシンの変化を鋭敏に感じ取ることができる繊細なライダー)を持つことがいかに大切かがおのずとわかるというものだ。

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「いまのヤマハのマシンは、基本的にロレンソが走らせていたものと変わってない」という衝撃的な発言をしているのはヤマハのエースであるファビオ。一向に開発が進まないヤマハのマシンに煮え湯を飲まされ続けているファビオはもう我慢の限界を迎えており、いまのヤマハが遅いのは、マシンの開発をまともにやってないからだ!と糾弾する。「こないだとあるイベントで、ぼくが2021年にチャンピオンになったときのM1と、ホルヘが2015年に乗ってたときのM1が並んでいるのを見る機会があったんだけど、両車は基本的にはほとんど同じで何も変わってなかった。ホルヘがヤマハで走っていたときからいったいどれほどの時間が経ったのかを考えたら、これはさすがにちょっとどうかと思わない?5年前のドカやKTM、アプリリアが、いまとどれほど変わったか考えてみてよ。まったく別物になっているというのに、ヤマハときたらこれだ。もう口で説明するだけの開発にはうんざりした。いまのぼくに必要なのは、具体的な改良を施した、早く走るための"ブツ"なんだ」

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ホルヘはその繊細な感覚により、マシンの開発に大きく寄与したが、その一方で、繊細すぎる感覚は、セットアップの決まっていない状態のマシンではまったくタイムが出せないというウイークポイントを抱えていた。繊細さに関してはホルヘと同等というペッコも同じく、マシンのセットアップが決まらないとタイムが出せない(だからレースウィークがはじまった最初のセッションではだいたい遅いが、セットアップが決まると爆発的な速さを発揮する)という傾向がある。だが、マシンに施した変更点を敏感に感じ取り、その良し悪しを明確に指摘できることは、マシンの開発において欠かすことのできない才能である。

かつてヤマハはテストライダーとしてホルヘを雇ったことがあったが、その時は不可解と思えるほど開発に関してホルヘを直接的に関わらせることをしなかった(テストでは旧型のマシンしか与えず、新型コロナの影響があったとはいえ、年間を通じて2回しか走行の機会しか設けないまま理由の説明もなくクビにした)。

(ドカからホンダに移籍し散々な目に遭ったロレンソはMotoGPを引退し、ヤマハのテストライダーになったが、そこでのロレンソに対するヤマハの扱いには大きな疑問符が灯るものだった。なぜロレンソにそこまで仕事をやらせない?そこには何か表立って言うことができない理由があったはずである。:画像はロレンソのインスタグラムより)

もしあのとき、ホルヘをクビにせずテストライダーとして起用し続けていたら、いまのヤマハの苦境は避けられただろうか?ホルヘはできたと考えており、ヤマハは無理だと否定した。これはホンダにも同じく言えることだが、日本の企業は特に外部からあれこれ指図されることを嫌い、自分たちだけで仕事を完結させようとする。あのときヤマハがある種異様なほどにテストライダーとしてのホルヘの関与を嫌ったのも、もしかするとあけすけにマシンの弱点を指摘してしまうホルヘに干渉されることを避けたのではないかとさえ思えてしまう。

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ここ数日スペインメディアを通じて報道された内容では、マシン開発の遅れをどうにか取り戻したいホンダのアルベルト・プーチは、ドゥカティのジジ・ダリーニャを引き抜くために手を尽くし、どうにか接触のルートを確保、日本のホンダと引き合わせようと手配し、実際の交渉も進んでいたというのに、最終的に日本側はダリーニャとの接触を拒否。いまのドゥカティの隆盛を築いた張本人であるダリーニャを引き抜くことができればホンダにとってこれ以上のことはないはずなのに、ホンダの側から拒否するとはどういうことだ。しかもこれ、交渉はそれなりに進んだ段階で、急に日本のホンダ側がドアを閉めたのだという。これではプーチの恥を忍んでの奮闘もすべて水の泡だし、声をかけられたダリーニャにしてみても失礼な話だ。

そう、ホルヘのヤマハテストライダーの件にしろ、ホンダのダリーニャとの件にしろ、つまりこれがいまの日本メーカーの苦境を招いている元凶なのだ。外からの知見やアイデア、技術を求めず、第三者からの指摘を嫌い、内に籠もった(日本という閉鎖された)環境の中で、自分たちだけで仕事をしたい。それに優秀な誰かが外からやって来たら自分が追い出されるかもしれないだろう!そうした狭すぎるコンフォートゾーンから出ることを惜しんでいるから(怖がっているから)、どんどん世界の潮流から置いてけぼりを食ってしまうのだ。

これが自分たち(日本メーカー)が主導権を取れている状況であれば問題もなかった。単純な技術的な精錬度の優位性だけで世界に(レースに)勝つこともできた。

しかしそうした状況は、ここ数年で大きく変わった。変わってしまったのだ。

変化の激しい世界において、変わることを恐れることは、もはやいまいる場所にすらとどまることもできず、ただ一方的に取り残されていくのみ。その遅れを取り戻そうとあがいている間に、フロントランナーはさらに改善を重ね、先に行ってしまう。だからこそ、より視野を広く持って、これまでにない新しい取り組みを進めていかなければならないときに、日本メーカーが見ているのは相変わらずの内向き視点。外から見知らぬ誰かに来られては、自分の立場が危うくなるとでも考えている「誰か」がいて、それがすべての物事を停滞させているのではないかとさえ思えてしまう。

失敗を恐れすぎるがために、これまでやってきたこと以外に手を付けることができない。でも、何か新しいことをやって、その失敗の責任を取らされたらどうする!

昨今の欧州メーカーの躍進の秘密がここにある。彼らは失敗することを恐れない。もちろんそれでみんなが好き勝手やっているわけではないが、これが勝つために必要なものだと考えたら、それに関わる全員が一丸となって取り組んでいく。失敗しても誰のせいでもないが、成功したらそれは全員の功績だ。だから物事の改善も速いし、失敗することを恐れず新しいことに取り組むことができる。これは現場を束ねるトップが明確なビジョンを持ち、それをチームスタッフ全員とともに共有するからこそできることだ。

トライをしなければエラーもなく、誰からも怒られることもないかもしれないが、そこに進化はない。

苦境にあえぐ日本メーカーよ、もっとトライして、エラーせよ。技術を競うはずのプロトタイプ選手権で、それすらできない(損失を恐れてトライもできずエラーも許されない)というのであれば、もはやレースを続ける意味もないだろう。

https://www.todocircuito.com/noticias/33942-muchas-cosas-de-la-ducati-actual-partieron-de-ideas-de-jorge-lorenzo-reconoce-gabarrini.html
https://www.motosan.es/motogp/lorenzo-se-habria-merecido-un-mundial-con-ducati/
https://mowmag.com/sport/fabio-quartararo-la-mia-m1-come-quella-del-titolo-di-jorge-lorenzo-contro-valentino-rossi
https://mowmag.com/sport/retroscena-clamoroso-honda-ha-chiuso-le-porte-in-faccia-a-gigi-dall-igna-alberto-puig-aveva-fatto-tutto

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