学校のテストや人生大一番の入試、それに決断が損得に直結するビジネスシーンなど、勉強でも仕事でも、パッと頭で計算して道筋をつける力はそれだけで大きな武器になります。特に日々多くの数字が飛び交う情報社会の現代では、この「計算する力」は非常に重要な能力と言えるでしょう。
学習塾代表、大学講師として精力的に活動し、計算に関する様々な書籍も執筆している鍵本聡さんによると、速く計算を行うコツの一つは難しい計算を簡単な式に変形する「計算視力」にあるということです。一体どういうことでしょうか。日常生活(買い物など)でもよく出くわす、多くの数の足し算を例に見てみましょう。
(本稿は、ブルーバックス『計算力を強くする 完全版』の内容を再構成してお送りします。)
等差数列を見つけたら…
次の式を見てください。
この問題で気づくことは4,5,6,7,8の5つの数が,連続した整数だということです。
このように,その差が常に一定な数の列のことを「等差数列」と呼びます。このように1ずつ増えるもののほかにも1,3,5,7,9などのように2ずつ増えるものや,20,16,12,8などのように4ずつ減るものも等差数列です。
例えば等差数列の足し算,4+5+6+7+8の計算をするときに,
4+5=9
9+6=15
15+7=22
22+8=30
と1つずつ計算していると,時間がかかります。今は1桁の数が5つでどうにかなりましたが,桁数が増えたり数が増えたりすると結構時間も手間もかかり,計算間違いする可能性も高くなります。
実は,等差数列を足し算する場合,とてもいい方法があります。キーワードは「平均」です。「『平均』って足し算したり割り算したりするからもっと時間がかかるんじゃないの?」と思う方もいらっしゃるでしょうが,等差数列の場合はとても簡単なのです。なぜなら「真ん中の数」が平均になるからです。
4,5,6,7,8の場合,真ん中の数,この場合は6が平均です。そこで「平均6の数が5個ある」と考えると,答えは簡単に出てきます。