【解説】「信教の自由」とは

法律的に正確に、また、分かりやすい解説を試みたいと思います。
信教の自由とは
 

信教の自由(内心の自由)とは、どんな宗教を信じるも信じないも自由ということです。人間として生きる上で大切な基本的人権の一つで、日本国憲法の20条で保障されています。

民主主義社会の根幹をなす自由権で、自由の中でも「最初の自由」と言われます。

一般的に、信教の自由には「①信仰の自由」「②宗教的行為の自由」「③宗教的結社の自由」の三つが含まれているとされています。

①信仰の自由

宗教を信仰する・信仰しない、また信仰する宗教を選択・変更することについては個人の自由であるということです。これは、心の中は自由ということであって、人の心の中には、誰も立ち入ってはいけないということです。

宗教的には「神の啓示は各個人の良心に直接示されるもの」(他人が強要するものではない)という考え方があります。

②宗教的行為の自由

宗教を信仰するにあたって、お参りや礼拝などの宗教行事を行ったり、祭壇など、宗教を信仰するのに必要なものをそろえたりする自由を言います。

③宗教的結社の自由

宗教を広める活動(宣教などの布教活動)をしたり、宗教団体をつくったりする自由が保障されます。

「信教の自由」
を具体的にいうと

信仰告白の強制は
NG行為です
内面的な信仰の自由の外部への表現である「信仰告白の自由」が当然に認められます。他人に信仰の告白を強制したり、あるいは信仰に反する行為を強制することは許されません。
 
地方公務員等の職員採用においても、信仰を問うたり、いずれの宗教団体に属するかなど、個人に信仰の証明を要求することはありません。
それって差別
じゃないですか?
信仰または不信仰のいかんによって特別の利益または不利益を受けない自由が保障されます。

これは憲法14条「法の下の平等」による差別の禁止とも重なり合います。


信仰を理由とした差別言葉の暴力がおこらぬよう、また、宗教団体に所属していることによる偏見がないよう、社会全体で注意しなければなりません。
家庭教育
教育基本法にあるように、親は子の第一責任者として、生活に必要な習慣を身に付けさせるとともに、心身の調和のとれた発達を図るよう努めなくてはなりません。
 
信仰の自由から、両親が子どもに自己の好む宗教を教育し、宗教学校に進学させること、宗教的教育を受けまたは受けない自由が保障されています。
 
世界各国でキリスト教、イスラム教、仏教などの宗教が人々の生活習慣や文化に色濃く反映され、日本においてはご先祖様を大切にする家庭が多くあります。宗教は家庭における生活習慣に密接に影響し、子女の健全な人格形成に寄与するものです。

政治と宗教との関係について
最後に、「政教分離原則」がどういうものか確認します。

政教分離原則とは、国家と宗教が関わり合いを持つことを全く許さないとするものではなく、その関わり合いが我が国の社会的・文化的諸条件に照らして相当とされる限度を超えた場合に許されないとするものである。具体的には、行為の目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為である場合に、政教分離原則違反となる
(津地鎮祭事件:最判昭和52.7.13 等)

①宗教団体や宗教者が政治活動をするのは⾃由です。

②国や⾏政が特定の宗教を差別してはいけません。

贈収賄などの法令違反がない限り、宗教団体や宗教者が政治活動をするのは⾃由です。宗教者も、請願権・参政権が憲法で保障されているからです。

また、政教分離原則から、国や⾏政が特定の宗教を差別してはなりません。仮に何らかの信仰をもっている国民に対し、通常の政治活動を制限したり、批判するのは、政治的な差別と⾔えます。


「信教の自由」「思想・良心の自由」に関連する日本国憲法、国際人権規約

日本国憲法 第14条 【法の下の平等】

1項 すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

日本国憲法 第19条【思想及び良心の自由】

思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

日本国憲法 第20条【信教の自由】

信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。

2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。

3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

国際人権規約(自由権規約)第2条【締約国の実施義務】

1項 この規約の各締約国は、その領域内にあり、かつ、その管轄の下にあるすべての個人に対し、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、 出生又は他の地位等によるいかなる差別もなしにこの規約において認められる権利を尊重し及び確保することを約束する。

国際人権規約(自由権規約)第18条【思想・良心及び宗教の自由】

1項 すべての者は、思想、良心及び宗教の自由についての権利を有する。この権利には、自ら選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由並びに、単独で又は他の者と共同して及び公に又は私的に、礼拝、儀式、行事及び教導によってその宗教又は信念を表明する自由を含む。

4項 この規約の締約国は、父母及び場合により法定保護者が、 自己の信念に従って児童の宗教的及び道徳的教育を確保する自由を有することを尊重することを約束する。