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ウィキリークス事件

外交官は今もなぜ機密を公電で送るのか

2010年12月1日(水)18時09分
ジョシュア・キーティング

「OVIP」「NOFORN」など暗号のオンパレード

 外交公電のもう一つの特徴は、誰がこの情報にアクセスできるかについての細かな指示が含まれていることだ。暴露された公電の冒頭にもある「OVIP」「PREL」「PGOV」などの略語がそれだ。秘密の度合いも「公開」から「機密(シークレット)」「最高機密(トップ・シークレット)」まで段階分けがある。

 ウィキリークスが暴露した文書のなかにはこれまで最高機密は見つかっていない。これは、情報をウィキリークスに流した人物が「機密」レベルのアクセス資格しか持っていなかった可能性を示唆している。暴露文書には「NOFORN」と書かれたものも多いが、これは「No Foreigners(外国政府に知られてはならない」)」の略。

 9・11テロ以降、政府の異なる機関同士で情報共有を進めようとする努力の一環で、各国にある在外公館は外交公電を「SIPRネット」として呼ばれるデータベースにアップロードするようになった。SIPRネットは、国務省だけでなく米軍のスタッフもアクセスできるデータベースだ。つまり、ウィキリークスへの情報提供者を含め「機密」レベルのアクセス資格をもった300万人の兵士や官僚や政治家が、これらの情報を手に入れられたということだ。

 今や「ケーブルゲート」と呼ばれるようになったこの情報漏えいを重く見て、オバマ政権は国務省に情報共有手段を見直して再発を防止するよう指示した。5世紀に渡って国際政治の重要手段として使われてきた外交機密文書は、現代の情報公開の流れのなかにあっては、とんだお荷物になってしまったのかもしれない。

Reprinted with permission from Foreign Policy , 1/12/2010. © 2010 by The Washington Post Company.

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