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札幌市の総合病院の元事務方トップと、調剤薬局大手のトップが31日、北海道警に逮捕された。競合他社の提案内容を漏らした入札妨害事件の舞台は、病院敷地内にある調剤薬局だった。多くの利用者を独占できるうまみを背景に、病院と大手調剤薬局チェーンの間に癒着が生まれたのか。
「心臓疾患があり通院したが、病院から出てすぐに薬局があり、楽だった」
同市豊平区にある「KKR札幌医療センター」の敷地内にある「アイン薬局」を利用した札幌市南区の建設業の男性(42)は、利便性を語った。
この事件では、同センターの事務部長だった藤井浩之容疑者(62)と、調剤薬局大手アインファーマシーズ社長で、親会社「アインホールディングス」取締役だった酒井雅人容疑者(54)らが公契約関係競売入札妨害容疑で逮捕された。
敷地内薬局は、処方箋を出す病院と内容をチェックして調剤する薬局の独立性を保つ「医薬分業」の観点から、長く禁止されていたが、2016年に規制緩和で認められた。
アイングループは解禁後に積極的に敷地内薬局を展開し、旭川医大病院や東大病院(東京)などに開店してきた。利便性に優れた敷地内薬局は高い収益性が見込め、日本薬剤師会などによると、2017年8月に48店だった敷地内薬局は、22年6月に256店に増えた。
ある調剤薬局チェーンの関係者は「処方箋を独占でき、周辺で圧倒的一番になれる。病院がつぶれない限り薬局をたたむことはない」と打ち明ける。また別の関係者は「地方の公立大などの敷地内にあると、知名度や信頼度のアップにつながる。事件を受け、敷地内薬局が制限されなければいいが」と語る。
アイングループは調剤薬局最大手。有価証券報告書などによると、従業員は約1万人で、店舗数はグループ全体で約1200店に上り、業界1位。今年4月期連結決算で売上高は3587億円と、業界2位の日本調剤と約450億円の差をつける。
アインホールディングスの大谷喜一社長は「厳粛に受け止め、捜査に全面的に協力する。多大なご迷惑とご心配をおかけし、心よりおわびする」とコメントした。同医療センターは「誠に遺憾。深くおわびする」とした。