雪山のロマンス(ドラえもん)

登録日:2019/04/07 Sun 23:50:31
更新日:2022/05/31 Tue 18:18:56
所要時間:約 6 分で読めます




「雪山のロマンス」とは、漫画 ドラえもんのエピソードの一つ。
小学六年生1978年10月号掲載時のタイトルは「14年後、ぶじ(??)しずちゃんと結婚」であり、項目名はてんとう虫コミックス20巻に収録された際のタイトル。

【概要】

「ドラえもん」を知っている人間なら、ドラえもんがやって来たことで最終的にのび太しずかちゃんが結婚する未来になることは知っているだろう。

このエピソードはのび太としずかちゃん、2人が婚約するきっかけとなる出来事を描いた、いわば「のび太の結婚前夜」のさらに前日談とでもいうべきエピソードであり、映画「STAND BY ME ドラえもん」でも使用されている。

なお、このエピソードではのび太がドラえもんに手を出さないよう言ったので、ドラえもんはわりといつものことではあるが前半と終盤しか出番が無く、ひみつ道具と呼べるアイテムは「タイムふろしき」「タイムマシン」「タイムテレビ」の定番アイテムの中の3品しか登場していない。

【あらすじ】

ある日の放課後。しずかちゃんに一緒に宿題しようと誘うのび太。しかし…

いやあよ。

いつもいっしょに宿題やろうといって、
あたしの答えを写すだけでしょ。

たまには自分でやらなくちゃだめ!

と断られてしまう。

帰宅したのび太はドラえもんに「こんな調子で本当に自分はしずかちゃんと結婚できるのか?」と不安を打ち明ける。
だが、ドラえもんもかねがね不思議に思っていた。

あんないい子がなんだって
よりによってのび太くんなんか(●●●●●●●●)と。

もう少しましな男がいっぱいいるのに…。

と、例によって毒を吐きつつも、のび太の頼みでその辺の事情を確かめるべく、タイムテレビで婚約成立前の2人を見てみることに。

2人が婚約するのは14年後の10月25日。その少し前の未来を映すと、美しく成長したしずかちゃんと、風邪気味で鼻水を垂らしたのび太青年が映った。

はっきりしてよ。行くの?行かないの?

行きたいんだけどね…。坂道によわくてねえ。平らな山ならいいんだけど…
天保山「呼んだ?」日和山「呼んだ?」

どうやら、しずかちゃんがのび太を雪山登山に誘っているようだが、煮え切らない態度ののび太にしずかちゃんは「いいわよ、もう。ほかのお友だちと行くから」と怒って帰ってしまう。
観ていたドラえもんも「ちっとも進歩していない。」と呆れ、少年のび太も「見ていられないや」と目を覆ってしまう。

時間を進めると、しずかちゃんは猛吹雪の雪山で仲間とはぐれており、一方ののび太青年は風邪が悪化して家で寝込んでいた。
未来の自分の情けなさに、のび太は画面に背を向けてしまう。

だが、ふと閃いたのび太は、ドラえもんからタイムふろしきを借りて被り、14年後の姿になる。
これからタイムマシンで未来に向かい、青年のび太としてしずかちゃんの救助に向かおうというのだ。
『助けられたしずかちゃんは「たのもしいわ!」とのび太に惚れこみ、そして結婚へ至る』…というのがのび太の考えだ。
そして物資を持ってパパのコートを羽織り、「自分だけの力で助けるから」とドラえもんの助力を拒否して意気揚々と未来に向かう。


し~ず~~ちゃ~~ん。

見~つけた!!

そしてのび太は、到着早々にしずかちゃんを発見して合流。

お~い

のび太さん!!きてくれたの!?

救助に来てくれたのび太にしずかちゃんは安心したように笑顔を見せた。
のび太はまずは重そうな彼女のリュックを代わりに持つ…が、体力は少年のままなのか、重すぎて動けなくなってしまい、やはりしずかちゃんが背負うことに。
次に冷静に「そうなんしたらでたらめに歩いちゃいけない。かならず地図でたしかめる。」と持参した地図を広げる。
だがそれは世界地図だった。*1
しずかちゃんは「のび太さんらしいわ。」と苦笑いし、オートコンパスという道具が道を教えてくれるので心配ないという。

しばらくして岩穴を見つけた2人は、火を起こして一休みすることに。
ここでものび太はいいとこを見せようと、岩穴に転がっていた枯れ木で火を起こそうとする。
だがなかなか上手くいかず悪戦苦闘していると、しずかちゃんがライターを差し出した。

ライターがあるなら はやくいえよ。

あまりはりきってるから 悪くて……。

2人でたき火に当たるが、のび太はなかなか温まらずにくしゃみをする。
しずかちゃんも寒いだろうと、着ていた自分のコートをしずかちゃんにかける。

きゃっ、ぐしょぬれ。

温まらないのも当然、のび太のコートは吹雪で濡れてしまっていたのだ。
しずかちゃんは着替えのないのび太に毛布を貸す。

なんとか挽回したいのび太は、大量に持ち込んだ非常食のかんづめを広げる。

食べものはたくさん持ってきたからね。

ほんと!?うれしいわ。

一度は喜ぶしずかちゃんだったが…

でもまさかかんづめばかりもってきて、
かんきりを忘れたなんてんじゃないでしょうね。

しずかちゃんの予想は的中。落ち込むのび太に、しずかちゃんは一粒でお腹いっぱいになる未来の携帯食料を分けた。
その後疲れ切ったのび太はしずかちゃんから寝袋を借りて熟睡。しずかちゃんは火の番をしながらのび太の寝顔を見つめる。

翌朝、吹雪が止んだのを見計らい2人は再び下山を開始。
当初はしずかちゃんの手を引き誘導していたのび太だったがすぐに転んでしまう。

足をくじいた、めがねをなくした、もう歩けな~~い。

トランシーバーで救援をたのんでおいたの。もうすぐくるからがんばって。

すっかりヘタレたのび太は、逆にしずかちゃんに励まされる始末。

その後、2人は無事下山できたようで、のび太は元の時代に戻ってきた。

さんざんだった。もうおしまいだ。

結局のび太はしずかちゃんを助けるどころか、1人でも下山できた彼女の足を引っ張り続けては逆に励まされるなどの醜態をさらしただけだっだ。

ドラえもんはその後の2人がどうなったかタイムテレビで確認しようとするが、少年の姿に戻ったのび太は「見たくもない!」と目を背ける。

しかし、タイムテレビに映し出されたのは思いもよらない展開だった。

のび太さんと結婚するわ。

あ、あ、ありがとう!!

そばについててあげないとあぶなくて見てられないから。

なんと、しずかちゃんが青年のび太と結婚することを選んだのだ。しずかちゃんと結婚できる事に、青年のび太は思わず感涙した。
しかし、これを見た少年のび太は……

こんなみっともないのいやだっ、まっぴらだっ。

だったらもう少したくましい男になるんだね。

感涙する青年のび太のヘラヘラした情けない顔と、しずかちゃんがのび太と結婚することを決めた理由に文句を言う。そんな少年のび太を、ドラえもんは多少辛辣ながらも応援するのだった。


【アニメ版】

のび太としずかちゃんの重要エピソードだけあって、スペシャル版での放送が多い。
そして世代が下るごとにわざわざプルトップ式じゃない缶詰ばかり選んだのかというツッコミどころが目立ってきている。

大山版「雪山のロマンス」

1980年2月29日に放送された。
のび太がタイムふろしきで成長するシーンでは、その頃は設定が固まっていない影響なのか本来新しく(=若く)させるはずの赤い面を上にしていた。
二人が婚約を交わすシーンではさりげなく「オバケのQ太郎」のQ太郎が出演している。
DVD「TV版ドラえもん」第21巻に収録。

大山版「雪山のプレゼント」

1989年5月5日にスペシャルの一本として放送された。
おおむね原作コミック通りだが、ぐしょ濡れのコートの下りでの2人は声優の演技により幼い息子とそれを叱る母親感が出ている。
DVD「TV版SP特大号冬の巻1」に収録。

わさドラ版「雪山のロマンス」

2005年12月31日に「新生ドラえもん 初の大晦日3時間スペシャル」で放送。
20分越えの長尺で、大幅にシーンが追加されている。細かい部分では、タイムテレビが「未来テレビ」という名前に変わっている。
冒頭に教室で相性占いをするシーンが追加、一緒に宿題をしようと誘うシーンに出木杉がいる、
タイムテレビで見る登山前のシーンで2人で焼き芋を食べるシーン*2と、その際にのび太が人生を山に例えたガラにもないキザったらしいプロポーズをしようとして未遂に終わる*3、ラストシーンなどが原作コミックとの相違点だが、一番の相違点は、しずかちゃんと一緒に登山をしてはぐれた「ほかのお友達」として青年スネ夫ジャイアン、出木杉が登場するところだろう。
そのため少年のび太が救助に向かうのは「出木杉に先を越される前に自分が助ける」という感情によるところが大きいように見える。
一方でしずかちゃんが「自分のために無理を押してきた」のに空回りしてばかりののび太を優しく見つめたり微笑みかける場面も度々見られ、タイトル通り「ロマンス」を感じさせる部分もある。

DVD「NEW TV版 ドラえもん」vol.30などに収録。

わさドラ版「雪山のロマンス」(2回目)

2013年12月30日に「のび太としずかが結婚!?年忘れだよ!ドラえもん1時間スペシャル」で放送。
BGMや演出はコメディ感が強くなっている。
青年のび太が雪山行きを渋るシーンがよりによって山に向かうバスの出発当日になる。それじゃしずかちゃんやドラえもんじゃなくても呆れる。
救助に向かったのび太はしずかちゃんを吹雪の中凍えながら探すシーンが追加、雪山に向かない薄着であったことが強調されている。
そして、その場面をタイムテレビで観たドラえもんが「のび太くんまで遭難したら大変だ」とどこでもドアとタイムベルトで現地に向かうのが最大の相違点。
中盤から出番が無くなる原作・他のアニメ版と異なり、ドラえもんが(のび太としずかちゃんに気づかれていなかったとはいえ)話にしっかり関与する展開になっている。
だが、未来に着いたドラえもんは弾みで雪崩を起こして2人が潜む岩穴を塞いでしまい自分も2人が出発するまで動けなくなるという大失態を犯している。そしてそのまましばらく雪の中に埋もれていたのだが、流石はロボットと言うべきか、凍死したり凍傷を負うことなく、更には全く寒がりもしないで目を覚ましたらすぐに行動している。あれ?ドラえもんってかなりの寒がり設定だったような
ラストにもアレンジが加えられている。
しずかちゃんと仲間が無事合流した後、ドラえもんはヘロヘロになったのび太を救出し、二人でこっそり現代に帰る。
そしてしずかちゃんが町に帰ると、遭難の報を受けた青年のび太が風邪でフラフラになりながらもしずかちゃんを助けに行こうとしているところに出くわす。
落としたカバンから缶詰が転がるのを見たしずかちゃんが、以前のプロポーズの答えとしてのび太と結婚することを誓う。
少年のび太が「こんなみっともないのやだ!」と文句を言ってるところにしずかちゃんが「分からないところがあったら教えるから、一緒に宿題しましょう」と誘いに来たところで終わっている。

DVD「TV版SP白銀の世界を大冒険!」に収録。

【余談】

  • 上記の、しずかが結婚を確信した動機については、2014年8月9日に放映された「のび太のおよめさん*4」で補完されており、彼女は「少しおっちょこちょいの部分もあるけど、優しくて思いやりがあって、全部大好きよ」と語っている。

  • 婚約記念日は上記の通り10月25日で確定しているが結婚記念日までは公式では定められていない。「のび太の結婚前夜」でもアニメ化される際に時期の描写が変わっており、原作漫画では男性陣が半袖の服を着ておりしずかがノースリーブのワンピースを着ている(≒冬頃ではない)のに対して、劇場版ではタンポポが咲いている(=春頃)が、わさドラ版では長袖の服を着ておりのび太としずかがコートを着ている描写がある(≒夏頃ではない)と言った感じで定まっていない。ただ、それらの描写では結婚したのは春頃である説が有力となっている。

  • 『ドラえもん 国語おもしろ攻略 ことわざ辞典』の「学問に王道なし」の四コマ漫画で、のび太はしずかちゃんと一緒に宿題していたが、今回の話でも言っていたようにしずかちゃんの答えを写すだけであった。翌日、それが先生にバレたのび太は、その日の放課後から1時間補習を受ける羽目になった。


追記・修正はあぶなくてみてられない人のそばでお願いします。

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最終更新:2022年05月31日 18:18

*1 仮に適した地図を持ってきてたとしても、雪山とはいえ14年後も通用するか疑問なとこだが。

*2 小学生のしずかちゃんは焼き芋好きを恥ずかしがって隠しているので、彼女の成長と2人の仲の進展が垣間見えるシーンである。

*3 ちなみに少年のび太自身もピンと来てない微妙な台詞

*4 わさドラには2005年版と2014年版の2種類あるが、該当する後者では原作と同じくのび太の誕生日である8月7日が舞台となっており(前者では誕生日の要素が含まれていない)、加えて彼の誕生日の要素を大きくアピールされている。