発酵乳製品の代表格である「ヨーグルト」は、ミルク(乳)を乳酸菌や酵母の働きで発酵させたもの。牛をはじめ、ヤギ・羊・水牛・馬などの乳を原料にしたさまざまな種類があり、世界各地で親しまれています。牛乳を原料とするヨーグルトには、たんぱく質やビタミンB2、パントテン酸、ビタミンA、カルシウムなど、牛乳の栄養価がそのまま受け継がれています。また、それらが発酵の過程で分解されて消化吸収が良くなるため、牛乳よりも効率的にとり入れることができます。さらに、乳酸菌により牛乳に含まれる乳糖が分解されるので、牛乳を飲むとお腹がゆるくなる人でも安心して食べることができます。
ヨーグルトの起源は諸説ありますが、6000〜8000年前の中央アジアだといわれています。遊牧民がヤギや羊の乳を使うようになり、容器に入れておいた乳にたまたま乳酸菌が入り込んで発酵し、ヨーグルト状になったのが始まり。中央アジアの乾燥した気候の下、乳が腐敗せずに発酵が起こったと考えられています。
ヨーグルトが健康にいいと注目されるようになったのは、1900年代前半のこと。ロシアの動物学者で微生物学者、しかも免疫学の研究をしていたメチニコフ博士が、訪れたブルガリアに長寿者が多いことを発見。日常的に食べられているヨーグルトの乳酸菌が腸内腐敗を抑制、老化を遅らせるという「ヨーグルト不老長寿説」を唱えました。以降、ヨーグルトの製法が簡単なこともあり、世界中に普及しました。
日本におけるヨーグルトの始まりは、明治時代に乳牛が輸入され牛乳が販売されてから。売れ残りの牛乳を発酵させ「凝(ぎょう)乳」として発売されものが、日本初のヨーグルトでした。ただし当時は整腸剤として販売されており、ヨーグルトが一般化し本格的に生産されるようになったのは、1970(昭和45)年の大阪万博で紹介されてからのこと。一般家庭の食卓に定着したのは意外と最近のことなのです。
ヨーグルトの基本的な材料は原料乳と乳酸菌のみ。生乳に種菌(乳酸菌)を加えて発酵させますが、原料をタンクで発酵させてから容器に詰める「前発酵」と、原料を容器に詰めてから発酵させる「後発酵」があり、「前発酵」はドリンクタイプ、「後発酵」は食べるタイプのヨーグルトとなります。
どちらも発酵の過程で、乳酸菌が乳に含まれる糖分(乳糖)を分解して乳酸を生成します。乳にはカゼインというたんぱく質が含まれており、たんぱく質は酸によって凝固する性質があります。そのため、乳酸によってカゼインが固まり、ヨーグルトができるのです。なお、ヨーグルトの爽やかな酸味も乳酸によるものです。
ちなみにヨーグルトが固まるとその上に透明な上澄み液ができますが、これは乳清(ホエイ)といい、栄養素が豊富に含まれています。
ヨーグルトは製法や形状の違いによって、次の5種類に分類されます。
乳酸菌とは、糖類を分解して乳酸を主に生成する細菌の総称で、数百種類あるといわれています。なかでも「サーモフィラス菌」と「ブルガリア菌」は、おいしいヨーグルトをつくる乳酸菌として知られています。
生育の早いサーモフィラス菌は、増殖の過程でブルガリア菌の生育に必要な蟻酸(ぎさん)をつくります。ブルガリア菌はこの蟻酸を取り込んで増殖し、同時にサーモフィラス菌の生育に必要なアミノ酸やペプチドをつくります。このように2つの菌はお互いにサポートし合いながら、よく増殖するという性質があります。
ほかにも保健機能を高めるために、さまざまな乳酸菌がヨーグルトに使われています。例えば、人間の腸内にすみついて有害な菌の繁殖を抑え、腸の働きを良くする「ビフィズス菌」、生きて腸まで届いて定着し、腸内環境を改善する効果や免疫力を高める効果があるとされる「アシドフィルス菌」や「ガセリ菌」などが有名です。
古くから世界中で食べられているヨーグルト。その土地ごとに原料乳や乳酸菌の種類が異なります。日本ではそのまま食べることが多いですが、海外では料理に使われることも多いです。