2023.08.24
# 重力

「質量」と「重さ」は同じではないの...?「詰まっている物の量」で考えたら、じつにシンプルだった「納得の意味」

質量とはなんだろう

「質量」の説明は決してやさしくありません!

空港の到着ロビー付近にある手荷物受取所(バゲージクレーム)を例に考えてみましょう。バゲージクレームでは、乗客の荷物がベルトコンベアに乗ってぐるぐると回転しています。

偶然にも、まったく同じ二つの「キャリーバッグ」が出てきたとしましょう。メーカーはもちろん、大きさも色も形もまったく同じで、ネームタグもついておらず、見た目だけでは区別のつけようがありません。

便宜上、一方のバッグを「荷物A」、もう一方を「荷物B」とよぶことにします。外見上はまったく同じ荷物Aと荷物Bを見分けるにはどうすればいいでしょうか?

明確に区別できる方法が、一つだけあります──「重さ」です。いくら外見がまったく同じでも、重さまでまったく同じである確率はきわめて小さく、ほとんどゼロと考えられます。実際に手にもってみて、荷物Aのほうが荷物Bよりも重かったとしましょう。ここで質問です。

どうして荷物Aのほうが荷物Bよりも重いのでしょうか?

決して“愚問”ではありませんよ。物理的に、とても重要なことがひそんでいるのです。

答えは、「荷物Aのほうが荷物Bよりも、“物”がいっぱい詰め込まれているから」(あるいは「荷物Aのほうが荷物Bよりも、“重い物”が詰め込まれているから」)。

荷物Aと荷物Bは、形も体積もまったく同じですが、前者のほうが後者よりも内容物の量が多い。だから、荷物Aのほうが荷物Bよりも重いのです。

なお、重さには関係なく、荷物Aにも荷物Bにもバッグの素材とは別の内容物が入っているとすると、荷物は「物体」です。

そして、この「荷物の量」が、物体としての荷物の「質量」に相当します。

【写真】荷物の量」が、物体としての荷物の「質量」に相当する「荷物の量」が物体としての荷物の「質量」に相当する photo by gettyimages

「物質」の場合は?

もう一つ、別の例を紹介しておきます。

こんどは、バッグ(とその中身)のような物体ではなく、純粋な「物質」を考えます。純粋な金属は物質であり、膨大な数の「同じ原子」から構成されています。たとえば、「銅」は膨大な数の「銅原子」だけからできています。

まったく同じ形と体積をもつ、二つの金属を考えます。具体的には、まったく同じ円柱形(シリンダー型)をした、同形・同体積の純粋な鉄と純粋なアルミニウムを考えましょう。両者ともに、円柱の内部に空洞はないものとします(図「まったく同じ形と体積をもつ二つの金属で考える」)。

【図】まったく同じ形と体積をもつ二つの金属まったく同じ形と体積をもつ二つの金属で考える

同形・同体積のこの状態で、鉄とアルミニウムとではどちらが重いでしょうか?

日常的な感覚からもおわかりのように、同形・同体積なら鉄のほうがアルミニウムより重いのですが、それがなぜだか説明できますか?

「質量」のイメージをつかむ

答えは、同じ体積中に、鉄のほうがアルミニウムよりいっぱい“物”が詰まっているから。先ほどのキャリーバッグの例と同様に、この「詰まっている物の量」が「物質の質量」なのです(つまり、鉄原子のほうがアルミニウム原子より質量が大きい)。

誤解のないようにしていただきたいのですが、「物の量」は重さではありません! たとえば「リンゴ五つ」が、「重さ」を表していないのと同じです。

「質量」のイメージが、少しつかめてきたでしょうか。

重力のからくり——相対論と量子論はなぜ「相容れない」のか

【書影】重力のからくり

自然界を支配する4つの力の中で、最も身近で最弱の力。 この宇宙に現在の構造をもたらした最大の貢献者でありながら、なぜか「標準模型」に含まれない異端児=「重力」。 素朴な問いから「物理学最大の難問」まで一気読みさせる好著!

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