実超石なんて居ない

おや、珍しいデスね人間さん。
私が普通ではない事に気がつくなんて、もしやお仲間デス?

『ふざけるな?なんでお前に仲間扱いされにゃならんのだ?』デス?
ああ、もちろん実装石の仲間って意味じゃないデス。

……気が付いてないデス?今、私ら、あなた達の機械も無しに会話してるデスよ?
私たち実装石が人間の言語を当たり前のように理解出来ているのには疑問を抱かないのデしょうが
あなたに私たち実装石の言葉をダイレクトに解読できる技能、ありましたデス?

おや…今頃気づいたデスか。何も腰を抜かさなくても
そうデス。お仲間の意味は超能力仲間って奴デスよ
私はいわゆる『実超石』って奴でして

まぁ、珍しく気づかれたもんデス。少し駄弁りませんデスか?
『実超石ってなんだよ?そんなもん居たか?』って……いや、知らないデスか?
あー、まじで知らないデスね…

一応『実超石』って固有名詞が付く程度には知名度あったんデスがねぇ…隠れ過ぎて名前が風化しちゃったみたいデスね
まぁ、具体的には超能力が使える実装石の総称デス
超能力が使えればなんでも『実超石』デス

パイロキネシスでもサイコキネシスでもテレポートでも
今こうして会話してるテレパシーでも、デス
実装石の範疇を一部越えているのが『実超石』デス

はい?『そんな目立つ能力があるならもっと知られてなきゃおかしいだろ。』
いえいえ、それはそうデスけど。現にあなたも先ほどまで知らなかったじゃないデスか

『そんなに隠れてるのか?』ええ、そうデス。結構逃げて隠れてしてたデス
それだけでもないデスけど

先読みができる実超石は虐待派が来る何日か前から姿くらますデス
テレポート出来る奴は悲鳴が聞こえたら飛んで逃げるデス
テレパシー出来る奴は念波送って虐待派の目をくらますデス

『残りは?』デスか
実超石とて死ぬデス。死んだらもう普通の実装石と区別つかんデスよ
実装石の身じゃカバンの中身透視できても、その時点で手遅れデス?

サイコキネシスやパイロキネシス使える連中が一部返り討ちにしてるらしいデスけどね
実超と人間、どっちが死んだ場合も、『実超石が居た痕跡』は分からないデス?
傍目には不審死した人間さんか、それかただの実装石の死骸が残ってるだけデス

ですが、まぁ結構数も減ってしまいまして…ええ
『実超石』の名前が消えてるのはそれも大いに関係してるみたいデスね?
気づかず殺されてると思いますデスよ?先ほどあなたが振り上げてたソレで

まぁ、なにぶん、体は実装石レベルって事なのデス
死ぬときゃぁ死ぬデス。節理デス

『そしてみんな居なくなる』って奴デス?
そういやぁ先読みができる奴は自壊して死ぬ奴が多いデスし?
見える未来がジゴクマッポーすぎてに耐えられんデス

調子乗って仲間に無体なこと働いて、寝てる間に食い殺された馬鹿だって居るデス
ま、死ぬ理由にもいろいろあるデス

そう、本当、いろいろとあるデス

ガツン!と小気味よい音が響く
ガツ!ガツ!ゴッ!ゴッ!ゴッ!グチャッグチャッグチャッ……ゴトン

男の頭は既に原型が無い
そばに赤黒く染まった石が落ちる

男の死体の背中側、2匹の実装石が立っていた

『『誘導御苦労デス』』
2匹の実装石は全く同時に発音する

いえいえなんの、話を聞いてくれる人間で良かったデスよ

『『協力を、感謝するデス』』
そういうと動きがシンクロした2匹の実装石はすうっと闇へ溶けるかの如く消え去った

実装石が男を見る。それはもう動かない

ほら、不審な死体があるだけで、とても実装石がやったなんて思えないデしょ?
だから『実超石』は人間には認識されないのデスよ。

実超石なんて居ない

居ないはずのものが人間を殺せるわけ無いデスものね?