「金利など上げる必要がない」
そこで、9月は「金利(5.33%)> インフレ率(3.2%)」なのですから、(1)の「9月会合での利上げは慎重に判断する」の解説になりますが、金利など上げる必要がない、と言っているのです。
しかし、インフレは終息しつつあるが、(3)の「個人消費が旺盛なことを背景に利上げを行う可能性がある」で示したように、個人消費が旺盛であるから、そのお金を使って消費者が多くの物品を買う可能性がある。それによってインフレが再懸念される可能性がある、と言っているのです。
もっとわかりやすくいえば、コロナ禍のサプライチェーンの混乱によって起こったインフレは終息している可能性があるが、今度は好景気によって物価が上昇する可能性がある、と言っているのです。
そのことを理解できない記者や金融関係者が、本当に、星の数ほどいるわけです。この人たちは言っている意味がわかっていませんので、この人たちの解説も何を言っているのかさっぱり理解できないのです。
解説している人たちが議長は何を言っているのか理解できないのですから、それを読んでも余計にわからなくなるのは必然でしょう。
パウエル議長は「これから景気がよくなる」と言っている
そして、パウエル議長が「インフレ率3.2%は高すぎる」と言っているのも理解できない方が多いのでしょうが、これは単年で考えるからです。
たとえば、年利2%と年利3%の「3年後」をそれぞれ見てみると、よくわかります。
<年利2%の場合>
1年後 2年後 3年後
100 → 102 → 104 → 108
<年利3%の場合>
1年後 2年後 3年後
100 → 103 → 109 → 127
3年経過すれば、2%の場合は8%の上昇になりますが、3%の場合は27%も上昇してしまうのです。1万円だったものが3年後には1.27万円になるのです。
これはいくらなんでも、肌感覚で誰でも「インフレがひどすぎる」と感じるでしょう。8%であれば消費税ですので、「ま、こんなものか」と耐えられるインフレだと感じると思います。
パウエル議長はずっと「景気抑制的な政策を維持する」と言っているのですが、これを記者や金融関係者が「不景気」と言っているのにも驚きしかありません。
議長は「これから景気がよくなるから、それを抑制しなければいけない」と言っているのです。それなのに、それを「不景気だ」と拡大解釈しているのです(笑)。私からみれば、呆れてモノが言えない状態です。
私はずっと「景気が悪くなるわけがない」と言っていますが、「コンセンサスは不景気」なんてことは先月までありました。ちっとも議長の言っていることを理解していないと思います。