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Obbligato:社内報に見る「東映の支柱」③

 今回の「東映の支柱」は、谷俊夫(谷明憲)さんです。

 谷さんは、このブログで紹介いたしました、東映時代劇映画全盛時代に活躍した伝説の殺陣師・足立伶二郎に師事し、足立から学んだことを活かしつつ、若手殺陣師として、『十七人の忍者』『集団奉行所破り』『大殺陣』などの東映集団抗争時代劇や『博奕打ち 総長賭博』、『緋牡丹博徒』など任侠映画にて、新たな殺陣に取り組みました。

 また、テレビ時代劇においては、大川橋蔵主演『銭形平次』、高橋英樹主演『桃太郎侍』など大ヒット番組で、昔ながらの華麗な殺陣を振り付け、時代劇スターを引き立てました。

「殺陣師」(社内報「とうえい」1958年11月号)

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 谷さんは1962年剣会の次世代を担う人々と「青樹会」を立ち上げ、会長に就任します。第一回の公演が大阪の四天王寺会館で開催され、そのパンフレットには両御大をはじめ、東映スターの面々が祝辞を寄せています。

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谷さんと剣会同期の殺陣師・中村和光さん所蔵パンフレット

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谷俊夫・青樹会青樹会会長あいさつ

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    市川右太衛門・片岡千恵蔵、両御大のメッセージ

 当時、谷さんは、松竹から東映に移籍してきた近衛十四郎主演の『柳生武芸帳』シリーズの豪快な殺陣に取り組んでおり、また、1963年2月に東京から京都に戻ってきた企画部次長・渡辺達人が進めた『十七人の忍者』から始まる集団抗争時代劇の殺陣で、これまでの東映にないリアルな殺陣にチャレンジしていきます。

 そして、1966年に師匠・足立伶二郎が東映を離れ、同じ頃、谷明憲と改名した谷さんは剣会の柱として、任侠映画や大人気テレビドラマ『銭形平次』や『桃太郎侍』などで活躍し、その後、東映を離れてからは「谷剣優会」を立ち上げ、美空ひばりや北島三郎などの舞台を中心に殺陣師として活躍されました。

 松竹『必殺』などにも参加した谷さんは、1989年降旗康男監督『将軍家光の陰謀 激突』において、久しぶりの東映で殺陣師として腕を振るい、アクション監督の千葉真一と共に激しいアクションシーンを演出しました。

 谷さんは、その後も殺陣師として幅広く活躍し、2017年7月5日に逝去されました。


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