長年の構想としてやりたいことは「個人の認知システムを化学的にハックすること」です。有機化学も薬学もウェブ案件も、そのためのピースだと捉えています。生きてるうちに何がどこまで実現出来るのかすら、よく分からない次元の話ですが・・・。 現在は職業化学者として、医薬品など複雑化合物の新規合成法や、タンパク質への化学的人工機能付与・人工模倣体の創出に関する基礎研究を行なっています。これはものづくり技術の拡張として大切です。 学術変革領域(B)「糖化学ノックイン」を領域代表として遂行しています。ここで開発を目指す技術は、物質を適切な場所に送達するための反応化学的手法、すなわちものづくりの産物を生命系で効率良く働かせるための新技術になると夢想しています。概要は、解説マンガをご覧下さい。 https://glycan-chemical-knockin.com/research/comic 本業の傍ら、国内最大の化学ポータルサイト 「Chem-Station」 の副代表兼ライター、化学とアート/エンタメの融合を目指すコミュニティ「ARchemisT」の一員として活動しています。 いわゆる文筆業・メディア業であり、民衆が備える世界観や科学的理解といった情報科学・認知科学的側面に向き合いつつ、効果的に影響をおよぼし発展させて行くことを意図した取り組みだと位置づけています。 https://www.chem-station.com/ https://archemist.org/ いろいろ面白そうだと直感されたことに簡単に首を突っ込んでしまい、ある程度理解出来たとするタイミングで拘り無く放り投げるタチなので、趣味と呼べるものはその時々で一定していません。あえて言うなら「新しいことへの挑戦」が趣味と言えるでしょうか。たまーに深掘りするまで残る活動があり、それは今でも続いています。 パーソナリティをさらに知りたい奇特な方は、下記寄稿記事をご参照いただくのが良いかも知れません。 https://doi.org/10.14894/faruawpsj.57.5_409_1 http://k-oisaki.raindrop.jp/wp-content/uploads/2023/04/SSOCJ_2023_Oisaki.pdf
Protein Modification at Tyrosine with Iminoxyl Radicals
Katsuya Maruyama, Takashi Ishiyama, Yohei Seki, Kentaro Sakai, Takaya Togo, Kounosuke Oisaki*, Motomu Kanai*
J. Am. Chem. Soc. 2021, 143(47), 19844–19855.
- 要約
- タンパク質の翻訳後修飾(PTM)は、その機能を可逆的に制御する生物学的メカニズムである。特定の天然アミノ酸における合成タンパク質修飾(SPM)は、PTMを模倣できる。しかし、疎水性アミノ酸残基における可逆的なSPMは限られている。 本論文ではイミノキシルラジカルとタンパク質チロシン側鎖の新たな反応性を解明し、ラジカル活性種の立体的・電子的な要因に依存した結合可逆性を示すことを明らかとした。本法を利用したチロシン残基でのタンパク質修飾・脱修飾過程は、酵素やモノクローナル抗体についてタンパク質機能のオンデマンド制御を可能とした。
- エピソード
- 2014年に種を見つけてから完成するまでに7年半かかるという、反応開発研究としては考えられないスパンで行われました。進める度に予想もしない現象が見付かる反面、それを無為にしないような最適化はかなり骨の折れる作業でした。つまりは未開拓なところを掘っていた証だと思うのですが、反面、長くゴールが見えない状態が続き、息切れしないようにするのが大変でした。 【紹介記事】 https://www.chem-station.com/blog/2021/12/tyrosine.html
Transition Metal-Free Tryptophan-Selective Bioconjugation of Proteins
Yohei Seki, Takashi Ishiyama, Daisuke Sasaki, Junpei Abe, Youhei Sohma, Kounosuke Oisaki*, Motomu Kanai*
J. Am. Chem. Soc. 2016, 138(34), 10798–10801.
- 要約
- タンパク質の化学修飾は、遺伝子操作に依存する手法のみでは容易に到達できない超自然的タンパク質機能へ導くことを促します。しかし、構造完全性や均質性を維持しながら、反応の選択性を精密制御することは、依然として困難な課題です。本論文では、有機ラジカルを用いた遷移金属フリーのトリプトファン選択的タンパク質修飾法について報告する。この方法は交差反応性が低く、タンパク質の高次構造や様々な官能基に対して高い許容性を示します。また、存在比・露出度の低い疎水性アミノ酸を標的にできるため、均質なバイオコンジュゲートの形成に寄与し、場合によってはタンパク質結晶構造解析にも適する純度を生体適合条件下にて提供する。
- エピソード
- 当時としては先進的な「トリプトファンのみを狙えるタンパク質修飾法」の報告です。低分子化合物を有機ラジカル触媒系で変換する知見を積み上げ、ペプチド・タンパク質変換へと展開する中で、セレンディピティ的に発見されました。が、ある程度複雑な分子を対象にすれば面白い結果が見付かってくるだろうと期待していたところも一部あり、試行錯誤が少ないうちにそういう成果に直面できたのは、まさに幸運なことでした。 【紹介記事】 https://www.chem-station.com/blog/2016/09/bioconjugation.html
Development of Highly Chemoselective Oxidative Transformations by Designing Organoradicals
Kounosuke Oisaki*
Chem. Pharm. Bull. 2018, 66(10), 907-919.
- 要約
- 薬学分野における有機合成では、ドラッグライクネスの高い化合物を簡便かつ迅速に供給できる方法論が強く望まれている。独自の触媒設計コンセプト「Radical-Conjugated Redox Catalysis(RCRC)」に基づき、一電子移動過程の高い反応性と化学選択性を利用して、種々のC(sp3)-H官能基化およびタンパク質修飾法の開発を行ってきた。本解説では、共同研究者との8年間にわたる研究について、構想から成果までを中心に紹介する。
- エピソード
- 日本薬学会奨励賞の受賞記念解説記事です。所属研究室にて行ってきたそれまでの研究成果を総括した内容となっています。オープンアクセス。 せっかくなのでということで、インパクトある表紙を提供出来たことがこの論文の最大の効能かも知れません(笑)。 【表紙】 https://twitter.com/annin_oiko/status/1046697754473287680
Best Paper Award 2020 in SYNTHESIS
2021年
対象となった研究(https://doi.org/10.1055/s-0040-1707114 )については、類似コンセプト論文が別グループから先に出版されてしまい、悔しい思いをしていました。Thieme Chemistry Journals Awardの記念招待として寄稿したことも手伝ってか、Editorの目に留まり、有機合成化学ジャーナル・SYNTHESIS誌から栄誉ある賞をいただけました。世界中の投稿論文から、専門家の目をくぐり抜けて年間1報だけ対象になるという狭き門なので、研究も浮かばれたと思います。 【SYNFORM誌による受賞インタビュー】 https://www.thieme.de/statics/dokumente/thieme/final/en/dokumente/tw_chemistry/CFZ-Synform-BPA-2020-Kanai-SynthesisHL.pdf
新学術領域「精密制御反応場」若手レクチャーシップ賞
2019年
2019 年10 月 27 日~ 11 月 7 日の間、公募班として参画していた新学術領域研究「精密制御反応場」のご支援により、イギリス国内5 機関(Imperial College London、Nottingham、Bristol、Glasgow、Manchester)を訪問し、講演する機会を頂きました。 【講演旅行記】 http://k-oisaki.raindrop.jp/wp-content/uploads/2022/11/lectureship_awar_experience_oisaki.pdf
Thieme Chemistry Journals Award
2019年
学術出版社であるThieme Chemistryが授与する、有機合成化学国際賞で、若手研究者が世界に向けてビジブルになる、一つのきっかけとなっています。代表的な国内若手賞を授与された研究者のなかから、推薦されているようです。 【受賞者一覧】 https://www.thieme.de/en/thieme-chemistry/thieme-chemistry-journals-award-previous-winners-107365.htm
文部科学大臣表彰 科学技術賞 [理解増進部門]
2019年
科学啓蒙・啓発活動に対して与えられる表彰の中では、国内最高の権威を誇るものだと思います。研究歴よりも長い活動である化学ポータルサイトChem-Stationでの情報発信を、『ウェブを通じた化学研究と教育の理解増進』という題で評価頂けたのは、この上ない喜びです。 【関連記事】 https://www.chem-station.com/blog/2019/04/mext.html
Chemist Award BCA
2018年
MSD生命科学財団が授与する、有機化学分野の若手奨励賞です。受賞者のなかからさらに選別されるMBLA Lectureship Awardは、財団のフルサポートで世界各国の有名研究機関へ講演旅行をさせていただけるという豪勢な賞ですが、そちらは力及ばず落選でした。日本の傑出次世代を世界に発信する意図があるようです。 【受賞者一覧】 https://www.msd-life-science-foundation.or.jp/symp/bca/bca_list.html
三井化学 触媒科学奨励賞
2018年
三井化学がスポンサーとなり、触媒科学分野における傑出業績を挙げる若手研究者へと授与されます。隔年賞であること、奨励賞は37歳以下が対象ということもあり、受賞難度はかなり高いと思います。 当時の自分は既にタンパク質化学修飾法へと足を踏み入れていて、もはや触媒反応ですらない成果が多くありました。触媒科学の流れを汲んで開発した事実を評価頂けたということでもあり、進んでいる方向にも自信を得られました。 【受賞者一覧】 https://jp.mitsuichemicals.com/jp/techno/csa/prize_past01.htm
日本薬学会奨励賞
2018年
薬学分野における若手登竜門賞です。 所属していた東大薬学部では、周りの皆さんが当然のごとく受賞していくので、逆に、落選出来ないというプレッシャーもありました。 受賞記念論文(https://doi.org/10.1248/cpb.c18-00501 )はChem. Pharm. Bull.誌の表紙に選定頂きました。よい機会なので、縁があった神イラストレータ、杏仁豆腐先生(@annin_oiko )に素晴らしい表紙絵を描いて頂きました。Twitterで4000RT・5500Favを稼いでくれたので、薬学会の宣伝にも貢献出来たんじゃないでしょうか(笑) 【受賞記念論文の表紙ツイート】 https://twitter.com/annin_oiko/status/1046697754473287680
日本化学会 第32回若い世代の特別講演賞
2018年
自薦の賞で、日本化学会年会で枠をいただいて講演させて頂けます。若手奨励の思想があります。 【受賞者一覧】 https://www.csj.jp/nenkai/standing/young.html
日本化学会 春季年会優秀講演賞[学術]
2014年
化学会年会での若手発表賞です。 英語の口頭講演を積極的にやる方がまだ少なかったためか、運よく受賞することが叶いました。
有機合成化学協会研究企画賞(富士フイルム賞)
2012年
有機合成化学協会 会員向けの企画ですが、使途自由度の高い賞金50万円が副賞として頂けるのは、研究初期には有難いです。 【受賞者一覧】 https://www.ssocj.jp/award/project/
化学コミュニケーション賞 [団体]
2012年
まったく後ろ盾無く始めた新しいタイプの化学コミュニケーション(化学ポータルサイトChem-Station)ですが、権威団体からの受賞というものは活動にお墨付きを与える力があると感じます。長年の活動を評価頂けた本賞が基盤となって、後年のさらなる受賞(化学教育賞・文部科学大臣表彰 科学技術賞)につながったことは、疑いないと思えます。 【関連記事】 https://www.chem-station.com/blog/2013/02/2012-4.html
東京大学 大学院薬学系研究科 分子薬学専攻 有機合成化学教室(柴﨑正勝研究室)
2005年4月 ~ 2008年3月卒業/修了
不斉四置換炭素構築型触媒的アルドール反応の開発と多成分連結反応への展開
東京大学 大学院薬学系研究科 分子薬学専攻 有機合成化学教室(柴﨑正勝研究室)
2003年4月 ~ 2005年3月卒業/修了
ケトンに対する触媒的不斉アルドール反応および新規不斉配位子の開発
東京大学 薬学部薬学科 有機合成化学教室(柴﨑正勝 研究室)
2000年9月 ~ 2003年3月卒業/修了
ケトンに対する触媒的アルドール反応の開発
東京大学 教養学部理科一類 未配属
1999年4月 ~ 2001年8月卒業/修了
—
産業技術総合研究所 研究チーム長
触媒化学融合研究センター
2023年4月 ~ 在籍中
タンパク質模倣体の創出を志向した化学変換法の開発と応用
産業技術総合研究所 主任研究員
触媒化学融合研究センター
2022年4月 ~ 2023年3月 退職
タンパク質模倣体の創出を志向した化学変換法の開発と応用
東京大学 講師
大学院薬学系研究科
2016年10月 ~ 2022年3月 退職
有機ラジカルを用いる高化学選択的酸化的変換法の開発と応用
東京大学 助教
大学院薬学系研究科
2010年4月 ~ 2016年9月 退職
有機ラジカルを用いる高化学選択的酸化的変換法の開発と応用
カリフォルニア大学ロサンゼルス校 博士研究員(Omar M. Yaghi研究室、JSPS海外特別研究員)
化学/生物化学科
2008年5月 ~ 2010年3月 退職
触媒応用を志向した遷移金属担持型大孔径金属-有機構造体の創製
東京大学 博士研究員
大学院薬学系研究科
2008年4月 ~ 2008年4月 退職
モジュール式キラル二座リン配位子の創製
東京大学 JSPS特別研究員(DC1)
大学院薬学系研究科
2005年4月 ~ 2008年3月 退職
触媒的不斉四置換炭素構築型アルドール反応を基盤とした多置換不斉ユニット合成と展開
- 提供できる技術、相談できる内容
- 本業である化学研究の傍ら、国内最大の化学ポータルサイト Chem-Station の副代表兼ライターとして活動しています。研究レベルの化学を市井に届けるための取り組みがメインです。 また、化学系プレプリントChemRxivの邦人Scientific Advisory Boardとしても活動しており、学術出版のトレンドについても一定の知識を有します。 このような縁から、研究のみならず、各種解説記事の執筆や、依頼/招待講演を数多く行っています。詳しくは下記リストをご覧下さい。 https://researchmap.jp/oisaki/misc https://researchmap.jp/oisaki/presentations
- 主な実績
化学ポータルサイトChem-Station運営・記事執筆
https://www.chem-station.com/今年設立22周年を迎えた、日本国内最大の化学ポータルサイトChem-Station副代表兼ライターとして、記事執筆・編集・運営作業にかかわっています。
ChemRxiv Scientific Advisotry Board
学術出版潮流やプレプリントの解説に関する記事執筆や講演などを行ったことがあります。 【講演】 『化学分野におけるプレプリントの位置付け・課題等について@国立情報学研究所』 https://www.youtube.com/watch?v=lUtOCKpHtLE 【解説記事】 『プレプリントと ChemRxiv : 化学系学術出版の新潮流』 https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/records/54790 『化学系プレプリントサーバー ChemRxivが呼んでいる!』現代化学 2022年8月号、55–57ページ
- 提供できる技術、相談できる内容
- 有機合成化学に関する知見 タンパク質化学修飾法に関する知見 学術系ウェブサイト運営に関する知見 学術出版の潮流に関する知見
- 主な実績
- ビザスクなどを介したスポットコンサルティングの実績は数件ございます。
日本化学会
日本ケミカルバイオロジー学会
日本蛋白質科学会
日本糖質学会
日本ペプチド学会
日本薬学会
有機合成化学協会
英語
業務に関するコミュニケーションが可能
日本語
ネイティブレベルでコミュニケーションが可能