頂き女子からバラまかれる詐取マニュアル

 2023年8月23日愛知県警中署は恋愛感情を利用して現金を騙し取る手口を記載したマニュアルを販売したなどとして、住所不定、東京都新宿区歌舞伎町ソープ嬢・渡辺真衣容疑者(25)を詐欺ほう助の疑いで逮捕した。渡辺容疑者は「間違いない」と容疑を認めている。

 渡辺容疑者は「頂き女子りり」の名前でSNSユーチューブでも活動。これまでにパパ活で3億円騙し取ったと豪語し、『りりちゃん魔法完全攻略マニュアル』『頂き女子の参考書~お金を頂くための設定と極秘会話術~』『1カ月1000万頂く頂き女子りりちゃんのみんなを稼がせるマニュアル』という詐欺マニュアルの電子データを販売。これを2冊2万8000円で購入した信奉者の1人が名古屋市中区の女子大生・家田美空被告(20)だった。

 家田被告は2人の男性から計1062万円を騙し取り、「うまくいきました」と渡辺容疑者にDMで報告していた。渡辺容疑者も家田被告に電話でアドバイスしていたという。

◆21万→300万。騙し取る金額は増え続けて…

 家田被告はスマホを2台使い、1人2役で別々の人間を演じ、ターゲットにした男性には「村上かな」と名乗って近づいていた。

 愛知県知立市会社員の男性(43)はマッチングアプリで「村上かな」と知り合い、同居をほのめかされるなどして、恋愛感情を抱いた。

 すると、「村上かな」から「同居している友人に家賃を3カ月分滞納しているのを肩代わりしてもらっている。これを支払わないと同居できない」などと言って、21万円を振り込ませた。このときは友人の名前として、本名の家田美空名義の口座を振込先に指定していた。

 さらに「大学の入学金を家田に借りている。70万円を返さないと、同居できない」とウソをつき、70万円を騙し取った。

 被害者が疑わないことをいいことに、「私が家田の保証人になっており、180万円返さなければならなくなった。AVに出ないと返せない」と泣きつき、その金も騙し取った。

 その後、本名の家田美空の名前で「責任を感じたかながAVの契約書にサインしてしまった」などとウソのメッセージを送り、動揺している被害者に対し、再び「村上かな」に戻って、「違約金を払う方向で考えています。300万円あれば助かる」などとLINEし、その金を騙し取った。

 ここらが潮時と考えた家田被告は、「かなが拉致された」というメッセージを送り、それっきり連絡しなくなった。

◆60代男性も同じ手口でターゲット

 家田被告に騙された被害者はもう1人いる。名古屋市守山区の自営業の男性(63)は、マッチングアプリで「村上かな」と名乗る家田被告と知り合い、まったく同じ手口で「マンションの家賃を滞納しているから、同居ができない」と持ちかけられ、21万円を騙し取られた。

 さらに「風俗スカウトマンに170万円借金している」という作り話をして、行きつけのホストクラブに勤務している岡島弘樹被告(25)に協力を要請し、風俗スカウトマンに成りすました岡島被告が男性から170万円を騙し取った。

 最終的に家田被告が持ちかけたのは「風俗店で働く契約書にサインしてしまった。違約金300万円を支払わなければ、風俗で働くことになる。だから同居はできない」と言って、男性に300万円を用意させ、地下鉄矢場町駅で受け取ったというものだ。

 家田被告はこの男性に対しても「かなが拉致された」と言ってフェイドアウトし、村上かなと家田美空の身を案じた男性が警察に相談して事件が発覚。奇しくも2人の被害者が同じ時期に同じ内容で相談に訪れたのだ。

マニュアルを買った“信者”は他にもいる

 家田被告と岡島被告は詐欺容疑で逮捕された。家田被告の自宅を家宅捜索した結果、渡辺容疑者の作った詐欺マニュアルが発見された。警察は少なくとも数十人が渡辺容疑者の詐欺マニュアルを購入していたとみて、余罪を調べている。

 渡辺容疑者はターゲットにする男性を年齢に関係なく、「おぢ」と呼び、ユーチューブの中で「おぢ」の特徴を次のように語っている。

「頂けるおぢの特徴は、生きる希望がない、生きがいがないような、毎日仕事して、帰って寝て、毎日帰って仕事して寝て、何で生きてるんだろうな、生きる意味を見出せてないようなおじさん。こうしたおぢに近づき、日常会話と色恋会話という2種類の会話を使い分け、おぢとの距離を詰めていく。色恋会話っていうのは、『好きだよ、結婚しよう』という会話じゃなくて、『おぢと話してると落ち着くなー』とか、直接好きとか伝えないけど、『オレって特別なんだ』と思わせるような会話がいい」

 少なくともマッチングアプリで知り合い、干支で二回り離れた女から、結婚や同居を持ちかけられたら、詐欺と思って間違いない。

「頂き女子りりちゃん」こと渡辺容疑者。本人のYouTubeより